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27 教官トゥト

「ヨーク!右のスライムをお願い!」

「わかったヨ!まかせて」


ダンジョンの地下2階。

石壁、石畳の通路で

E級冒険者のパーティーDK(デストロイヤーキリング)の2人が戦っている。


ショートソードを両手で握りライトはスケルトンと対峙する。


スケルトンは無造作に近づいて来て錆びた剣を振り上げ振り下ろす。


ライトはその剣の軌道を躱し横薙ぎにショートソードを振るう。


バキャ、ガラガラ


ショートソードがスケルトンの腰骨の少し上の背骨にヒットしてその場に崩れ落ちる。



「えい!」


振りかえったライトの視界にはスライム目掛けてメイスを振り下ろすヨークの姿が見えた。


ベシャ


メイスがスライムを押しつぶし体内の核を砕くとスライムは魔石を残し消滅する。


「やったヨ、ライト」

「ナイス、ヨーク」


ライトはヨークの呼びかけに応え、ヨークが魔石を拾うのを見て、自分もスケルトンの魔石を拾いに行く。


「よし、いいだろう」

そう声を掛けてくるのはベテラン冒険者のトゥトだ。


「このレベルの相手は一対一でなら問題ないな」

「うん、だいぶ慣れてきたヨ」

「もう一撃で倒せるからね」


「近接戦の体捌きや間合いは戦闘の基本だからな、繰り返し訓練して慣れが必要だ」

「「了解」」


ベテランの言葉を駆け出しの2人は素直に聞き入れる。




半年前にギルマスに呼び出され「オモリ」を「お願い」されたスカウトのトゥトは

2人に冒険者としてのあらゆるノウハウを教え込んでいた。

それは冒険の準備である武器選びから先輩への挨拶、戦闘、移動方法等々多岐にわたる。


そして最重要なのは生存すること。


ハイリスクハイリターンなどもってのほか

常に十分以上、十二分に安全(セーフティ)マージンを取ることを口を酸っぱく伝えていた。


その一環として、近接戦闘の訓練を今現在、実施中である。


彼曰く、

「魔法使いでもC級以上を目指すなら近接戦闘がF級並みの素人(ビギナー)では話にならない」らしい。


実際に冒険者の死亡理由がモンスターとの純粋な戦闘だけではなく

無謀な行程や知識、準備不足や罠への対応力不足などののヒューマンエラー

そして何より盗賊や冒険者の裏切りなど人の悪意によってその道を閉ざす事件は枚挙にいとまがない。


そういった類の問題に対応するためには魔法使いといえども、ある程度は近接戦闘で掌握するか

向かい合い時間を稼げるくらいには慣れが必須だということ。


とは言うものの、2人の成長は目覚ましい。


ライトは出会った時からすでに高ランク並みの攻撃魔法を使いこなし

豊富な魔力量で覚えたての魔法であってもそれを連射することで他を圧倒し

自己流ながら身体強化もかなりのものだった。

ヨークはそんなライトと常に行動を共にし、

ライトの自由な行動についていけるように自身の能力と知識を高めることに余念がなかった。


G級だった2人はひと月も待たずして揃ってF級に上がり、

ギルドが用意したカリキュラムを予想以上の速さで消化していき、

秋の終わりにはF級を卒業するに至っていた。


その卒業試験的なクエストはゴブリン討伐であったが、

トゥトは付き添い程度でほぼ2人の魔法攻撃であっという間にリーダー付きの集団を狩りつくした。

その数、なんと34匹。

ライトは火魔法のFB(ファイアーボール)FW(ファイアウォール)、ヨークは無属性のMM(マジックミサイル)でまさにごり押しだった。


「3倍いても、問題にならんな・・・」

はトゥトの独り言である。


(なんてアンバランスだ

細かな注意点や戦術などを教える機会がなさすぎる・・・

どんなに攻撃力があっても、毒矢の一撃や罠でゲームオーバーなのだがな・・・

この2人の弱点は・・・)



「よし!Eに上がったら魔法抜きでダンジョンだ」

そのトゥトの言葉に2人は顔を見合わせて

「「了解!」」

声が合わさる。



それが先月のこと。


それから遠征と近接戦闘の準備をして今に至る。


カインズの街から乗合馬車なら2日、徒歩なら4日程度の場所にコルフェの初級ダンジョンがある。



ギルドにて十分に近接戦闘の訓練はしてきたが、

ダンジョンに入って初日

いざ実践になると初見の相手には腰が引け間合いも読めない。


最初はトゥトが手本を見せると言ってモンスターを引き付け実践を間近で見学させてくれて

次に攻撃せずに近接戦闘に慣れるまで防御に徹する練習方法を教えてくれた。


「新人の魔法使いが命を落とすのは

戦線が崩壊した時の近接戦闘の実践不足が多いってことを肝に銘じておけ

そしていかなる場合も冷静に行動を選択できる判断力も重要だ」

トゥトの教えは常に実戦的で言葉の先に状況が見えてくるほどイメージが湧きやすい。


(あの時、自分にはなんの選択肢もなかった)

その忸怩たる思いがライトの成長を後押しする。


防御に徹すればほぼ攻撃を無効化できるくらいになったころ

ようやくトゥトから攻撃の許可が下りた。


最初は一つ一つ攻撃を見て考えて受けるの連続の2人だったが

このころには見た瞬間からスムーズに次の行動に移れるように体が動いていた。


ライトとヨークは1体づつ敵と対峙し攻撃と防御を分担したり交互に攻撃したりと色々な方法を試しながらスケルトンやスライムなどのモンスターを倒していった。


そして次の段階がダンジョンの攻略である。


「よし!敵にも慣れたな。このダンジョンは4階までは罠がない。2人で攻略してみろ」


「魔法は?」

ライトは一瞬考え聞いてみた。


「お前が自由に魔法を使ったらこんなダンジョン、余裕で踏破しちまうよ

魔法も身体強化もなしで行けるところまで行ってみろ」

その言葉を聞いてなぜかヨークの方が喜んでいる。


「わかったヨ、先生、行こライト」

ヨークはそう言ってライトの手を引いてダンジョンの奥へと向かって行った。

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