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生きた花たち  作者: 雪の花
19/21

愛に咲くー19 ローレンスの結婚話

気ままなコリンヌとソフィアは気心が知れているようで、よく行動を共にしていた。そして、ソフィアは彼女を手放そうとはしなかった。ローレンスがコリンヌにはコリンヌの家があると説き伏せても、全く譲らない。

そうしている()にコリンヌがここへ来てから、3か月過ぎようとしていた。挙句の果てには、こう言い始めた。

「コリンヌはヴィクトリアが遣わしてくれたのよ。ローレンス、あなたとの縁も深いわ。どうかしら・・・妻に向かえては?そうすれば、ヴィクターのことも安心できるわ」

「ちょっと待ってください。ヴィクトリアの時のことを覚えていますか?あれはしきたりなので仕方がなかったとはいえ、僕が自身の胸の内を明かし、ヴィクトリアの気持ちも聞くべきだったと思います。今回のことに関して言えば、コリンヌは戸籍上部外者です。彼女に選ぶ権利があります。コリンヌに気持ちを聞いたのですか?」

「まだよ、私もそのことはよく承知しています。あなたから姉妹だと聞いた時は大変驚きましたけれど」

「ならば、ここは大切な局面です。僕に話をさせて欲しいのです」

ソフィアは、ローレンスが自分から女性に何かを聞くということは珍しいことだと思った。

「あなた方もいい大人ですし、本人同士次第。私の出る幕はありませんね」

「あの・・・あまりプッシュしょうとか必要ありませんから・・・念のために・・・」

と、ローレンスは母ソフィアに苦言を呈した。

ソフィアは笑って、なんとも曖昧な返事をした。ローレンスは正直大丈夫なのか?と、心の中で思った。



早朝の会議は定番化していた。ローレンスもコリンヌも二人とも、これは会議だと思っている。

あの日、コリンヌから呼び出され、お互いに微妙な雰囲気で終わったが、なぜかもっと話が聞きたいと思ったし、経営のことについて助言が欲しいとも思っていた。彼女もそう思ったようで、誘えば断りはしなかった。

これからのスコット領に何が必要なのかという問題は、ローレンスにとっては最も重要なもので、彼の周りにそれをアドバイスできる者はいなかった。だが、コリンヌは違う。彼女はあのアルキア領で大商家の当主として手腕を発揮し、経済にも経営にも大都会で起きていることにも詳しかった。

彼女の話を聞く度に、新しい発見があり、反省すべき点が見つかり、今後の改善点が分かったことは、ローレンスにとっては大きな後ろ盾を得たようで心強かった。だが、このままの関係性で、このまま滞在させて良いのかという問いは出てくる。サヴィアン本家の家督を甥に譲ったとはいえ、彼女はサヴィアン家の人だ。


その日のローレンスは、かなり緊張していた。先日のソフィアとの話の流れ、僕たちを取り巻く環境から逃げることはできない、どこかで何かしらの決着をつけないといけないと思ったからだ。

昨日の夜は眠れなかった、どうやって話を切り出そうかと。

ああでもないこうでもないと思案して、まずはこれまでの恋愛について聞くのが妥当だろうと思いついた。そこから広げていこうと!


書斎に入ってみると、コリンヌはすでに座って待っていた。

「やあ、今日は早いね」

「思いついたことがあって、早く言いたくて!」

ここの時点で先手を打たれたローレンスは、自分の話はあとにしょうと思った。

「そうなんだ、どんなこと?」

「もうすぐクリスマスでしょ。イブは家族と過ごすとして、ほら、クリスマス当日の夜の舞踏会って年齢制限あるじゃない。あれ、子どもたちも20時までは参加可能ってしたらどうかなと思って。せっかくの1年に1度のクリスマスの夜だし・・・」

「おお、いいね。みんなで楽しもう。子どもたちも正式な社交場の勉強になるしね」

そう言いながら、ローレンスは自分の昔のことを思い出していた。


収穫祭のダンスパーティーは昼間に開催されるため、カジュアルで子どもも大人も無邪気に踊り狂うといった感じだが、クリスマスの舞踏会は正装だし、厳かなダンスを踊るのが常だ。

早めに夕飯をすませて集い、18時から午前2時まで開かれ、長丁場だが出入りは自由。軽食とデザートが供され、アルコールも煙草もあり、控室に仮眠する部屋もあった。女性は女性同士で秘密の話をし、男性は男性で政治や経済、戦争についても語った。大人な雰囲気だが、それを垣間見る機会があっても良いだろうとは思っていた。そうだ、時間を制限すれば可能になる、良い提案だと思った。

収穫祭のダンスパーティーには苦い思い出がある。兄がヴィクトリアとの婚約を発表した日のダンスパーティーに、ローレンスは高熱を出して欠席した。それから長い戦争になったため、知らないまま結婚式当日に知ると言う羽目になったこと。


「それでね・・・。来年の作物の作付のことなんだけど・・・」

コリンヌの話は途切れそうにない。

「ちょっとまって、今日は僕も君に聞きたいことがあって・・・」

「あら、何かしら?」

ここで詰まってしまうローレンスだった。


しばし、静かな時間があって、コリンヌが口を開こうとした瞬間、ローレンスが尋ねた。

「個人的なことを聞くけど、ご主人とはどうやって出会ったの?紹介それとも恋愛?」

コリンヌは少し驚いた様子だったが、素直に答えた。

「そのどちらでもないわ。家督制度上の結婚よ」

「ああ、そうだったんだね。幸せだった?」

「いいえ、とだけ。それを聞くならば、ローレンスはどうして結婚しないの?」

「僕はね、どうやら関わった人を不幸にする性質(たち)みたいなんだ」

「え?何を言っているのか、さっぱり分からないわ」

「今までにね、ヴィクトリアを含めて、僕の周りにいた多くの親しい人が次々と亡くなっているのさ」

「ああ、そういうこと。でもそれって、本当にローレンスだけの問題?」

「そのことについては話したくないんだ。質問を続けていいかな?」

「分かったわ。どうぞ」

「恋はしたことある?」

「恋かあ・・・憧れの人はいたのよ、あなたのお兄さんのウォルター」

「兄?まあ、分からないでもない白馬の王子みたいだったもんね」

「そうそう、女の子の憧れだった。だから、ヴィクトリアから結婚したって手紙をもらった時は羨ましかったわー」

「手紙のやりとりはあったんだね・・・」

「たまにね、私は早くに結婚して結構大変だったから、返事は疎かになってた。だから、ヴィクトリアも何となく私の状況を察していて、自分からも必要以上には手紙は出さなったんだと思う」

「恋愛はそれだけ?」

「恥ずかしながらね・・・そんな余裕はなかったわ。姉が亡くなって本家の家督を継いで結婚し、夫が亡くなると、今度は全てのことが私だけにのしかかって来て、息子と言っても姉の子どもだけど、に継がせるまでは忙しい日々だったし・・・」

ローレンスはコリンヌの別の側面と、その表情の移り変わりを見て、心が揺れ動いた。

「君の性格上、兄に積極的にいきそうだけどいかなかったの?なんか何にも関係なしって感じで」

「本命の人には嫌われたくないという心情が働いて・・・なかなか上手く立ち回れなかったのよね」

「僕には結構お構いなしだよね・・・」

「あなたは男性じゃなくて、友だちだもん。遠慮はしないわ」

「そうか・・・。まあ、僕も似た感覚だしね、お互いさまってことか。じゃあ、これから結婚とか考えたことある?」

「あ、それね・・・ソフィア様にも同じようなこと言われたことある。人生これから楽しまなくちゃね!みたいな。良い人が現れたら、大切にしないさいって。だから、これだと思える人が現れたらするかも!何かしらの決定打が私の中に存在したらってことだけど」

「ふーん」

「聞いといて、ふーんはないんじゃない?なに?私に結婚話でもきてるのかしら?」

「まあ、そうと言えばそうかなあ」

「どこのだれ?私の知っている人?」

「そうだね」

「私の知っている人なんて限られているわ、教えて!教えて!」

「うーん、僕だって言ったらどうする?僕のことどう思う?」

「え?ローレンスが相手?まあ、悪くはないわ。だってとても話が合うし、気楽だし・・・なんかゆったりとした余生が送れそうだわ」

「余生って・・・これから始まる話だよね?結婚って!」

と、二人はお互い見ながら大笑いした。

「その話はソフィア様から?ヴィクターのことを考えてでしょ」

「鋭いね、どう思う?」

「それをきくなら、ローレンス、あなたの気持ちはどうなの?」

「・・・」

「分からないのなら、考えてみて、私の事心の中でどう思っているのか?私も、もう少し踏み込んで考えてみるわ」


そう、コリンヌに提案されたローレンスは戸惑っていた。

「僕の気持ち・・・ぼくのきもち・・・」

そうだ、彼女から聞き出すには、僕もそれを伝えきゃいけない。

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