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48 アカマット村一の狩人の娘

「どうしてあんな事言ったのヨ!」

ヨークがトゥトに食ってかかる。


「ライトが聞いたからだ」

「もっと優しい言い方もあったんじゃない」


「ライトが学びたがっていたからな、ただ、刺激がちょっと強かったかもしれんが

それはあいつの優しさだ、まったく傷つかない奴だったらあんなに優しくないし、優しいだけなら何もわからずに死ぬだけだ」


コルフェからの帰り道。

冬の冷たい風を避ける為に幌が付いた馬車で荷台でローブに身を包み更に厚手の布を巻いていても

ライトは具合を悪そうにしている。

その状況を作った原因のトゥトにヨークが嚙みついている。


「それに俺は、学びたくない奴にあんな話はしないさ」

平静なトゥトをグググっと音がでそうな勢いでヨークが睨んでいる。


「ヨーク・・・僕は大丈夫だよ、トゥトの話、聞けてよかった。

学びになったと思う。

それに、力を持つならもっともっと学ばないといけない気がする・・・」

巻かれた布から赤い顔を出し止めるようにヨークの方に手を伸ばしながらライトが言う。


今は熱が出ているようだ。

ライトは昨日から赤くなったり青くなったりを繰り返している。


「ライト・・・」

ヨークがライトに近寄り手を取る。


「ああ、お前は本当にドラゴンを倒す力を得そうだからな、たくさん学べ」

トゥトの言葉に

「ドラゴンを倒す力・・・」

ヨークは想像がつかないことに底知れぬ怖さを感じた。



まる2日かけてカインズの街に帰ってきたがライトの顔色は戻らない。

一振りで数百千の命に及ぶことがライトには想像できてしまったからだ

それはかつて自分の師、ムーに見せられた魔法。

アレは全力で放たれたものではないと今では解る。

そして、アレを全力で放ったり、さらに上位の魔法さえ放てそうだったからだ。


未熟な今の自分ですらカインズの街中で最大の出力で魔法を放てば数十の命に及ぶのだ。


自分がそんなことをしないのはわかるが、

ヨークが狙われたり、ティファが襲われたらわからない。

冒険を続ければ誰とも敵対しないなんてありえない・・・


そんなことがライトの頭の中でグルグルと繰り返されていた。


それでも足は冒険者ギルドに到着する。

ライトはふらつく足取りで受付を目指していると

「遅かったわね!ライト」

不意に名を呼ばれ、反射的に返事をする。

「ひゃい」

「なによ、辛気臭い顔して」

「・・・リータ?」


そこには弓を背負った蜂蜜色のお下げ、翠色の目をした娘が腕組みをして立っていた。

「なに、ライト!具合悪いの?」

リータをそう言ってツカツカとライトに歩みよろうとすると、

桃色の髪をサイドポニーに纏めた女ファイターが割って入る。

「何よ、あんた?」

「そっちこそ誰だ?主に馴れ馴れしく」

「待って、ケリー、アカマット村の人?」

ヨークがケリーの後ろから声を掛ける。


リータは腕を組み、片肩を上げ

「アカマット村一の狩人の娘、リータよ」

リータが名乗りを上げる。

DK(デストロイヤーキリング)のヨークだヨ」

ヨークもローブのフードを後ろに下げて髪を整えて名乗る。

「同じくDK主の下僕ケリー」

そうケリーが名乗り終わると同時に


バタンっ

3人が振り向くとライトが倒れていた。



トゥトの取り計らいでギルドの個室を借り

ソファーに横たわるライトに膝枕をするヨーク。

その後ろに立つケリー。

テーブルを挟んで座るリータは腕組みをしているが、指が2本、トントンと小刻みに二の腕を叩いていた。

トゥトの姿はすでに無い。


「それでなんでそんなに具合が悪いの?」

「いや、ちょっと学びを・・・」

「何よ、それ!」


ライトは身体を起こし、ダンジョンでの出来事とトゥトの話と自分の考えをリータに話す。



「ドラゴンを倒す力を得たら1000人殺せるってこと?」

「簡単に言えば・・・」


「バッカじゃないの!

そんなことで悩んでるの?

まだ狩りもしてないのに晩御飯の準備をしてもしょうがないじゃない!

そんなの力を手に入れてから考えればいいでしょ!」

「そんな単純なことじゃないヨ」

ヨークが反論するが

「主、自分もリータ殿の考えと同じだ」

ケリーが珍しく意見を挟んできた。

「筋肉脳みそ!」

ヨークが2人を交互に指さし叫ぶが

「ありがとう、ヨーク。僕も単純じゃないと思うけど、晩御飯が先だね」


ライトはリータに自分の頭の中のことを説明するのに言葉に出した所為か

熱のようなものがスッと引いて大分楽になっていた。

ヨークはライトのおでこに手を当てて熱が引いていたので驚いて、

心の中で「御飯脳みそ」と呟いていた。



「ご飯食べに行こ!」

そう言ってライトが立ち上がるが、ふらつきそれをヨークが支える。

「大丈夫?ライト」

「ごめん、ヨーク、もう大丈夫」


そのやり取りを見ているリータにイライラが募るが、

ライトがご飯と言ったら、何を言っても無駄なのでそれに続くしかない。


食事は歩いてすぐのトマテ亭だ。

店は日が暮れた直後だったので混んでいたが運よく4人テーブルが空いていた。


ライトはリータを歓迎するつもりで、自分が初めてこの店に来た時の料理を中心にオーダーする。

季節が真逆だったが、ベーシックな料理なので大体同じメニューがある。

それをリータに説明しながらさらに追加で鶏肉と鹿肉とホーンラビットの肉料理をオーダーする。


ヨークはさほどではないがケリーは普通よりはたくさん食べる方だったが、

ライトの食べる量は凄かった。そして、リータはそれに負けないくらい食べる食べる。


「これ、美味しいわね」

「でしょ~美味しいよね」

これも、これも、と2人が美味しそうに皿を平らげていく。


食事も終盤に差し掛かったころ

「そう言えば、リータ、どうしてカインズの街に?」

唐突にライトがリータに尋ねる。

「・・・手紙を預かってきたわ」

「ありがとう!」

「・・・・わたし」

「うん?」

「わたし、少しだけ強くなったわ!」

リータはそう言って新しい相棒の弓をライトに見せる。

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