30 ダンジョン結合
「ダンジョン結合?」
「ああ、そうだ、俺も実際に見るのは初めてだが、
厄介なのは巣がダンジョンの恩恵を受けちまうこった」
「どういうこと?」
「単純に言うと、ダンジョンの魔力が巣に影響を与えたり
採れた魔石をモンスターたちが食っちまうらしい」
「そうなるとどうなるの?」
「バカ強になる。普通なら撤退して援軍を呼んでいた」
「普通じゃないのは?」
「お前がいるからな、人命救助を優先できる。敵を見たらサンダーボルトを撃ちまくっていい」
「了解!」
ライトとトゥトの2人はダンジョンの石畳を走りながら会話をする。
石畳には黒い染みが続いている。
凄惨な道しるべにライトは身の毛がよだつ感じを受けるが
男を運んでいるときに
「ファイターと魔法使いの女がゴブリンに捕まった」
気絶したかと思っていた男がそれだけははっきりと伝えてきた。
それを想うと石畳を蹴る足に力が籠る。
道しるべを辿っていくと空気がひんやりとしてきた。
「近いぞ、気を付けろ」
トゥトの言葉にライトは目で頷きを返し気配察知の集中を増す。
そこには石壁が崩れ洞窟の入り口がぽっかりと開いていた。
雰囲気も変わったが一番の違いはにおい。
かつて、森でゴブリンと戦った時にも感じたが、洞窟からはその数倍、ゴブリン臭が漂ってくる。
いる!
洞窟に向け自然に左手が伸び薬指と小指が握り込まれる。
「サンダーボルト!」
ライトがそう唱えると左手から2筋の光が伸び洞窟に吸い込まれていく。
「ゴギョ」「グッ」
二つの悲鳴と共に入り口付近の気配がなくなる。
「ナイスショットだ!」
トゥトがサムズアップしながら言うのをライトは頷きで返す。
2人で入り口に近づく。
トゥトが入り口を覗き込むとちょうど倒れたゴブリンが魔石に変化した。
洞窟は入り口付近はダンジョンの明かりで中が見えるが、
奥に行くほど暗くなり
ダンジョンの明かりが届かない場所は完全に暗闇に閉ざされている。
「光を使ってもいい?」
「いや、ライトだと敵にこちらの接近を気づかせるからな、先手を取られるかもしれん
ダークネスアイは使えるか?」
「やってみる」
闇属性を目に集中する。
パチッ
目の奥で何かが弾けた感じがして今いる場所が暗転し洞窟の奥が明るく見える。
「できた」
「ああ、明かりや光に弱いから気を付けろよ。
罠は俺が指示するからライトは索敵を優先しろ」
「了解」
「7歩離れて付いて来い。行くぞ」
トゥトは左手のナイフを逆手で顔の前で水平に保ち、足音を立てずに普通に歩くよりも早い速度で先行する。
ライトも警戒しながらそれに続く。
洞窟は下へ向かって伸びておりそれが人が2人並んで歩ける道幅で天井は大人の身長よりも少し高い程度だ。
そこをトゥトはスルスルと進んで行くが
ライトが後ろから見ている限りスキがなくそれが安心感につながる。
ほどなくして広いT字路に出る。
右は上り坂、左は下り坂になっている。
トゥトは左右を確認し、無言で左へと降りていく。
洞窟の雰囲気が変わり、何かの存在感が確実に増してきた。
トゥトが立ち止まり、振り向いて目を指さす動作をする。
ライトは頷いてダークネスアイをとくと先が明るくなっているのが見える。
トゥトが明かりがついている場所を岩陰から確認し、手でライトを呼ぶ動作をする。
きっちりトゥトの7歩後方にいたライトはなるべく無音で近寄り、トゥトと頭を上下に並べ覗き込む。
かがり火が明かりを灯し部屋になっていて、一目、6匹のゴブリンが部屋にいる。
全個体、前回討伐したゴブリンよりも1周りから2周り大きく筋肉質な印象を受ける。
トゥトはライトに視線を移し「いけるか」と声を発せず口だけ動かす。
ライトもそれを察し無言で頷き左手を伸ばす。
「・・・・・・ト」
ほぼ口パクで最後の音だけ微かに漏れ聞こえたが起きた現象は
6筋の光がゴブリンの頭や胸を貫いていた。
完全に不意打ちとはいえ、対応できた個体はおらずドサドサと倒れしばらくわずかに動いていたがやがて全て魔石に変わる。
トゥトが部屋に入り、室内をチェックし、ライトを手招きする。
部屋の奥にはさらに通路が下へと続いていて
2人は先へと急ぐ。
通路はすぐに次の部屋へと続いているようで、先に明かりが見える。
そして、
女性の悲鳴とも呻き声ともわからない声と共にゴブリンの声が聞こえてきた。




