53 パーティーでの戦闘
ラルシーカのダンジョンの地下1階は平原が広がっていた。
入り口から階段を降り、地下1階のエントランスのような所を通り入り口をくぐると空があり平原だった。
振り返るとくぐった場所は洞窟の入り口になっていた。
「これがダンジョン・・・」
「たしかにこれは説明されるより見た方が早いヨ」
ヨークはトゥトが詳しく説明しなかった理由を理解する。
ダンジョンだと言われなければ、ただ、階段を降りて洞窟に繋がっていただけだと思う。
「見える範囲には何もいないわね」
リータが手でひさしを作り遠くを見ながら言う。
この踏み固められた道を行けば、下に降りる道に迷うことはないらしい。
この階層は大したものはないらしいのでモンスターと遭遇しないならばさっさと降りてもいいそうだ。
「手慣らしにちょっとモンスターと戦いたいわね」
「リータなら大丈夫だヨ」「リータは強いよ」
ダンジョンでの戦闘経験のないリータの不安からの要望をヨークとライトが自信を持って保証する。
「・・・わかったわ」
リータも了承してこの階層での戦闘より先に進むことを優先する。
DKは今はリータがスカウトのノウハウを学ぶためにトゥトと共に先頭を歩いている。
それにケリーが続き、ライトとヨークが並んで殿を務めている恰好である。
踏み固められた道を進むとそれなりに戻ってきた冒険者とすれ違う。
リータはローブを着ているが当然、フードをかぶってはいない。
ケリーも同様で、ヨークはフードを深めにかぶっている。
なので容姿が見えるリータとケリーはジロジロ見られたり、口笛を吹かれたりするが
気にした様子は全くない。
そういった行為になぜかフードをかぶっているヨークが一番緊張しているようにライトからは見えた。
トゥトの存在がなかったら、もっといらぬちょっかいを受けるかもしれない。
ライトとヨークは基本的に目立たない行動をとることが多かったので、こういった経験があまりなかったし、カインズの街周辺はやはり、治安がかなり良い。
人気が少なくなったり、治安が行き届いてない場所では粗野な行動が増えるのは人の性なのかもしれない。
そういうことに一番不慣れなのはやはり街育ちのヨークなのだろう。
不意にヨークの手が握られる。
ヨークは一瞬、ビクっとするが、すぐにライトの笑顔が見えたので少し恥ずかしくなり、
そして、嬉しくなり、握り返す。
リータはそんな2人を視界に捉え、懐かしさや微笑ましさ、羨ましさ、そして、少しの嫉妬心を感じ複雑な心情だった。
程なくして、ぼっかりと大きな洞窟が口を開けている場所にでた。
道はその中に続いているので階段に間違いないだろう。
「地下2階からオークがでるが、俺は少し離れているから、あとは4人で決めろ」
それは進むのも戻るのも戦うのも自由にしろという意味だとライトは理解する。
「行こう!目標は肉ゲット!」
ライトが手を上げてそう言う。
リータとケリーはたくさん戦うことが目標で、
ヨークはライトの希望がかなえば良いと思っている。
「「「おー!」」」
それぞれの思いを胸にライトの呼びかけに応える。
地下2階に降り洞窟から出ると平原だったが、見た感じで木々が多くなっている。
リータが目視と気配察知を使い、周辺の確認をすると、
「道をそれた右手の奥の林に何かいる。複数・・・5以上!」
そう言ってライトに振り返る。
「行こう!」
ライトの声にリータが頷き、全員に緊張が走る。
リータが先頭でケリーが続き、ライトとヨークが続く。
リータが一旦、右手を閉じ、親指と人差し指を立てるサインを2度する。
「主!距離60、数6」
サインを確認したケリーが情報をライトに伝え、背中からトゥーハンデッドソードを引き抜く。
リータはローブを脱いで手頃な木の枝に飛びつき、その上に乗り背負っていた弓を構える。
その下にケリーが歩みを進め、数歩後ろに杖を持つライトとメイスを持つヨークが並んでいる。
「目視できないけど、多分、狼!」
リータは茂みの動きや足音、地響きなどで判断する。
「ケリー、ありありで!」
「了解、主!」
すでにケリーには余裕が感じられる。
パーティーの前衛としてケリーがトゥーハンデッドソードを振りやすい場所に立ち、
リータが援護射撃しやすい高所に位置する。
ライトは目視出来次第、魔法を撃つ準備をする。
ヨークはメイスと盾を構え、防御も攻撃もできる体勢で待つ。
「来る!」
リータが声を上げる。
ケリーは腰を落とし、トゥーハンデッドソードを水平に構える。
ライトは左手を伸ばし指を立てている。
ガサガサ、ザッ
30歩ほど先の茂みから狼が4頭、飛び出してくる。
「サンダーボルト!」
ライトの左手から4本の光の筋が一番右の狼に4方向から襲い掛かる。
狼は右に飛んで躱そうとするが、全ては躱せず、一条の光が狼の腹を横から貫く。
残りの3頭が一番近いケリーに向かう。
ケリーは左足で地面を一度蹴る。
ドン!
左の狼が少し後ろに飛び、2頭がケリーに向かい飛び掛かる。
その2頭を目掛けケリーは横薙ぎを放つ。
ケリーのトゥーハンデッドソードが飛び掛かる右側の狼を捉え、巻き込むように狼ごと左の狼に叩きつけられる。
「ギャン」
後ろに飛んだ狼の頭に矢が生えている。
トゥーハンデッドソードの直撃を受けた狼はもう動いておらず、巻き込まれた狼が震える足で立ち上がったところに頭の上からトゥーハンデッドソードが落ちてくる。
数秒で視界の狼は全て動かなくなり、魔石に変わっていく。
残りの2頭が離れていくのがヨークでもわかった。
「周囲にモンスターなし!」
そう言ってリータが木から飛び下りて、矢を回収する。
ライトが魔石を回収し、ヨークがそれについて回る。
ケリーもトゥーハンデッドソードを振り血を飛ばし背負う。
ライトが魔石を回収し終わり、パーティーが集まる。
「魔石が少し大きい?」
「普通の狼より強かった気がする・・・・」
「鏃は普通のでいいわね・・・」
「10頭でもいける?」
「防御に徹すれば・・・・」
「安全マージンは?」
いろんな意見がでて、相談や改善を行う。
「私の立ち位置は?」
「あれでいいと思う・・」
「例えば2頭がライトに向かっていたら・・・」
「わかったヨ」
問題が解決したら、
「よし、行こう!」
次の戦闘へと進んで行く。




