50 買い物
リータがDKに加わって4人パーティーになって数日が経った。
トゥトに事情を話し、今後の事を相談する。
次に行くべきダンジョンは前回が通路型とするなら空間型というべきダンジョンの予定だったが、
リータが加わったことで予定を変更してラルシーカのフィールド型のダンジョンへ行くことになった。
「フィールド型って?」
「文字通り、ダンジョンの中に平原や荒野、山岳なんかがある」
「「・・・」」
ライトとヨークは意味がわからない。後の二人は考えてもない。
「まあ、行けば解る」
トゥトの話では、
フィールド型の特徴は当たり前だがフィールドのモンスターが多い。
通路型との違いは大型のモンスターや飛行型、集団戦闘などもあるという。
フィールドでの戦闘経験が浅いDKにはちょうど良いらしい。
ラルシーカまでは乗り合い馬車で4日、ダンジョンは目標地下10階、行けるようなら15階だそうだ。
それを踏まえて今日はカインズの街で買い物なのだが、当初、ライトとカインズの街を歩くのに舞い上がっていたリータだったが、パーティーの買い出しはスカウトの仕事だと言われ、急にトゥトの教えに集中するようになった。
リータは自分がこのパーティーのスカウトという自覚があり、スカウトの先生のトゥトから少しでも吸収したいと思っている。
DKの中で一番日が浅くみんなに遅れを取っているので、取り戻したい気持ちがあり、気合が入っているようだ。
実際、リータのスカウトとしての素質はトゥトよりも高いほどあり、目の良さ、気配察知はトゥトと伍するかそれ以上のところがあった。
「リータ、何か欲しい装備ある?」
ライトがリータに聞く
「・・・矢をたくさんと軽い膝当てと肘当て、予備のグローブあとはライトの左手の盾の小さいのがあれば嬉しいかも」
「じゃあ、武器屋行こ」
道々、ライトが話を聞くと弓を飛び越え打ちの練習をする時の着地に難があり膝や肘が怪我しやすいらしい。
アカマット村にはちょうど良い草原があったそうだ。
飛び方で狙える場所が変わるので色々バリエーションを増やしたいらしい。
ただ飛び越えるだけだと、狙えないので、前宙や捻りを加えている。
それを聞いているだけでもリータの努力が伺える。
結局、ライトが倒したデカブツよりも大物と出会う機会がなかったらしいが、今のリータなら楽に倒せるだろう。
「今度、僕にも教えて」
「ええ、いいわよ」
「盾は?」
「ああ、ライトの魔法の時差攻撃を全部躱しきる自信がなかったから矢を弾かれたように、魔法を弾けないかと思って」
「弾けるよ」
ライトは嬉しそうにレオンとの魔法訓練をリータに話す。
レオンが魔法を後方に弾く姿がカッコ良いそうだ。
そうこうしているうちに武器屋に到着した。
「矢の予備はリータに貰ったのが100本以上僕のマジックバックにはいってるよ」
「ああ、そうだったわね、でも狩用でしょ、それだと硬いゴブリンの頭が抜けないのよ」
前回、ゴブリンと戦った時、リーダー格の頭に2本命中させたが倒せなかったから3本目は喉を狙ったらしい。
「鏃を選ばないと」
所狭しと木枠で区切られた箱の中に鏃が並んでいる。
リータの目が真剣に鏃を見ている。
「いろんなの使って見たら、リータは外さないからだいたい回収できるでしょ」
「・・・そうね」
そう返事をするが目は鏃を見たまま、リータが頤に握った手を当てながら考えている。
ライトは簡単にそう言うが駆け出し冒険者が早々、良い鏃ばかり買うことはできない。
そして鏃が変われば飛距離や弾道も変化する。
なのでできれば同じ型のものを使いたい。
色々と眺めていたリータだったが、一つの鏃の前で目が止まる。
「これ・・・」
リータは鏃を手に取り掌に載せてマジマジと見る。
その十字の黒い鏃は鋭く尖りそれでいて型崩れしなそうな形をしていて、
あのゴブリンの硬い頭も簡単に抜けそうだ。
リータはあと3個手に乗せるが全て同じに見える。
「それを作ったのは若いが腕の良い鍛冶屋だ」
リータがあまりにも真剣に見ているので、武器屋のツルツル頭の将軍髭のおやじもつい声を掛けてしまう。
「良い腕ね」
リータも同意する。
「じゃあ、それ100個ください」
横からライトがオーダーする。
「ちょ、ライト」「・・・」
リータが突然のことに驚き、おやじの口が開く。
「・・・そこにあるしかねぇ」
値段は1先、銅50と書いてある。それは安い鏃の10倍以上する。
「じゃあ、あるだけ」
「32先、嬢ちゃんの目に負けて30先分でいい、坊主、金あるのか?」
「あるよ」
そう言ってライトが金貨を2枚出す。
「・・・あと、何が欲しいんだ?」
「鏃70「安いのでいいわ」と軽い肘膝当てリータのグローブとこの盾の少し小さいの!」
おやじとライトの会話に今度はリータが口を挟む。
「ちょっと待ってろ」
おやじが商品を集めに行ったところで
「私の持ってるお金じゃ足りないじゃない」
「装備はパーティー資金から出すから大丈夫」
ライトがサムズアップしている。
リータは額に手を当てた。
おやじが商品を集めて戻ってきて
「合わせてみろ」
そう言って各種数種類、渡してくる。
肘膝当てとグローブはすぐに決まり問題なかったが盾付きのガントレットがリータの腕には少し大きかった。
「嬢ちゃん、こっち来てみろ」
そう言っておやじは部屋の隅の金床の前に腰掛け、リータの腕を見てから
コンコン、コンコン。
2か所を軽く叩きリータに渡す。
リータも黙って受け取り合わせてみる。
「ここがあと少し広いわ」
「ああ」
リータが渡しおやじがまた叩く
コンコン、コン
「着けて手首を回してみろ」
「ぴったりね、ありがとう」
「フン・・・」
そう言っておやじは矢を1本渡し、部屋の対角にある的を指さす。
リータは意図を理解して装備を付けたまま背中の弓を構え、渡された矢を番える。
ヒュン
弦を引いたかと思うと留まる間もなく矢を放つ。
ドン
矢は木の的の中心を捉えている。
「問題ないわ」
「良い腕だな」
「まだまだよ」
「フン、気に入ったぜ嬢ちゃん、坊主その矢を100本付けて金貨2枚でいい。
装備が合わなくなったら持ってきな」
「ありがとう」「また来るわ」
ライトはそう言って金貨を渡す。
「坊主、前回買ったショートソードとメイスは役に立ってるか?」
「うん、ちゃんと使えてるよ、特にメイスのダメージは強力・・・だった・・・よ」
ライトとリータの脳裏に痛みが蘇る。
武器屋を出て次の買い物に向かう前に屋台で何か食べようかという話になる。
「リータ、何か食べたいものある?」
「わからないからライトのおすすめでいいわ」
「じゃあねー!」
ライトはそう言ってリータの手を掴んで走り出す。
「ちょっと!」
リータは一瞬、虚を突かれるがすぐに加速してライトに並ぶ。
(なんだろう・・・ドキドキする)
リータはいつになく胸が高鳴り、顔が熱くなる。
握られた手からライトの体温を感じ、唇の端が歪む。
以前とは違う、明らかにライトへの意識が変わった、いや、認めたのかもしれない。
そんなことを考えていたら不意にライトの顔がこっちに向く。
ライトが見たリータの顔は見たことのないそれだった。
リータは見られた瞬間に顔を背けるが、そんな自分が笑えてくる。
心の奥でずっと叫んでいた。
誤魔化してるのがバカみたい。
握った手から伝わってくる
この感情の名前をリータはしっかりと確認したのだった。
はいたーぐらんぷり
マルディローズ≧ライト父>トゥト≧ケリー>レオン>>リータ>ライト≧ヨーク




