54 ラルシーカのダンジョン2階
冒険者パーティーDKは現在、ラルシーカダンジョンの地下2階の平原で戦闘中である。
これまでダンジョンで狼の群れ、ゴブリン、ホブゴブリンの集団、ゲラクーダという鳥型のモンスターと順調に戦闘をこなして、
4戦目に目的のオークを発見した。
リータのハンドサインは人差し指、中指、薬指の3本が立ち、一度閉じてから小指以外の4本が立った。
「オーク!」
先行したリータがケリーに届くように言い、
前衛のケリーが
「3体距離80、オーク!」
と後衛のライトとヨークに情報を共有する。
初見の相手なので全員が緊張する。
リータは今回は木に登らず、オークを迂回するように右周りで気配を殺しながら進む。
オークの場合は木に登らなくても射角が取れ、移動も遅い為、2正面を余裕で作れる。
やがて、オークが視界に入るが、オークはこちらに気づいていない。
「ケリーは正面から真ん中を押さえて、左は僕が!」
ケリーのすぐ後ろからライトはそう指示を出し、少し左に回る。
ズシン、ズシンと地響きを立ててオークが進んでくるが、先頭のオークが立ち止まり、鼻をかく。
「穿て、サンダーボルト!」
ライトの左手から放たれた閃光が左側に付いていたオークの側頭部から入り斜め上に貫く。
ほぼ同時に右側のオークの側頭部に矢が刺さり、同時に崩れ落ちる。
「ブフォー」
オークが左右を確認し驚きとも怒りともわからない声を上げる。
「お前の相手はこっちだ!」
そこにケリーが大声で注意を引く。
オークは一瞬、躊躇いを見せるが、雄叫びをあげ、鉈のような武器を掲げケリーに突進する。
ケリーは足を止め、その場で迎え撃つ。
オークが右上段からの振り下ろしを左上段からいなすように払い
左上段からの振り下ろしを右上段からいなすように払う。
決してオークの力を受け止めるようにはせず、できる限り少ない力でいなしていた。
そして、オークの横薙ぎをケリーのトゥーハンデッドソードが払い上げたところで、
「・・・・・・我が敵を打て マジックミサイル」
ヨークの詠唱が終了する。
ヨークのメイスの先から2発同時に放たれたMMが別の軌道を描いてオークの顔面に直撃する。
オークの手がダランと下がり、その手から得物がこぼれ落ちる。
そして、膝から崩れるように倒れ込み、魔石と肉の塊に変わる。
「出たヨ、ライト!」
ヨークが指さしながら近づいていく。
「ありがとう!やったー!ヨーク!」
ライトは嬉しそうだ。
パーティーメンバーが集合してくる。
「やったやった~肉ゲット!」
「多分、売り物にはならないわね」「肉祭りの素材だヨ」
「いいね!肉祭りしなきゃね」
ライトが珍しくはしゃいでいる。
(そう言えば初めて鹿を狩った時もそのまま肉祭りだったヨ)
ヨークが回想する。
「オークが立ち止まったわね」
リータが矢を回収しながら戦闘処理を始める。
「確かに止まったヨ」
「何でだろう?」
ライトの問に
「主、多分、匂いだよ、オークは人の何十倍も鼻がいいって聞いたことがある」
リータとヨークが自分の身体の匂いを気にしだした。
「大丈夫だよ、2人ともいい匂いだから」
「そういうことじゃないのよ!」「ライトのエッチ!」
リータからは怒られ、ヨークからはポカポカされる。
「道具屋に匂い消しが売ってるのってこういう意味だったのか」
「次から風向きにも気を付けるわ」
「10頭くらいまでなら気にしなくても・・・・」
「巣を攻略する時には必要だヨ」
「オークって種類は?」
「上位種にソルジャー、メイジ、とかいたはずだヨ」
「入り口で情報収集できるかも」
・・・・・・・・
・・・・・
色々と相談し次回の戦闘に備える。
「今日は一旦、引き上げよう」
馬車での移動からの小手調べと肉ドロップ狙いだったので、
目標は達成したライトは村へと戻る選択をする。
「わかったヨ、ちょっとだけゆっくり歩いて、マッピングするから」
そう言ってヨークはバックからマッピングセットを取り出して簡易な地図に戦闘記録を書き足していく。
本当に簡易なので最初の頃に比べて描きあがりがとても速くなった。
そして、後で丁寧に書き直すらしい。
それを記すことがヨークにとって嬉しい作業なのだそうだ。
それでも来た時よりは警戒心の度合いが違うため、思ったより早くダンジョンの入り口まで戻ることができた。
外は夕暮れの少し前で肌寒さが戻っていた。
皆が軽装だった為か、ゲートの職員に
「肉のドロップはなかったか~」
と言われたが、
「まぁ・・・」
とライトは曖昧な返事をしておいた。
カインズの街以外ではマジックバックを持ってることをあまり言わないようにしている。
「それで、オークの情報が知りたいんですけど」
話の流れで職員に聞いてみた。
「ギルドで聞くか、あとはあいつ等だな」
そう言ってゲートの先で並んでいる輸送専門を指さす。
それに反応したのはキャリアたちの方で、視線を逸らしている。
若く獲物がないライトたちDKは雇い主としては安く見られたのだろう。
ライトが近づくと、何となく、みんな距離をとる感じがした。
その中で唯一、一番背の低い、汚いフードからギラついた山吹色の目が動かずにライトを見ていた。
「オデ、オーグのごど、よぐ知っでっど」
思いのほか高い声なので驚く。
「オデ、なりはちっせが、力は負けねど」
「フードを取って」
「ごごじゃ、恥ずがしぐ」
そう言ってフードがとことこ歩いていく。
ライトが着いて行き、DKの他のメンバーはやれやれといった感じだ。
ゲートから少し歩いた木の陰でキョロキョロしてからこの子がフードを取る。
背はライトの肩よりも少し低く、短髪ツンツンの山吹色の髪と目をした女の子だった。
そして、一番目に入った特徴はピアスがはまった木の葉のように尖った耳であった。




