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33 契約奴隷

居ても立っても居られない。


ヨークの心情を一言で表すならこうであろう。


気絶した男性冒険者と置いて行かれた不安も最初、少しだけあった。

が、

すぐに、ヨークの心はライトの心配で一杯一杯になった。


嫌な事ばかり考えてしまう。


この冒険者のような怪我をしないか・・・

もっとひどい怪我をしたらどうしヨ・・・

女性を守る為に無理をして・・・


考えれば、考えるほど、嫌な場面のイメージばかりわいてくる。


遠征先で離れ離れになるなんて考えてもみなかった。


コルフェのダンジョンの地下5階、

その奥へと続く石畳をただ見詰めることしかできないヨークは

苛立った自分をまだ、顧みることはできない。





「ルート、クリアー!」

ライトの声が聞こえた気がした。


「ライト!」

ヨークは走り出したい気持ちを必死に抑え、声をだす。


「ヨーク!」

石畳の先から返事と近づいてくる足音が聞こえる。


心配し疲弊し、ささくれだった心から

一瞬で反転しエネルギーが溢れ出すように動き出す。



駆け足の音が近づいてくる。


胸がムズムズして顔がニヤけてしまいそうな、涙が溢れそうな、ごちゃ混ぜの初めての感情。


タタタッ


ライトの足音だ。


石畳に影が見える。


ライトだ。


「ヨーク!」


ライト・・・ライト・・


出来たことは手を広げるのがやっと・・・


バスンっ


そこにライトが飛び込んでくる。


「ただいま、ヨーク」

そう言って強く抱きしめられた。


「・・・遅いヨ、すぐっていったのに・・・」

言いたい言葉がでてこない。


「・・・ゴメン」

「んーん、おかえり、ライト」


ヨークは涙がこぼれるのをぐっと我慢し抱きしめていたい手を頑張って緩めた。


「どうだった?」

ヨークがライトの顔を覗き込み聞いたのだが別の方向から


「4人だ、命が助かったのは」

トゥトが肩を貸した女性を床に座らせながら応えた。


ビクっと身体を震わせ

ヨークは現実へと引き戻される。


「ドルト!」

布を身体に巻いた背の高い女性が気絶している冒険者に駆け寄り体を触れる。

小柄な女性もややおぼつかない足取りで同じように冒険者の傍に寄り添う。


「一命は取り留めたが出血が多かったからな」

トゥトが説明する。


「こいつからの救援依頼があったからライトと2人で救出に駆け付けたのさ」


「・・・そうか、すまない」

大柄の女性、ケリーが顔を上げずにそう応えていた。


「トゥト、こっちの2人は?」

ヨークは座らされている2人について尋ねる。


「ああ、すこし、、ゴブリンに捕まっていたようでな」

「・・そうなんだ」


「トゥト、この後はどうするの?」

「救助者はギルドまで護送するのが習わしだな」

ライトの問にトゥトが答える。


「それじゃ、ライト!服を全部出して、トゥトも!」

ヨークが自分のバックから肌着をだしながら2人に声を掛ける。

「うん」「ヘイヘイ」


ライトは急いで、トゥトは諦めて、

マジックバックから服を取り出し始めた。





3日後、カインズの冒険者ギルドのとある個室


「私が払う!私が奴隷落ちして1人で払います」

薄桃色をサイドポニーに纏めたケリーが声を強くして言う。


救助された冒険者にはさらに過酷な道が待っていた。



救助された場合、回収された装備品、金銭、アイテム・・・すべて救助した側のものになる。

なので装備は買い戻さないといけない。

駆け出し冒険者にそんな蓄えがあるはずもなく、

しかも、今回は運が悪いことに初級ダンジョンでの事故なのでなおさらだ。


ドルトの治療に掛かったポーション代、護送、食費・・・

全てを失うどころか、数年分の収入額の借金を背負うことになる。


逆にライト達は5人の冒険者の救出とダンジョンの異変の報告、D級ホブゴブリン上位を含む魔石回収、装備、金銭、アイテムの回収でかなりの金額を稼いだことになる。


「どうにかならないの?」

ライトが教官のトゥトに懇願交じりに聞いてみる。

「ルールだからな。特別扱いは良くないんだ。それに」

トゥトがライトの目を見ながら続ける。

「俺たちが発見しなかったら、あいつらはどうなっていた?」


ドルト、ユーフィ、ケリーの3人はダイナアサルトというパーティーを組んでいた。

D級に上がり、装備を一新してのダンジョンアタックだった。


ダンジョン結合を知らず、

洞窟に足を踏み入れたがゴブリンの強さに撤退が間に合わず、

ドルトのみ怪我を負いながらダンジョンまで戻ったところだった。


トゥトの瞳には深い意味が込められているとライトは感じる。

(もし、トゥトがいなく、僕とヨークであの洞窟に入っていたら)

(僕がやられてヨークが捕まっていたら・・・・)


ダイナアサルトとデストロイヤーキリングの違いはほんの少ししかなかったのかもしれない。


思案顔のライトの頭にトゥトが手を置いて、

「生きてさえいればなんとかなる」


その言葉はライトの胸の奥に突き刺さっていた。



話し合いの結果、

ドルトと女性2人は療養所で回復に努める。

ユーフィはドルトの付き添いと看病。

DKの受け取り額は装備は買い戻し、ポーション代などの経費で金貨55枚必要。

ケリーが金貨60枚の契約奴隷に落ち、差額の金貨5枚をユーフィが受け取る。

奴隷の契約者はライト。


「な、な、なんで僕?」

「どうしてライトなの?」


「まあ、話し合いの結果だ」

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