21 テスター
今日は朝からヨークと2人で冒険者ギルドに新しい魔法習得の話を聞きに来ている。
「まずは魔力の量と質を調べてみましょう」
ギルドの職員にそう言われ2階の魔法部署へと案内される。
その部屋はたくさんの本棚に囲まれていて奥の部屋は何かの作業場になっているようだった。
「フェイ、新人さん達の魔力チェックよろしく」
「はい、了解っス!」
若い研究者風の眼鏡を掛けた女性が引き継ぎ説明をしてくれる。
「まず、最初に魔道具で魔力の量と質をしらべて魔法使いとしての素質を調べるっス。
次に使える魔法と修練について説明するっス」
「「お願いします」」
ヨークとライトは揃って返事をする。
フェイはカウンターの上になにやら器具を置いて説明する。
「これが魔力を量るテスターっていう魔道具っス、このハンドルを握ると魔力の量と質が判るっス」
そう言いながら2人を魔道具の前に誘導する。
「ヨークからどうぞ」
ライトはうずうずしていたがヨークに先を譲って言う。
「わかったヨ」
そう言ってヨークが一歩前に歩み出て魔道具の前に立つ。
カウンターの反対側からフェイが手に持ったボードに書き込みながら言う。
「名前はヨークさんっスね、ではどうぞ」
そう言って左右のハンドルを手で指し示す。
ヨークはちょっと緊張しながら左右のハンドルに手を伸ばし握ってみる。
すると昨日、ライトに流された魔力よりも大分弱い感覚が左手からスッと上がってくる。
それが左肩に差し掛かるとちょっと心臓がドキドキしたが何事もなく右肩に抜けて右手から出ていく。
「しばらくそのまま握っててくださいっス」
そういいながらフェイはボードに何やらサラサラと書き込んでいく。
「はい、もう放して大丈夫っスよ。
ヨークさんは魔力が流れやすいっスね、魔力量はE、属性は水と無に素質があるっスね」
そう言いながらボードから紙を外して渡してくれる。
紙にはフェイが今言ったことが記入されていた。
「はい、次どうぞっス、名前を聞いてもいいっスか?」
フェイがライトを促して言う。
「ライトです、よろしくお願いします」
今度はライトが魔道具の前に出てきて、なんの躊躇いもなくハンドルを握る。
ライトがハンドルを握ると以前ムーに魔力循環をしてもらったことに似た感覚を左手から感じたがいつまでたってもフェイから終わりの声がかからない。
ライトがふとカウンター越しにフェイの顔を窺うと眼鏡のフレームをはみ出さん位に目を開いて驚いている研究者風の女性が口を開いた。
「振り切れてる・・・・っス」
最後の一言を言った瞬間に我に返ったのか眼鏡に手を掛けて
「少々お待ちくださいっス」
そう言って部屋を駆け出して行った。
しばらくすると息を切らせたフェイが女性を連れて戻ってきた。
大柄だった父親と同じかそれ以上の背丈、赤髪がツンツンと逆立っていてタンクトップに赤い皮のベストを羽織って腕も腹も筋肉で盛り上がっていて、右目に眼帯をしたいかにも冒険者風な女性が親指をライトに向けて口を開いた。
「この坊やが?」
「はい、ライトさんっス」
フェイがコクコクと頷く。
「ふ~ん・・・」
軽い笑みを浮かべながらライトを品定めするように見ている。
「アタイはマルディローズ、何はともあれ、魔力チェックしてみるか」
そう言いながらライトに向かって両手を差し出す。
「あ、はい」
ライトはやや気押されながらも両手を差し出す。
その手をガシっと掴まれ輪を作るように広げられる。
「いいよ、坊や、好きに魔力を流してみな」
「はい」
がっしりとしてゴツゴツする手の感触を感じながらライトは昨日ヨークに流したのと同じようにやってみると、魔力を流した右手を一瞬ギュッと強く握られた。
「へー、これは中々刺激的だね」
ライトにはマルディローズの笑顔が少し深くなった気がした。
「いいよ、もっとジャンジャン流しておいで!」
「はい」
ライトは素直に従い、全力の半分くらいの魔力を流してみた。
「ハッハー!こいつはご機嫌だ!」
マルディローズがそう言うと今度はライトの左手をギュッと握られてそこから熱い感覚が伝わってくる感じがする。
「まだイケるかい?」
全身に汗を滲ませながらマルディローズがライトに聞く。
ライトの身体も熱くなって全身から汗が噴き出る感覚を覚えながら応える。
「もう少しなら」
ライトは遠慮がちにこたえる。
「そうかい、やってみな!」
「はい」
そう返事をして全力の3/4くらい流してみる。
両手は既にがっちりと握られ少し痛いくらいだ。
マルディローズは目を閉じプルプルと震えながら何かを我慢している感じがする。
ライトはふと周りに目配せをすると、ヨークが赤い顔でこちらを心配そうに見ていたのに気づいた。
息を吸ってヨークに一声かけようとした瞬間、目の前のマルディローズの目がカッと見開かれて叫ぶように言う。
「極上だぜー」
ザバーン。
マルディローズの叫びが止まる前にライトとマルディローズは頭から水をかけられた。
「熱いっス、マスター」
振り向くとフェイが右手をライト達に向けていたので、水魔法を使ったようだ。
マルディローズはライトの手を放してフェイの方に一歩踏み出し
「てんめぇー」
と言いながらフェイを睨むとフェイは視線を横に向ける。
マルディローズもその視線の先に目を向けるとそこには副ギルド長のレオンが背筋を伸ばして立っていた。
「マスター」
レオンが目を細めて低い声で言う。
「いや、これは・・・・」
慌てたようにマルディローズが後ずさりながらレオンと距離を取ろうとするがレオンは素早く間合いを詰めるようにスタスタ歩み寄っていく
「前回もやり過ぎたの一言で修練場の壁に穴を開けたことを覚えてますか?」
「え、あ、・・はい」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・という圧力をライトはレオンから感じる。
「その前は本棚を半焼、その前はテーブルと椅子を2脚。今度は何を破壊するのですか?」
レオンはマルディローズに詰め寄り顔の距離はもう鼻が付きそうな距離だ。
マルディローズはそのレオンの顔をグイっと手で引き離し
「わーったよ、気を付ける」
そう言いながら顔をそむける。
「そういうわけでコレは私の方で連れていきますので後はフェイ、よろしくお願いします」
「はい、了解っス」
「Aだ」
マルディローズが親指をライトに向けて言う。
「わかりました!」
フェイはカウンターに置いてあったボードを手に取ると何かを書き込む。
マルディローズはレオンに丸めた背中を押されるようにして退室していく。
「ライト、大丈夫?」
ヨークがライトに歩み寄り顔を覗き込みながら伺う。
「うん、平気」
ライトはヨークに笑みを返しながら、マジックバックから布を取り出す。
その布をヨークはひったくるように手に取りライトを拭こうと
「なんか凄かったヨ」
そう言ってライトの左手を取ろうとしたら
「熱っう」
ライトの手の熱さに驚き改めてライトの様子をよく見てみると、先ほど掛けられた水分が蒸発したのか全身から湯気が出ていた。
「マルディローズさんの魔力が熱かったんだよ」
ライトはそう言って左手を見ると握られていた部分が赤くなっていた。
「マスターは火魔法が得意なので魔力が高まると熱く成るっス」
フェイが書き終えたボードをカウンターに置きながら教えてくれる。
「マスター?」
ライトが聞き返す。
「マルディローズさんはこのカインズの冒険者ギルドのマスター、ギルマスっス」
「ギルマス・・・破壊王かと思った」
「・・・私も初めて見たヨ」
「見た目や態度はアレなんスけど、良いギルマスっスよ」
そう言いながらフェイは二人にボードに挟んであったシートを二人に見せる。
「テスターの結果は次の通りっす。
ヨークさんはさっき言ったように魔力量はE、属性は水と無に素質があるっスね。
ライトさんは魔力量はA、全属性っすね」
「「全属性」」
ライトとヨークの声が揃って聞き返す。
「そうっス、火水土風、光闇そして無の7属性全部揃ってるっスね」
ライトの好きな童話
【破壊王とドラゴン】




