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生きた花たち  作者: 雪の花
15/21

愛に咲くー15 遺されたノート

遺されたノートはマントン寄宿学校で使用していたものだ。学校指定のもので僕も持っていたし、ユリンも・・・。数学に哲学、歴史、所狭しとアルターの字で小さくぎっしりと注釈が書き込まれていた。大切に使われた、そのノートの最後のページに浮かび上がった文字は・・・。


私は世を愛さなかった

世も私を・・・

赤い薔薇の棘が私の行く手に無限に広がり

白き足はずくりずくりと刺された

それでも歩き続けた


人の言葉に惑わされ、翻弄されながらも

幾ばくかの(まこと)を信じた

裏切られるたびに心は悲鳴をあげた

だがそれは口をついて出ることはなかった


私は世を愛さなかった

世も私を・・・

私はこの上なく世を愛したかった

美しいこの地球()を愛で

心麗しき人と語り、笑い合いたかった

だが色んな邪念(おもい)が言葉を飲み込ませてしまう

これ以上傷つくのが怖いのだ


世を遠目で見ている私に愛は降り注がないのだろうか・・・


私が愛さなければ・・・世は私を愛してくれないのだろうか・・・


人の口に戸は立てられぬ

ならば・・・

貝のように口を閉ざしてしまう私のような者がいること

それを心のどこかで理解してくれ

でなければ・・・

私の心は血を流し続けるのだから


これは、バイロンの詩集にある『私は世を愛さなかった』に自分を置き換えて書かれたものであろう。

アルターの詩はここで終わっており、その下にこう引用されていた。


『 私は世を愛さなかった、世もまた私をー

  所詮(しょせん)、敵ならばいさぎよく(たもと)を別とう

  だが私は信じたい、彼らには裏切られたが

  真実(まこと)ある言葉、欺きえぬ希望があり

  めぐみ深く、過失(あやまち)(あな)をつくらぬ美徳があると

  また、人の悲しみを心から悲しむものもおり

  一人か二人かは、見かけと変わらぬものもあり

  善とは名ばかりでなく、幸福とは夢でない、と。 』


引用:バイロン詩集  訳 阿部知二 新潮文庫 1951年

(注:「穴」の字は正式には旧漢字の難しいものが記されていたが、探せなかったため、常用漢字を用いました)



「アルター(きみ)って人は・・・・。君こそ生きて、人生()に大輪の花を存分に咲かせるべき人だった。そうして、僕に仲間に、その心情(こころ)を語って欲しかった・・・」


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