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閑話 リミットブレイク

ライトがムーから魔法を教えてもらって3年目の初夏。

ライトはいつものように森で採取と魔法の練習をしていた。


練習の甲斐もあり、サンダーボルトに込める魔力量の調節がかなり上達した。

鳥を落とす威力のサンダーボルトなら30回以上回復なしで放つことができるようになっていた。


しかしながら、デカブツを倒した威力のサンダーボルトを放つことができなかった。

何度練習してもあの時と同じ感覚にならないのだ。

魔力量を多く籠めれば威力や派手さは上がるのだが貫通力がいまいちなく、岩に向かって放っても表面を叩いて霧散してしまう。


「穿てサンダーボルト!」

ライトが最大に魔力を籠めて大岩に向け放つ。


ボルトはライトの狙いの寸分たがわず命中するも表面を少し削る程度の威力だ。


(何が違うのだろう?)

ライトは自分なりに考えてみるが理由はわからない。

更に何発か岩に向け魔法を放つもやはり先ほどとあまり変わらない。

岩の近くで着弾点を見ながら腕を組んで考えているとそこに声がかかる。


「久しぶりだね、少年!」


ライトは声のする方向に顔を向けると、そこには自分に魔法を授けてくれた魔法使いが立っていた。


「ムー!」

ライトは魔法使いに向けて走り出し、ムーの少し手前で手を広げダイビングする。


ムーは身体を少し引きながらライトをキャッチするように抱き止め、振り回すようにして衝撃をいなす。

「少年は相変わらず元気だな」

そう言って笑顔でライトの顔を覗き込む。


「師匠、会いたかった!」

ライトは頭をぐりぐりとムーのお腹に擦り付けながら言う。


「そんなに~!?」

ライトに自分が求められていることにちょっと驚く。


「うん!魔法教えてほしくて!」

ライトは顔を上に向けてムーと目を合わせながら言う。


「あ、魔法ですか、そうですか・・・」

ちょっと複雑なムーは苦笑いだ。


「何が教えてほしいんだい?」

ムーが師匠然としてライトに聞く。


「ん~と、ね~・・・」

ライトはここ3年の経過とデカブツを倒したこと、同じことができないことなどを話した。



「どれ、論より証拠、魔法を見せてみて」

「うん、わかった」


ライトはいつもの練習風景をムーに見せる。


「うん、魔力量も魔力操作も良く練習できてるよ、初級魔法使いよりも威力はあるね」

「でも、デカブツを倒した時みたいな威力がでないんだ」

「そうか、その時の状況をもう一回話してみて」

ライトはデカブツを倒した時のことをムーに説明していく。


「なるほど、たぶん、リミットブレイクだね」

「リミットブレイク?」

「うん、そう、リミットブレイク。

人は普段、安全のために自分の能力に無意識に制限を掛けているんだ。

例えば石を全力で何回も投げたらすぐに肩や肘が壊れてしまうから、壊れない程度に加減をしたり疲れて動かなくなったりするんだけど、その制限を打ち破るのがオーバーリミットだね」

「制限を打ち破る・・・」

ライトが口ずさむ。

「まあ、難しいことはいいよ。

状況からするとデカブツと対峙した時にライトはリミットブレイクしたってこと。

だから、普通の時にはデカブツを倒した威力がでないんだよ」

「どうすればできるようになるの?」

「修練の仕方はいろいろあるけど、そうだね、今日はお手軽な方法でやってみようか」

「お願いします。師匠!」


「オーケー、まず確認するね、デカブツと対峙した時に回りの動きがゆっくりになった感覚はあった?」

「あった!デカブツが止まってるように見えたから簡単に魔法を当てることができたよ」

「そうそれ、それがゾーンだね、脳内でシープスの交換が増大して集中力がって難しいことはいいか・・・

そうなる前になにか大きな感情の変化があったのはわかる?」

ライトは少し考えて、

「よくわからない」

と答えた。

「そか、話を聞いた状況的に彼女(リータ)を守りたいか怖かっただと思うけどね」

ムーは目を細め視線を横に向け少し思案顔をしてからライトに言う。


「あの威力の魔法を放つためにもう1度デカブツと対峙して怖い思いをするかもしれないけどそれでもアノ魔法を撃ちたい?」

「撃ちたい!」

「オーケー、じゃあアクセスするね。こっちに来て座って目を閉じて」

ライトは言われるままに石の上に座り目を閉じる。



「わたしの言葉に耳を傾けてこころを楽にして」

ムーのゆっくりとした優しい語り掛けにこころがフワフワしてくる。

「体も楽になっていくよ」

そう言われると石に座っている感覚がなくなっていき、自分が座ってるのか寝てるのかわからなくなってくる。

「うん、うまくいってるよ、そのままゆっくりと3年前のあの日のあの森に意識を向けてみて」

言われるままにゆっくりと3年前の森の記憶を辿っていく。

「何かみえるもの、何か聞こえること、それを見て聞いてみて」


森を2人が歩いてる。

リータの弓を射る構えが綺麗だな

あ、外れた。

「惜しいぃぃ!」

痛、蹴られた。

「あんたにちょっとだけいいとこ見せようと力んだから矢が上ずっちゃったのよ、だからあんたのせい!」

「理不尽だよ~」

「次は外さないわ」

そう言いながら2人で鳥を狩り、さらに森の奥へと進んで行く。


「あ、あった」

僕がブラックベリーを見つけてリータに渡す。

「ブラックベリー」

「リータ、好きでしょ」

リータを喜ばせたくてせっせとブラックベリーを採取する。

「周辺の警戒しとくね」

「よろしく」

リータの声に生返事でブラックベリー狩りに集中している。



パンパンっと手を叩く音がした。

「こっちよ!」

突然、リータの悲鳴にも聞こえる緊張した叫ぶ声が森に響く。

僕は驚いて立ち上がりリータの方を見るとリータは走りながら矢を放つ瞬間だった。

放たれた矢は僕の目の前を通り過ぎ左へ飛んでいく。

バシ、命中したそこには大きな猪がいて、身体を僕の方に向けて顔をリータの方に向けていた。


「ライト逃げなさい!」

離れていくリータの声からは今度ははっきりと命令が聞こえた。


リータは走りながら弓をつがえ猪に向け矢を放つ。

矢はリータを追う猪を捉えるも毛皮に弾かれて刺さらない。


僕は状況についていけず立ち尽くしている。


そこから先はよく覚えていない。

ただ、ひっぱられるようにリータと猪が向かった方向に足が進んで行く。


ドン、ドン、ドン、バキッ。


バタン。


「くっふっ」


音と声がする方に向かって走る。

そこでは地面に伏したリータと猪が僅かな距離で向かい合っている。


リータは地面に手をつき立ち上がろうとしているが中々立ち上がれない。


このままじゃリータが居なくなっちゃう!

「サンダーボルト」

無意識で猪に向けた左手から閃光が迸り猪の右頬を弾くが大したダメージを与えている様子はない。


違う、これじゃない、これじゃリータは守れない。


「サンダーボルトは(サンダー)を矢の(ボルト)のようにして

体内の魔力を飛ばし標的を穿つ魔法だということ」

ライトは小さい声でつぶやく


そうこれだ。

穿つ、穿つ、穿つ!

猪の頭を魔法が貫いていくイメージが湧いてくる。


デカブツの頭を穿つ!


猪がゆっくりとライトに近づいてくる。


(これなら石の的より簡単に当たるな)


「穿て、サンダーボルト」



「それ!」

ムーの言葉が空から降ってきたように聞こえた瞬間に現実に引き戻され、ライトは森で石の上に座っている。


伸びたライトの左腕からは魔法が放たれたようで指の先の岩に穴が開いている。


「どんなイメージだった?」

ムーが問う。

「デカブツの頭を穿つ」

ライトが応える。


「はい、そのイメージでもう1発!」

間髪入れずにムーが立つように促す。


ライトは立ちあがり、岩に向け左手を向ける。

一瞬目を閉じデカブツの頭にサンダーボルトがめり込んでいくイメージをして唱える。


「穿て!サンダーボルト」


ボォッフっと低い音を立てイメージ通りのボルトが岩にめり込んでいく。


「できた・・」


岩にできた二つ目の穴からは煙が出ている。


「そう、魔法はイメージが大切」

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