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46 ダンジョンの意思

壁の一枚だけ色の違うブロックが今は強烈な違和感を放っている。


ライトがヒープを使って見るが悪意は感じない。


スッと指でブロックを触ると、ブロックに吸い寄せられる感覚があった。


ビクっとなりライトはブロックから手を離す。


「どうしたのライト?」

ライトを見ていたヨークが心配そうに尋ねる。

「何か、吸い寄せられる感じがした。痛いとかはないけど・・・」

「じゃあ、今度はわたしが」

そう言ってケリーがブロックに触れるが、なにも起こらないようだ。

ケリーがブロックを叩いたり、擦ったりしているがやっぱりなにも感じないのか振り返り両手を広げる。


「たぶん、魔力だな」

離れて見ていたトゥトが口を挟む。

「あ、なるほど」

トゥトの言葉で何かに気づいたライトが再びブロックに触れ、目を閉じた。


「土属性の魔力だ・・・」

ライトがそう言ってブロックに魔力を流しているように見える。


すると、正面の壁が薄っすらと光を帯び始め、徐々に光が強くなり、一瞬、眩く光ると

中央に人が通れるくらいの通路が出現した。


「行こう!」

ライトが触れていたブロックから手を離し、開いた通路へ入ろうとすると

「主、わたしが!」

そう言ってケリーが先行する。

「気配も、悪意もないよ」

「了解です、ってこれは・・・・」

ケリーが立ち止まり、驚きの声を上げる。


通路を通るとすぐに大き目な部屋になっていて、3つの魔法陣が目に入る。


魔法陣は3方向の壁際に描かれていて、その奥側の壁に何か文字が書かれている。


「読めないヨ」「僕も・・・」「同じく・・・」

入って左の壁の前で3人が文字を読めずに留まっている。


「知識だ」

トゥトの言葉に3人が振り返る。

「この魔法陣に進む者、知識を得るって書かれてる」


「あっちは?」

ヨークが正面の壁を指さしながらトゥトに聞く


「強さや力って意味だ」


「じゃあ、これは」

ライトが右の壁の近くまで行って指をさす。


「富を得るってさ」

トゥトは入り口の傍を動かず首だけ向けてそう言う。

ライトはトゥトのその立ち位置にあまり介入しない意思を感じた。


「どうするライト?」

ヨークが聞いてくる。

「強さの魔法陣に進みたい」

「もちろん、そうですよね、わたしもお供します」

「じゃあ、わたしは富へ行くヨ!」

力強くヨークが言う。

「「え!」」

ライトとケリーが驚いてヨークを見る。

「冗談だヨ」

ヨークは舌を出して笑う。



正面の壁の魔法陣の前で3人で手を繋ぐ。

ライトは少し振り返りトゥトを見るが、入り口近くの壁に寄りかかっている。

「じゃあ、行くよ」

ライトはそう言って魔法陣に乗り込む。


フッと浮遊感に見舞われた目を閉じるがその浮遊感が収まらない。

目を開けると映るものは何もなく、手に何も握られていないことに気が付く。

(ヨーク!、ケリー!)

声が出ない。

ライトが口をパクパクしていると


『・・・・』


何かが聞こえた気がしたので、目を閉じて耳を澄ます。


『汝、力を得て何を為す』


耳からというよりも頭に直接聞こえるきがする。


『汝、力を得て何を為す』


『ドラゴンを倒したい』


『力を振らば数百千の命に及ぶ』


『守るために使う』


『力は強大なり』


『悪いことには使わない』


『善悪とは』


『・・・わからない。教えてください』


『善もなく悪もない』


『よく分からない』


『学べ』


浮遊感が終わり地面に足が付く。

両手に握っている手の感触が戻っている。


ライトが目を開けるとそこには光に包まれた杖が立っている。


左右を確認するとヨークとケリーも目を開けていた。


ライトはそっと手を放し目の前の杖に右手を伸ばす。


ライトが杖に触れると光が消え、杖に重さが生じる。


コッ

杖が石畳を叩く。


杖はライトの肩くらいの高さがあり、白を基調とした色合いで上部にライトの拳大の藍色石が嵌っている。


「学ばないと・・・」

「主に付き従う・・・」

「ライトと共に・・・」


3人が別々のことを口にし、驚いて顔を見合わせる。


「なんだったんだろう・・・・」

ライトが独り言のように言う。


「ダンジョンの意思って言われてる」

声の主はトゥトだ。


「何か、いろいろ聞かれたヨ」

「僕も」

「わたしも、生き様みたいなもんを聞かれた」


そう言って、ライトは杖を、ケリーはトゥーハンデッドソードを握り、ヨークはネックレスを握っていた。


「まあ、初級ダンジョンだから超強力ってほどじゃないだろうけどな」

「トゥトは知ってるの?」

「まぁな、試されただろ?」

「うん、そんな感じがする、だからトゥトは一緒に乗らなかったの?」

「それもあるが、人数は少ない方がいいからな」


トゥトが言うにはダンジョンには意思があり、問答をすることで報酬が得られる。

大人数で受けるとその分報酬が少なく弱くなると言われてるらしい。

その問答によって人生がガラリと変わる冒険者もいるし

適当に答えても報酬はあまり変わらないとも言われている。


「ヨークは何をもらったの?」

「これだヨ」

そう言ってネックレスを見せてくれる。

藍色の石が透けた薄水色で覆われている。

「これがわたしの守りの力だヨ」

ヨークが嬉しそうにネックレスを撫でている。

「ライトは?」

「光属性の杖だと思う」

ライトは杖の角度を変えていろんな方向から杖を観察する。

「凄い強そうだヨ、ライト、石も大きいし」

「どっかで試し撃ちしたい」

そんな2人のやり取りをニコニコしながらケリーが眺めている。


「ケリーは何をもらったの?」

「トゥーハンデッドソードをパワーアップしてもらった!

主の魔法をかけてもらうとその属性を持たせることができるようになった!」

ケリーがドヤっとした顔を寄せてトゥーハンデッドソードの柄の部分を見せてくる。

柄頭に藍色石が嵌っていた。


「エンチャントか・・・強力だが使い方を間違うと剣の寿命が短くなるから気を付けろよ」

トゥトが教えてくれた。

「ええ~」

ケリーが肩を落とす。

「元々、武器なんざ消耗品だ、ミスリルやオリファルコン製ならエンチャント向きだが、

街売りの剣だろ、いざという時だけ使って、あとは手入れと鍛冶屋によく見てもらうんだな」



その後、ボス部屋の扉の前まで行き、作戦会議をする。

「主、エンチャント~」

ケリーがトゥーハンデッドソードを握り涙目で訴えてくる。

「いいよ、サンダーボルト?ファイアー?」

「やっぱり、主のイメージはサンダーボルト!」

「わかった!」

「ライトの杖は?」

「持った時に白い閃光(ホワイトレイ)って言われた気がした」

「強そうだヨ」

ヨークが嬉しそうに笑顔でそう言う。


「じゃあ行くよ」

扉の前に立ち、ライトが言う。

2人が頷きで応える。


扉を押すと、軽く開かれ、

「ゴーーーーグァギャーーーー!」

ボスたちの咆哮が響き渡る。


この声は・・・・


「ヒィッ」

ケリーが後ずさる。


そこには3匹のホブゴブリン(ギルマスゴブリン)たちがこちらを睨んでいた。



ホブゴブリンの目とケリーの目が合う。


蓋をして忘れていただけだった。


心が拒否する。

「ぃやぁ・・・」

足が震え腰が抜ける。


ズスンッ


ホブゴブリンは巨漢を揺らし、ケリーに近づいてくる。


「こな・・ぃで~」

ケリーが涙目で必死に叫ぶが弱弱しい声しかでない。


ズスンッ

ズスンッ


ホブゴブリンで視界が埋まり、ケリーの目から光が消えかかり、心が恐怖で押しつぶされる寸前、


「ケリー立て!立って戦え!サンダーボルト!」

主が自分を呼ぶと稲妻が自分の持つトゥーハンデッドソードに轟を(もたら)す。


ケリーは心まで雷に打たれたかのように電流が走り体が動く。


ホブゴブリンが丸太のようなこん棒を振り下ろす直前に、

稲妻を纏ったトゥーハンデッドソードを手に脇の横を通り過ぎる。

ホブゴブリンは脇腹から反対の肩まで斜めに切り裂かれ、崩れ落ちる。


ケリーはその勢いのまま、ヨークに向かうホブゴブリンの首をこん棒ごと飛び横薙ぎで切り落とす。


ライトはホブゴブリンとの間合いをはかりながらケリーのその姿を確認すると正面にホブゴブリンを捉え、詠唱する。

「ホワイトレイ!」

文字通り白い閃光がホブゴブリンの胴体を瞬時に貫く。



「「ケリー!」」

ライトとヨークがケリーに駆け寄る。

「あるじぃ・・・」

泣きながら、自分よりも背の低い主人に抱き着く。


ライトとヨークが泣き止むまでケリーの背中と頭を撫でていた。

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