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23 ギルドマスター

フェイの話の後、ギルドマスターの部屋に通された。


「こちらに座って少々お待ちくださいっス」

連れてきてくれたフェイからソファーに座るよう指示される。

フェイは部屋の仕切りの向こう側に消えていく。


しばらくするとその仕切りの先からドスドスという足音と共に隻眼赤毛長身のギルドマスター、マルディローズがあらわれた。


「よう~お二人さん、調子はどうだい?」

軽い口調で酒場の酔っ払いのような声を掛けてくる。


「フェイさんの話、とても参考になりました」

ライトが元気よく応える。


「そいつは重畳だ」

ガハハと口では笑っているが目は笑っておらず獲物を観察するような雰囲気だとライトが気づき身構える。


「お、気づいたか坊主。それぐらいの警戒心は持ってるってことか」

またガハハとマルディローズが笑う。


「まず、話を聞こうか。お二人さんはパーティーを組んでやっていくのは解る、そこで冒険者でやっていく目的は何だい?」

尋問のようなマルディローズの問いかけにプレッシャーをライトとヨークは感じて返答を躊躇ってしまう。


「ぼ、僕はドラゴンを倒せるような冒険者になってみんなを守りたい」

思い切ってライトがそうマルディローズに言う。

「わたしは家族が食べるに困らないくらいお金を稼ぎたいです」

ヨークも少しオズオズしながらもはっきりと答えた。


「なるほどね」

マルディローズは軽くそう応え、二人をまじまじと見て一つため息をして再度口を開く。


「普通なら勝手にやりな~で終わりなんだがな、この坊主が普通じゃないんだよ」

マルディローズの視線がライトに固定され、ヨークも思わずライトの方を見てしまう。


「嬢ちゃんもそれには気づいているだろう?」

「はい、言いたいことは解りますヨ」


「OK、それじゃあその先の話だ、勝手にやりな~でアタイ等が放置したらどうなると思う?」

「「・・・・」」

2人は顔を見合わせてしばらく考え込む。


「ちょっと難しいかい、じゃあ別の例え話だ。

額にいつも大金貨を張り付けてるG級冒険者がいたとしたらそいつはどうなる?」


「襲われて取られるヨ」

今度はヨークが即答する。

マルディローズが一つ頷いて続ける。


「OK。その大金貨の冒険者がとても強くて襲ってくる奴らを返り討ちにしても、もし、その冒険者にもう一人大切な仲間がいたとしたらどうだい?」


マルディローズの問いかけに2人は息を吞む。

そしてマルディローズの意図を察して2人は顔を見合わせる。


「アタイが一番言いたいのは二人の状況だ。

坊主がただ優秀な新人なら良かったんだが、只者じゃない。

今すでに、大金貨よりも数段上の価値はあるだろうからね。

のほほ~んと冒険者をしていられる状況じゃないってことは解ってほしいのさ」


その言葉を聞いてヨークがブルっと身を震えさせ、ライトの手を握る。


「最悪なのは嬢ちゃんを人質に取られて返してほしかったら奴隷契約しなって言われたら坊主はどうする?

そんな事件は山のようにあるからね。」


「守る」

ライトが震えるような声で言い返す。


「どうやって?」

マルディローズはギロリと隻眼で睨みながら冷たい声を返す。


「ヨークが人質に取られないように守るよ!」

ヨークの手を握るライトの手に力が籠る。


「たっはぁ~田舎から出てきたばっかりの12歳の坊主が人の血を吸う悪党に太刀打ちできるわけないだろう」

マルディローズが額に手を当てながら首を振る。


ゴホンっとソファーの横のほうから咳払いが聞こえた。


3人が咳払いの主に視線を送る。


「それくらいでいいでしょう、マスター」

そこには副ギルド長のレオンがトレーを持って立っていた。


レオンはテーブルにトレーを置いて全員にドリンク入りのグラスを配ると自分もソファーに腰を下ろす。


「どうぞ、ケモモジュースを冷やしてきました」

レオンはそう言ってグラスをすすめる。


ライトは冷えたグラスを手に取り少なめに液体を口に含む。

口内にその液体が触れると温度差で自分の顔や頭が熱くなっていたのが解った。

そのまま液体をゴクリと飲み込みフウッと一息吐く。

隣でヨークも一息付いているのを見て周りの様子が見えるようになってきた。


その様子を見てレオンが口を開く。

「マスターはお二人がちゃんと冒険者として成長することを誰よりも願っています。

見た目や言動から誤解されがちですが」

「「・・・・」」

2人は言葉がでない。


「もしさっきの話の人質事件が起きたとしたらその犯人は火の玉ローズによって首をちぎり取られます」

「オメーは余計なことを言わなくていいんだよ」

そういったマルディローズの顔はこころなしか赤く見える。


「そう言えば、フェイさんもマスターはいい人だっていってたヨ」

緊張が解け笑顔でヨークが言う。


「どいつもこいつも余計なことを・・・」

マルディローズの声のトーンが低くなっていく。


そんな中ライトだけが緊張を解かずにマルディローズの目を見ながら言う。

「僕はどうすればいいですか?」


マルディローズもライトの目を見返しながら応える。

「ここは大人が選択肢を出すべきだろうね。

坊主、いや、ライトがソロなら簡単だ、C級やB級パーティーに見習いで所属させるよ。

でも、それは望まないだろう」

ライトはゆっくりとでも深く頷く。


「ヨークとパーティーをやってくならグリフォンの子犬の鳴き声だね」

「「??」」

ライトもヨークも意味がわからない。


「グリフォンは生後1週間もすれば狼にも負けないけれど鳴き声は成獣になるまで子犬のような高い声でキャンキャン鳴いて外敵を油断させるんですよ」

レオンが説明する。


「要するにグリフォンのライトは成長するまで子犬の真似をするってこと?」

怪訝な表情でヨークが尋ねるとマルディローズが頷く。


「そんなのダメだヨ、ライトは凄い魔法使いなのに!」

ヨークが憤慨して立ち上がる。


その手をライトが掴んで優しく引く。

ヨークはバランスを崩してライトの方に倒れ込むのをそっとライトは抱き留める。


「僕はそれでいい。僕はヨークとパーティーをやっていく」


「やだヨ、わたしはライトの足手まといだヨ」

ヨークはライトの膝の上に座ってイヤイヤするように言う。


そんなヨークを優しく撫でるようにマルディローズの手が頭に伸びてくる。

「ヨーク、ライトを独りぼっちにしたいのかい?」

マルディローズの隻眼がとてもやさしく見つめてくる。


「・・・そうじゃないヨ」

「ライトにも仲間が必要なんだ、一緒に冒険して一緒に成長する、同じ目線で話をして喧嘩して飯くって笑い合う大切な仲間さ。まだまだ12歳のガキだ、アタイからみたら子犬と一緒さね」

マルディローズがゆっくりとでも丁寧にヨークに言う。


「同じ目線・・・」

ヨークの心に響き、ここ数日のライトとの冒険が頭をよぎる。


「僕の師匠の言葉も対人戦や人の悪意に注意することが多かったけど、その意味がやっと少しわかった気がします。ありがとう、マルディローズさん」

ライトが深々と頭を下げる。


「師匠の言葉?」

ヨークがボソッとつぶやくとライトが

「うん」

と応じてマジックバックからメモ帳を取り出す。


「この世界は魔物や病気で命を落とすこともそうだけど他人によって奪われることにも気を付けなくちゃいけないんだよ。

力や価値を持てば持つほどより強い悪意にされされる可能性が増えることもある。

時には大切なモノが理不尽に奪われるかもしれない。

そんな時に対人戦が全くできなかったら全てを奪われるだけなんだよ。

だってさ、今日、ギルマスに言われたこと全部書いてある」


「そう言えば、魔法のことも冒険者になるまで人には見せてはいけないって言われていましたね」

レオンが前回話した時のことを言っている。


「魔法のことといい、教えといい、随分と優秀な師匠だな」

マルディローズが感心したように言う。

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