59 剣を振り 剣を振り 剣を振る
ラルシーカのダンジョンの地下11階。
入り口の上のスペースにキャンプを張り、皆が寝静まっている。
そこにこそこそとテントから起きだす女ファイターのケリー。
昼間の主人の戦闘を見て、只々、圧巻で実力差を痛感し、
そして、自分の存在価値に疑問を持ってしまった。
「私は弱い」
オークソルジャーに1対1なら負けるつもりはないが、主は5頭でも全く寄せ付けず圧勝する。
リータは30の弓を自分に向けさせ、2度の掃射を躱して見せた。
ヨークはマッピングや主の支えとしてしっかりサポートしている。
自分には剣しかない。
このトゥーハンデッドソードしか。
「私は弱い。だから、強くなる!」
ヒュッ
自身の中では最速の袈裟切りだが・・・遅い。
利き腕の腕の振りか
逆腕の引きか
腰の捻りか
体重移動か
背中の筋肉の使い方か
後ろ足の蹴る力か
考えて、一部分ずつ身体強化をしてみて、素振りを繰り返す。
ヒュッ
半年前とは比べ物にならないが、これじゃない。
ヒュッ
筋肉が足りない
ヒュッ
ギルマスなら剣速だけで負ける
ヒュッ
もっと速く
ヒュッ
もっと速く
ヒュッ
もっと
ヒュッ
ヒュッ
ヒュッ
ビュッ
なにか・・・
ヒュッ
ヒュッ
ヒュッ
わからない
ヒュッ
ヒュッ
ヒュッ
目を閉じて
ヒュッ
ヒュッ
ビュッ
これ
ビュッ
斬れる
ビュッ
ビュッ
ビュッ
左手の小指?
ヒュッ
ヒュッ
左右のバランス
ヒュッ
ビュッ
小指だけじゃない
ビュッ
ビュッ
左が弱い
ビュッ
ビュッ
少しでも
ビュッ
ビュッ
ビュッ
積むしかない
ビュッ
ビュッ
ビュッ
瞼の裏にギルマスが浮かぶ・・・
ビュッ
ビュッ
ビュッ
左膝の圧・・・
ボフュッ
ケリーの目は目を見開いている・・・・
左足の太腿がピクピクと痙攣している・・・
ビュッ
ビュッ
ボフュッ
ビュッ
・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
トゥーハンデッドソードを収め、汗を拭き、テントに戻る。
ケリーの寝床にポーションの小瓶が2本置いてあった。
ケリーは奥歯を噛み、目礼して、ポーションを自分のバックにしまう。
DKの前衛は自分だ。誰にも譲らない。
背負っていた剣を抱きかかえ、自分にそう言い聞かせ、目を閉じる。




