24 葛藤と
「これからのことも話しておこうか」
マルディローズがそう言う。
「二人は従来のG級の魔法使いとして、魔法を覚えてF級を目指すことになる。
ライトは本来の力は使わずに新しい魔法で採取をこなすといいだろう。
そしてギルドからガイドを一人つけさせてもらうよ」
「ガイド?」
ライトが疑問を投げかけるとマルディローズは続ける。
「スカウトのおっさんだが、お二人さんはしばらくそいつから冒険者のことを学ぶといい」
ライトはヨークの顔を見るとヨークが少し俯いてから見返して頷く。
「はい、わかりました。
それとどこかで魔法の練習をしてもいいですか?」
「そうだね、一度見せてもらおうか」
マルディローズがそういいながらレオンを見る。
「今からなら小型の修練場が空いてます」
そう言いながらレオンはスッと立ち上がる。
「じゃあ、行こうか」
そう言ってマルディローズも立ち上がり部屋から出ていく。
ライトとヨークは慌てて追いかけていった。
小型の修練場はギルドの地下にあるようでマルディローズの大きな背中がさっき上がってきた階段を一階よりも下に降りていく。
一階分地下に降りたところで階段から廊下が伸びていてその先に左右にドアがあった。
中は見えないようになっていて左のドアの脇にレオンがカードを合わせている。
ガチャと音を立てて鍵が外れる。
レオンは扉を押して入って行き、マルディローズもそれに続く。
いつの間にかヨークはライトの服の後ろをつまんでついて来ていた。
ライトは扉の前から部屋の中を覗き込むと
思いのほか広く、天井も高い。
中くらいの畑ほどの広さがあり、壁際には様々な武具が置いてあった。
「さっさと入っておいで」
マルディローズから急かされるように呼ばれる。
ライトは恐る恐る部屋に入り、マルディローズの近くまで行く。
引っ張られるようにヨークがそれにつづく。
「あの的に向かって魔法を撃ってみな」
レオンが木でできた土台に簡易な鎧と兜を括り付けた的を用意していた。
ライトは振り返りヨークの目を見るとヨークはハッとして手を放し一歩身を引く。
ライトはそんなヨークを見ると一瞬微笑んでから再度、的の鎧を注視する。
準備が済んだのかレオンが2歩3歩と的から離れていく。
ライトは左手を伸ばし親指を立て人差し指と中指を的に向け薬指と小指を軽く握り込む。
「サンダーボルト」
バシュッっと軽い音を立てライトの指先から眩い閃光が的に向かって線を引き結ぶ。
ドゴッ
鎧は魔法の威力を受け胸に拳大のへこみを作る。
「ふん、中々の威力だね、でも、ライト、全力じゃないだろう?」
マルディローズが目を細めライトを見透かしたように言う。
ライトは頷き再び構える。
「穿てサンダーボルト」
ライトの指先からは先ほどの数倍の太さの閃光が放たれ鎧を貫通し土台をなぎ倒して部屋の壁に穴を開ける。
今度はさすがのマルディローズも隻眼を丸くする。
「どうだい?」
その問に答えるのは副ギルド長のレオン
「E級以下は・・・D級でも初見では対応できる者のほうが少ないかと」
「だろうね」
同意を返しながら隻眼がライトを見下ろすと当人はケロっと何もなさげに見返してくる。
「ライトは何発くらい今のを放てるんだい?」
「数えきれないくらい」
フーっと長めに息を吐き両手を広げて首を左右に振る。
「ライトはそいつを人に向けて撃ったことは無いんだよな?」
「人に当てたことはないけど、こないだ3人組の間の木に向けて撃ちました」
「当てなくてよかったよ」
マルディローズがやや思案しレオンに問う。
「いけるかい副ギルド長殿?」
緊張の面持ちでレオンが頷きを返す。
「じゃあライト、こんどはアレ(レオン)に向かって今のを撃ってみな」
マルディローズが顎を副ギルド長のほうに動かすとライトが察して怪訝な表情を浮かべる。
「・・・いいの?」
「ああ、責任はアタイが取るさ」
ライトは左手をレオンに向けて構える。
真っ直ぐに伸ばした左手の人差し指の先にレオンがピッタリと収まっている。
が、口から言葉が出てこない。
先ほどの鎧に向かって構えるのと感覚が全然違う。
背中に変な汗が出てきて、足の先からか、震えが伝わってくる。
構えていた左手もプルプルと震えだし狙いが定まらなくなる。
そんな中、ライトの背中にそっと手が添えれらた。
その手も震えているのが背中を通して伝わってくる。
ライトは思わず息を吐きマルディローズの方を見やる。
マルディローズもそんな2人の姿を確認してから、大きくゆっくり頷いて
「それでも撃ってみな」
やや大きめの声をその巨体から放つ。
手の震えは収まらない、膝もガクガクしている。
背中から伝わる震えも大きくなったのがわかる。
「どうしたライト、そんなんじゃ誰も守れやしないよ!」
守る・・・
その言葉がライトのこころに響く
ライトは大きく息を吐き、吸い込む。
(僕は守る・・・)
震えは小さくなり足のガクガクは収まった。
背中にあった手は腰に回され頭の後ろから視界を共有しているのを感じる。
(男は女を守る)
迷いがなくなり左手の照準が定まる。
「穿てサンダーボルト」
さっきよりさらに太い閃光がライトの左手から放たれ、その先には銀髪眼鏡のレオンが両手の平を身体の前に広げて待ち受けている。
バギャァァーーーン
破砕音なのか弾かれる音なのか、聞きなれない様々の音がその場に轟き白煙が辺りを包んでいて
ライトには状況が良く分からない。
やがて、白煙は収まり、視界の先に立っている人影が見えてくる。
そこには魔法を放たれる前と同じ姿の副ギルド長が立っていた。
ただ唯一の違いはレオンのしていた白い手袋の掌側が焼き焦げて掌が露わになっていた。
「あの煽り方は無いでしょう!マスター!!普通は段階を上げて少しずつ・・・」
レオンの非難を受けずマルディローズが自分の問を返す。
「で何層だい?」
「・・・8層です」
「そうかい、なるほどね」
ライトはファーと大きく息を吐きマルディローズに尋ねる。
「なんの話?」
「お前が砕いた多重結界の枚数だよ」




