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29 コルフェのダンジョン2

食事も終わりダンジョンの地下5階へと向かう。


「ここからは初歩的な罠があるから気を付けろ」

「「了解!」」

教官の言葉を2人は真剣に受け取る。


「まあここは最初から穴が開いてる落とし穴とスイッチを押すと作動する仕掛けくらいしかないけどな」

「別のダンジョンだと違うのですか」

「ああ、場所によってはスカウトがいなきゃ全く進めない罠を特化したダンジョンもある」

「なるほど」

ヨークの質問をトゥトが答える。


「モンスターはゴブリンが増えるくらいなので2人でやってみな・・・・いや、待て」

トゥトがそう言いながら5階へと降り立ち顔をしかめる。



「どうかした?」

先に歩くライトが振り返りトゥトを見る。


「・・・お前たちも感じてみろ」

トゥトはそう言いながら地下5階のダンジョンの先を指さす。


ライトはその言葉を聞いて集中して気配察知の感度を高めてみる。


「なんか空気が違う?」

「風の流れを感じるヨ、あと、においも変わった気がする」


「ああ、さっきよりも気を引き締めて行け」

トゥトはそう言いながら自分のマジックバックから弓と矢筒を取り出し背負う。


緊張感が一気に増す。

ライトの足取りが軽いものから歩幅が狭くややすり足気味に変化する。


「ヨークもマッピングは一旦止めていい、前に集中しておけ」

トゥトは間合いを詰めヨークのすぐ後ろまで近づいて言う。

「分かったヨ」

ヨークはマッピング道具を自分のバックにしまい、前を見る。


3人は警戒態勢のままダンジョンを進むと明らかに今までとは違う雰囲気になってくる。


ザッ、ザッ、ザッ


ライトの靴が石畳の通路をすり足で進んで行く音だけが響く。


通路を進むと右に直角に曲がっていて見通すことができない。


スッとトゥトが無音でライトの前に出て、左手の平を下に向けながら降ろす。


2人はそれを見てその場に留まりトゥトを凝視する。


トゥトは右側の壁に背を付け、曲がり角の先を覗き込み、何かを確認して振り向き

「行くぞ!」

そう言って右に続く通路に躍り出る。


2人もそれに続き角を曲がると通路の先に人が倒れている。


トゥトは倒れている人の傍で立ち止まりその人と通路の先を確認している。


そして半歩ほど距離で倒れている男に声を掛ける。


「おい!大丈夫か?」


「ぁぁ、人・・・か?」

トゥトの声に若い男は弱い反応を示す。


そこにライトとヨークも近づこうとするのをトゥトが手で制する。

2人はそこで立ち止まる。


それを確認したトゥトが男に近寄り声を掛ける。


「なにがあった?」


「水を・・・」


その瞬間にはライトから革袋が差し出されていた。


トゥトはそれを受け取り栓を開けながら男の口元に近寄せる。


男は革袋に血まみれの手を添え注ぎ口から一気に水を飲む。


「プファッ・・・すまない」


「かまわん、なにがあった?」


「この先で・・ダンジョンとゴブリンの巣が・・・・くっついてやがる」

息も絶え絶えに男が状況を話す。


「そうか」

トゥトは短く返事をして男の状態を確認していく。


2人にようやく男の状況が見えてきた。


若い、10代の男は武器を持たず腕には無数の切り傷があり出血している。

更にズボンにはもっと多くの切傷があり、ズボンが変色していて、

ズボンからの染みがダンジョンの奥へと続いている。


「ライト!ヒーリングを胸に、ヨーク、これを足にかけてくれ」

トゥトからの指示が飛び、ヨークはポーションを数本渡される。


「俺はいい、仲間がゴブリンに連れていかれた・・」

「今は喋らず、これを飲め」

トゥトはそう言って男の口にポーションを突っ込む。


ライトは光魔法のヒーリングを唱え男の胸の辺りに手を添える。


トゥトはナイフで男のズボンと上着を切り素肌を露出させていく。

それに合わせてヨークがポーションを振りかけていく。


シューッという音と共に白い湯気のようなものが立ち上がる。

「グッ・・・」

男が息を漏らす。


ライトは空いた手でマジックバックから綺麗な布をヨークに渡す。


ヨークも無言で受け取りポーションを掛けながら傷の周りを布で拭いていく。


(酷い傷だヨ、刺し傷が深い)


「ヨーク、遠慮せず、ジャブジャブかけろ!深い傷からだ!」

トゥトはそう言いながらポーションを追加でだす。

傷にポーションがかかる度に男が呻く声やビクッと跳ねたのでやや遠慮がちにポーションをかけていたヨークだったが

「わかったヨ!」

ジャブジャブかけ始めた。


「ライト、胸はもういい、腕の傷を頼む、まずは右腕のそこ、その次は左手のこれだ」

そう言いながら治療箇所を指示する。

「了解」


3人がかりで治療にあたる。


ポーションやヒーリングを浴びる度に

シュー、シューと音を立てながら傷口が閉じていく。


男からはもう声が上がらなくなっていた。


時折、トゥトの指示が出るが次第に緊急度が下がっていった。




「よし、これでいいだろう、ライト、身体強化を使っていい、こいつを階段まで運ぶぞ」

「了解」


階段部分は敵が来ない安全地帯(セーフティゾーン)になっている。


そこまでライトとトゥトで男を運ぶ。


「ライト、俺とゴブリンの巣に行くぞ、ヨーク、ここでこいつを守っていてくれ」


!!

ヨークが息を飲み反応する。

「わたしも行くヨ」


「ダメだ!ここで待機してろ、ライトは必ず連れて帰る」

トゥトの碧眼が力強くヨークを見る。


2人の目が交差する。


そこにライトが割って入り、ヨークの肩に手を置いてヨークの目を見る。


「ヨーク、ここで待っててすぐ戻るから」


ヨークはライトの目に映っている自分の姿を見てぐっと奥歯を噛み、

一歩踏み込んでライトを抱きしめる。

ライトも優しく抱きしめ返す。


「わかったヨ」


数秒の沈黙の後、そう言ってから抱きしめていた手を放す。

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