閑話 ムーの教え
「魔法はイメージが大切」
ライトがムーの言葉を復唱するようにつぶやく。
「できると思ってやることが大事なんだよ、もう、岩を穿つイメージでも同じものが放てると思うよ」
ライトが再び岩に向けて左手を伸ばす。
「サンダーボルト」
岩に3つ目の穴が開く。
「そうそう、あとは数を撃ってなじませていけばいつでも思い通りに放てるようになるよ」
ムーはそう言ってライトに数回の練習を促す。
ライトが魔法を放つ度に岩に穴が増えていく。
何発かの魔法を放ってからライトは先ほどのデカブツのことを思い出しムーに聞いてみた。
「師匠、さっきのは?」
「ああ、アレはライトの過去の記憶にアクセスしてもう一度同じ体験をしてもらっただけさ」
ムーはさっきの事象の説明を簡単にする。
「また、デカブツに襲われたかと思った・・・」
「まあ、夢を見たようなもんだよ、人は切羽詰まった時や命の危機を感じた時、あとは感情が爆発した時なんかにリミットブレイクが起きやすいからね」
そう言って今度はリミットブレイクの話をする。
「少年が順調に成長しているのが師匠としては嬉しいよ、今日はあと2つ教えようかな」
ムーは嬉しそうに指を2本振りながらそう言う。
「2つ・・・よろしくお願いします」
ライトは頭を下げる。
「1つ目はこれ、サンダーボルト」
そう言って放たれた魔法は曲線を描いて先ほどライトが的にしていた岩に着弾する。
「曲がった・・・?」
ライトが不思議なモノを見たかのような反応をする。
「そう、サンダーボルト」
今度は上に向かって放たれた魔法が曲線を描いて岩の同じ場所に着弾する。
「スゲー!!」
「でっしょ~、サンダーボルト」
そう言って放たれた魔法はゆっくりゆっくりとライトが歩くより遅い速度で目標に向かって行き、途中から加速して岩に命中する。
「ただ、真っ直ぐ飛ばすだけじゃなく、工夫によっていろんな使い方ができるんだよ」
「このゆっくりになるのはどういうときに使うんですか?」
「対人戦」
「対人戦・・・」
ライトがやや困惑気味に復唱する。
「ライトの村は平和で仲良く暮らしているから悪人はあまりいないかもしれないけど、
この世界は魔物や病気で命を落とすこともそうだけど他人によって奪われることにも気を付けなくちゃいけないんだよ。
力や価値を持てば持つほどより強い悪意にされされる可能性が増えることもある。
時には大切なモノが理不尽に奪われるかもしれない。
そんな時に対人戦が全くできなかったら全てを奪われるだけなんだよ」
「そうなんだ」
ムーの言葉はライトには腑に落ちない。どこか別世界の話を聞いているかのようだった。
「前回はデカブツから彼女を守れたけど、次の相手はもっと強い魔物や盗賊や敵国の兵士かもしれないって、フラグになっちゃうかな」
ムーは重くなりそうな話を軽くライトに投げかけた。
「フラグ??相手は魔物だけじゃないってことだね」
「そういうことだね、難しい話はこれくらいにして次はこれだね」
そう言ってムーはその場で自分の背丈の3倍くらい飛び上がる。
「凄いジャンプ力!」
「そう、これが身体強化だよ。今のは足の力を魔力によって強化してジャンプしたんだよ」
身体強化は魔力を身体に流すことによって一定の部分を硬化させたり筋力を強化する魔法である。
注意点は魔力を込めすぎると身体に負担がかかり過ぎ怪我をすること。
慣れないうちは身体が急制動についてこれず怪我をしやすいこと。
なので少しずつ慣らすように使用していかなくてはいけないこと。
今回、ムーはライトのキノコ絨毯にキノコを採りにきてその報酬でライトに魔法を教えてくれた。
ライトにとっては価値のないキノコなのだが、ムー達には非常に貴重な素材となるキノコなので大変ありがたいそうだ。
さらにお土産入りのマジックバックをくれた。
中には数十枚の金貨と読み書き計算の勉強道具が入っていた。




