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閑話 もう一つの成長3

立派な店売りの弓。


どういうこと?


回収した矢を拭いて矢筒に戻しながら考える。


武器を奪われたのは冒険者?


ハッとなってメントの方へ振り返えりながら声を出した。

「メント、ほんとうに大丈・・・」


慌てて弓に矢を番え、放つも、

メントは正面の盾を持ったゴブリンに気を取られ、背後からゴブリンに切りつけられていた。


ドスッ


背後から切りつけたゴブリンの側頭部に矢が刺さる。


シュッ

ドスッ


すかさず盾持ちのゴブリンも始末し、メントに駆け寄る。


「メント!」

「すまねえ、やられちまった」

背中を見ると深手じゃないわ、厚着してて良かったわね。

「かすり傷よ」


人間用の盾と剣ね。


倒れてるメントに手も貸さず、

周辺を警戒しようとした瞬間・・・


ズン


左太腿に痛みが走る。

「グッ・・」

茂みから突き出された槍がリータの太腿に刺さっている。


「ギギャギャ!」

ゴブリンがのしかかってリータを押し倒し、顔めがけて爪を振るう。


「くっ」

リータは咄嗟に左手の弓で振り払おうとし、ゴブリンの手と交錯する。


ピンっと音を立て弦が切れ、ゴブリンの爪がリータの首筋を掠める。


(動きは早くない・・・)

左手の弓を放し、ゴブリンの引掻きを左手でいなしながら、右手で腰のナイフを探る。


ナイフの柄を探り当てると、すぐにゴブリンの左脇腹を刺す。


「ギギャー」

痛みでのたうつゴブリンの首筋めがけてナイフを振るう。


ゴブリンの首の右側をナイフが切り裂き、返り血がリータに降り注ぎ、ゴブリンの動きが収まる。


「リータ・・」

「メント、動ける?」

「ああ・・・」

「こっちに来て」

「ヒッ!」

頭から血で染まるリータにメントがたじろぐが

「なにビビってんのよ、それより・・・」

リータの左手には太腿に刺さった槍が握られている。

「これを抜いて」

メントがそれを確認し

「リータ、お前・・・」

「まだ、戦いは終わってないわ、早く!」

「わかった」


メントはリータの近くまで来て、傷を見て、青くなる。

「早く抜いて」

「ああ・・・いくぞ」

「うぐっ」

リータが奥歯を噛み、悲鳴を押し殺す。


「ハァハァ・・・」

革袋から水を傷口周辺に掛け、布で拭く。

「出血は大したことないわね」

腰のポーチから薬草を取り出し、それを口に含み租借して傷口に押し当てる。

「フグッ」

リータの身体が跳ね、肩で息をしている。


「何か・・・手伝うか?」

メントがようやく声を掛けてきた。


「この布を傷口の上で縛って」

「わかった」

リータはメントに布を渡し、傷口に巻いて縛ってもらった。


「ちょっと、向こう向きなさい」

「ああ」

メントの傷に残った薬草を塗る。


「あなたの傷もこれで大丈夫よ」

「ああ、すまねえ、俺のせいで」

「いいのよ、それより、弓を取って」

「ああ」

「弦を張りなおさないと」

「まだ戦うのか?」

「まだ、終わってないわ」


「ギギャギギャ!」

遠くでゴブリンの声がする。

「やっぱり、1匹、うち漏らしてたわ、早く・・・」

メントが弦の張られていない弓を持ったままゴブリンの声の方を向いて固まっている。

「メント!」

「や、ヤバい、逃げないと」

メントが後ずさっている。


「早く、それを寄越しなさい」

そう言ってリータが座ったままの姿勢で弓をひったくり、ポーチから予備の弦を出す。


いつもなら何のこともない作業だが、足の怪我と座っている姿勢と切迫する状況で手元が安定せず、上手く張れない。


隣で呆然とリータを見ているメントにしがみつき、支えにしてリータは立ち上がり、

メントの頬を拳で殴りつける。

「男だろ!しっかりしろ!」

メントは頬を押さえ唖然としていたが、顎を引き、リータを睨む。

「ああ、俺は男だ」

リータは何も返さず、弓を渡し、両手で反らせとジェスチャーで示す。

メントが力を籠めて、弓をしならせている間にリータが弦を張る。


リータは木に背を預けて息を整えて、気配を探る。

「ゴブリンは10匹以上いるわ、あとは逃げてもいいわよ」

「逃げるかバカ!」

メントがショートソードと盾を拾い、リータの前に立つ。




結局、その戦いの後にゴブリンの死体が26匹転がっていた。

リータの矢筒に残った矢はたったの1本だった。

「ギリギリだったわね」

「リータ、お前、強いな」

「フン、まだまだよ」


魔石の回収はメントに任せ、リータは左太腿に両手を当てて魔力循環させていた。

「ハァ、気持ちいい」

魔力循環すると、痛みが引き、早く治る気がする。



とりあえずの戦後処理が終わり、ゴブリンの持っていた槍を杖代わりにして隣村まで戻ると援軍として父とライトの父母と旅商人のマルケスさんが来ていた。



「父さん」

リータが父親に声を掛ける。

「怪我は?」

「大したことないわ」

「そうか・・・ゴブリンは?」

「26匹、リータがほとんど倒した」

メントが父娘に割り込むように声を出した。

「そうか」

「俺のせいでリータが怪我をした」

メントが父親に近づきながら言い、

「責任とってリータは俺が嫁にもらう!」

「嫌よ!バカ!」

「リータの強さに惚れた!」

「わたしは惚れてない!!」

「・・・そんなに・・・ライトがいいのか?」

「そうね・・・・って言わせないでよ」

ガゴっ

顔を赤らめたリータの右がメントの左顎にヒットした。



隣村の村人数人とリータ父とライトの父母によってゴブリンの巣が捜索され焼かれた。

ゴブリン自体は数匹しかおらず、戦利品は銀貨と銅貨が数枚と冒険者の装備品らしきものが数点あっただけだった。

戦利品分配では銀貨は被害者への補填であてられ、剣と盾はメントに魔石と討伐証明の耳は村長に、そしてリータには槍と弓と村からの謝礼として金貨が1枚支給された。

リータは槍はマルケスに金貨1枚と言われ即決で売却した。


隣村からの帰り道、マルケスさんの馬車に乗せてもらっているリータは

戦利品の弓を嬉しそうに磨いていた。

そこへ

「戦いはどうだった?」

一緒に乗っていた父から問われる。

「まだまだだったわ、ライトなら1人で楽勝よ」

「そうか」

「怪我もメントが切りつけられて冷静さをなくした自分のせいだわ」

「そうか・・・」

父親としては戦果を全く誇らない娘が逆に心配にすらなった。

「父さん・・・」

「何だ?」

リータは金貨を2枚父親に見せるがあとの言葉が出てこない。

リータの父親はリータの頭に手をのせ、

「お前の好きにしろ、ただし、怪我が治ってからな」

リータは手に持っていたものを放置して、父親の胸に飛び込んだ。

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