92 あたりまえだヨ!
それがどれ程凄いことなのか・・・
ヨークが贔屓目で見ているとしても・・・
ふー。
「ありがとう、ライト、もう大丈夫だヨ」
ヨークが息を整えてライトから離れる。
「・・・ヨーク」
ライトはヨークの心情を理解しきれないので少し困惑している。
「行こ!」
ヨークがライトの手を引いて、オカリナたちの後を追う。
「何処へ向かっているのだ?」
「自衛団のようなところだ。
元来、エルフには自衛や団体などの慣例がないのだが、このところの人間との諍いが絶えないのでな」
ルーベントの問に応え、
エルフは自然と共に生き、精霊と歌い、倒木と眠るそれだけの存在、
1つだけ使命があるならばそれは『世界樹の守人』だと語った。
町中を歩く一行だが、エルフの影は見えない。
ただ、窓の奥や木々の裏に気配があるので、人間を警戒しているのかもしれないとライトは感じた。
やがて、町中の広場に差し掛かると、十数名のエルフが弓を構えて立っており、その列の前に1人のエルフが立って、こちらを見ていた。
「兄者、今帰った」
「何故、人の子など招き入れた?」
「火急の事態故」
「・・・汚らわしい、ユグド様もお怒りになろう」
「汚らわしいのは人の子だけではあるまい」
「それも、人の子と交わりの為」
「我はそうは思わぬ、エルフだけがこの世に住まう訳ではあるまい」
オカリナとリータ格の(兄?)との間に不穏な空気が漂う。
それを見て、心配そうにライトがオカリナに近づき、
「オカリナ?」
と声を掛ける。
一瞬、相手の男エルフの顔が歪み、
「なんだ、その人の子は?」
「この者はライト、汚れ無き人の子、我の盟友」
「盟友だと、笑わせるな、人の子等が我等に何をしたか忘れたか?」
「忘れてはおらん、だが、過去は変えらぬ、兄者は眠るまで憎み続けるか?」
「・・・」
男は応えず、右手を一度、下に振った。
それに合わせる様にエルフ達は弓を下ろした。
「着いて来い」
男エルフはそれだけ言い、踵を返し歩いていく。
「ふー」
緊張が解かれ、誰かのため息が聞こえる。
「恨み、憎しみが濃いな」
ルーベントが漏らす。
「しかたあるまい、皆、親、友人・・・子等を人との諍いで亡くしている」
人からすれば何世代も前の戦争も、エルフからすれば当事者、もしくは遺族なのだ。
その事実にライトは胸が締め付けられる。
自分の両親やティファを殺されたら・・・・そう考えると、息が詰まる。
そのライトの想いをパーティーメンバーはもちろん、オカリナも理解している。
ヨークがライトの背に手を添えて、ライトは絞り出すように、
「オカリナ・・・」
そう言ってオカリナの側面から抱き着く。
「済まぬな、醜聞を晒した」
「ん~ん、僕、知れて良かったよ」
ライトは目に涙を溜めて何とか泣かずにオカリナの顔を見上げる。
そんなライトの頭をオカリナは優しく撫でている。
「アレは・・・兄者は息子を人に連れ去られてな、特に想いが捨てられぬのだ」
「そんなのあたりまえだヨ!」
ヨークが声を荒げる。
「わたしだって・・・わたしだって、弟が連れ去られたら、許さないヨ!」
男エルフ・・・オカリナの兄、リュートはその言葉に振り返えることはない。
ただ、静かに長い耳の先が少し震えていた。




