94 嫌ね、戦争って
伏せているマンティコアのアロスの背に乗るライトとリータ、
それを支える様にオカリナが一番後ろに跨る。
「しっかりと鬣を掴んでおれ、飛ぶ」
その言葉と同時にオカリナがアロスの背中をポンと叩く、
すると、アロスは2,3歩助走を付けて、空中へと駆け出す。
「わぁ、飛んだ!」
ライトがそのままの感想を叫ぶ!
下を見ると、ケリーは嬉しそうに、ヨークは心配そうに手を振っていた。
ライトはそれに手を振り返したが、みるみる小さく、そして見えなくなった。
周囲の風景が高速で後ろに流れていく。
アロスは空中を掛ける様に飛ぶ、しかし、上空に空は見えない。
緑の天井がどこまでも続いている。
ライトが心配になり、振り返り、
「ねぇ、オカリナ、空が見えないよ」
「心配するな、まぁ見ておれ」
オカリナが軽い笑顔でいる。
少しすると、前方に大きな壁が現れた。
見上げても壁はどこまでも続いていて、上は見えない。
アロスはその壁に沿うように上昇していく。
周囲の森よりも上空に上がると、外は雲一つない晴天。
上空に空の青、下方に緑の絨毯で覆われていて、
見事なまでに、青と緑のコントラストが広がっていた。
「綺麗だわ」「風が気持ちいい~」
リータとライトが感想を漏らし、
「後ろを見てみよ」
オカリナが言う。
2人は振り返ると、先ほどの壁の上に緑が生い茂っている。
「壁の上に木が生えてるの?」
「いや、壁ではない、我らの命の源だ」
「ユグドラシル・・・」
2人は息を飲み、固まったまま、巨大な木を見上げ続けている。
「落ち着いたら、皆をゆっくり案内しよう」
そういって、オカリナはアロスの腹を軽く蹴るとアロスが加速していく。
アロスの首にある鬣のすぐ後ろにリータが跨り、それにくっついてライトが乗っている。
しばらく飛んでいると、森が切れ荒涼とした土地が姿を現した。
朽ちた倒木や何かの骨・・・
乾燥に強い植物だけが、僅かに点々と植生している。
「荒地だね」
「以前は森だったが・・・先の大戦でな・・・
以来、精霊が寄り着かぬ不毛な土地になり果てたのだ」
「精霊がいないと木は生えないの?」
「水の精霊が嫌う土地には水を湛える水源が育たん、故に雨が降ろうと枯れ果てる」
オカリナはそう言って荒野を見る。
「嫌ね、戦争って」
リータがぽつりと呟いた。
それから、アロスとライト達は鐘半分の時間程飛び続け、
「見えた!」
リータが何かを発見する。
ライトも目を凝らし、地平線を見ると微かに何かが揺らいでいるように見える。
「アロス、そのまま飛べ!」
オカリナが険しい表情でアロスに指示を出す。
ライトに揺らぎのように見えたのはやはり、人であった。
近づくにつれ、はっきりと見えてくる。
どこまでも続く人の波・・・
5人が横一列に並び、足を引きずる様に歩いていて、生気は感じない。
朦朧と前進を続ける集団がそこにはあった。




