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37 冒険者のお食事事情

ライトはケリーと向かい合い両手を握り皮がズリ剥けているケリーの手に無属性の魔力を流す。


「主、これは?」

「無属性の魔力循環だよ」


「・・・気持ちいい」


「聖属性だと回復しちゃうから折角の鍛錬が無駄になることがあるけど、

無属性なら自己治癒能力が向上するからちゃんと手の皮も厚くなるし筋肉も太くなる」


「主、凄いです・・・」

「ハハ、トゥトの受け売り」

照れたような笑いを返し、魔力循環を継続しながら語りだす。


「ヨークとパーティーを組んだ時にここでギルマスに魔法を見せる機会があったんだ。

その時、調子に乗って攻撃ばっかりしてたら、

たった一発の反撃のファイアーボールにやられちゃって、しかもそれをヨークに庇ってもらっちゃたんだ」


ケリーが息をのむ。


「その時に、お前は弱い、女も守れないって打ちのめされた」


「無茶苦茶悔しくって涙が止まらなくてそんな情けない自分も嫌で・・・

強くなるって決めた」


共感したのか、ケリーが涙目になり頷きながら、

「さっきの自分と同じだ」

と言い、鼻をスンとならした。


「そうだね」

ライトは笑顔で返す。


DK(デストロイヤーキリング)のデストロイヤーはギルマスのことなんだ

僕はギルマスを倒したい。んーん、勝ちたい。

それぐらい強くなるって決めてパーティー名をDKって付けたんだ」


「のった!」

手を強く握られた。そして、紅紫色のケリーの目が輝いている。


盛り上がって話が長くなりそうだったので

「今日はそれぐらいでいいだろう。そろそろ帰るぞ」

トゥトが割って入った。




ギルド職員もすでに宿直以外残っていなかった。

ギルドを出たところでトゥトと別れ3人で顔を見合わせる。


吐く息が白い、今夜は冷えるようだ。

冬のカインズの街は雪が沢山降るほどではないが、冷え込んだ朝は水に凍りが張ることがある。



「ライト、どうするの?」

「う~ん・・・」

「自分は常に主と一緒にいる」

満面の笑みでケリーが言う。

「ヨークを送ってそれからトマテ亭に泊まろうかな」

「ケリーは?同じ部屋はダメだヨ」

そう言いながらヨークがライトの腕に自分の腕を絡め顔を近づけてくる。


ケリーは契約奴隷なのでギルドで護衛を雇った契約に近い。

なので、契約主だからといって体を自由にしたり傷つけたりはできないが、

奴隷が望めばその限りではない。


特にケリーは契約というより精神的にはもう従属以上、隷属に近い気持ちでいる。


しかし、それを黙って見過ごすわけはヨークにあろうはずもなく、

「わたしも一緒に泊まるヨ!」


「とりあえず、ご飯食べよ」

お腹がペコペコで思考能力が下がっていたライトはそれだけ言ってトマテ亭へと向かった。


夜半過ぎのトマテ亭は夕食時に比べると明かりは半分以下に落とされていて、キッチンの明かりもほとんど消えていた。


雰囲気が変わったフロアではカウンターやテーブルで数人が静かに酒を煽っていた。


「おかえりなさい、ライトさん」

受付にいたシェーンに話を聞くとこの時間はもう酒と簡単なつまみくらいしか提供できないそうだ。


「テーブルを借りても?」

「お飲みものをご注文いただけるなら」

「じゃあエールを3杯お願いします」

そう言って銀貨を1枚渡す。

「ではお釣りを・・」

ライトはそれを手で制してテーブルに向かう。


シェーンは伝票を書きながらカウンターに向かい厨房係に伝票を渡す。

そして、ジョッキ3つにエールを注ぎライト達が座ったテーブルへと持っていく。


ほぼ最速での提供だったが、

シェーンがテーブルに着いた時にはすでに皿が所せましと並べられ、

その皿には肉や肉や肉が盛られスープからは湯気が立っていた。


シェーンはその速さと量に驚愕するも、ライトはすでに食べ始めていた。

「お待たせしました」

「ありがとう~」

ライトが3つのジョッキを受け取り、コールドの魔法をかけ、2人に配る。


ヨークは慣れたように皿を受け取り、配膳の手伝いをして、自分の好みの料理を自分の皿に取り分けている。

ケリーは着いて行けず唖然としていたが、エールのジョッキを渡されて我に返り、

「祭の時の料理・・・」

ぼそっと呟いた。

「ん、好きなもの好きなだけ食べて」

口に肉を頬張り、食べる手を止めずにライトがケリーに言う。


そこにシェーンがビーツの酢漬け、チーズとベーコンの盛り合わせ、パンが沢山入った籠を持ってきて

「お釣り分にも足りませんが」

そう言ってテーブルに並べていった。

「ありがと、シェーンさん」

ライトは満面の笑みでシェーンに礼を言う。

「ごゆっくり、どうぞ」

シェーンも笑顔で返すも内心は(今日一番豪勢なテーブルだわ)と少年の末恐ろしさを感じていた。


F級やE級冒険者は普通ならば貧乏である。

なぜならば、駆け出しなので当然装備が貧弱で格上のモンスター討伐などできない。

資金に余裕ができれば優先的に装備の充実に充てなければいつまでたってもランクアップはできない。

当然ながら食費をふんだんに使うことなどあろうはずもなく、

やっとD級に上がったばかりのダイナアサルトですら硬いパンと干し肉が主食でお腹一杯食べることなどありえない。

運よく、レアなアイテムを発見したりレアなモンスターを討伐したときにほんの少しだけ贅沢するくらいが妥当である。


トマテ亭自体、実績を残したD級以上が泊まれる宿屋なのだが、

ライトは既に異彩を放ちすぎている。

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