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5 ステータスと星霊術

 軽い食事を終えたナギは管理者からもらった二つの能力のひとつである<ステータス閲覧>を使ってみることにした。本当はもっと早く確認するべきだったのだろうが色々あってすっかり忘れていたのである。


「たしか頭の中で『ステータス閲覧』と念じればいいんだったよな」


 管理者が言っていたことを実行してみると目の前に透明で四角いウィンドウのようなものが出現したのだ。そこには自分の名前をはじめとしていくつかの項目が並んでいた。


 ☆ ☆ ☆


【名前】 天堂那樹

【性別】 男

【年齢】 17

【クラス】 星霊術士 10338/17793 / 剣術士

【契約星霊】 風と雷の星霊アルギュロス(シンクロレベル1)

【スキル】 言語理解・ステータス閲覧・風耐性1・雷耐性1・風刃・風弾・風爆

【その他】 管理者の加護


 ☆ ☆ ☆


「これがステータスってやつなのか。ん? 一番下に何か書かれてあるのは伝言か?」


 ウィンドウの下にはメッセージのようなものがあってこう書かれていた。


『ナギさん、お元気ですか? 管理者よりお知らせがあります。あなたが転移したのはシルヴィアナ大森林と呼ばれる場所です。魔物が闊歩する危険な場所ですが星霊術を駆使すれば脱出は不可能ではないはずです。それと転移先の近くにちょうど「ゴンズの木」と呼ばれる嗅覚の鋭い生物や魔物を遠ざける樹木が存在していたのでそこに転移させました。脱出のためにぜひ利用してください。あとステータスウィンドウは念じることである程度改良することもできるので試してみてくださいね。では御武運をお祈りします。


追伸:わが契約者にして魂の同胞たるナギよ。『すていたすうぃんどう』とやらをいじれるように提案したのは我なのだ。せいぜい感謝するんだな! これからのために上手く活用するのだぞ! アルギュロスより』


「…………」


 最後の追伸は必要なかった気がする。


 しばらく呆けたようにステータスウィンドウを眺めていたナギは気を取り直してメッセージを読み直した。まずこの場所はシルヴィアナ大森林というらしい。名前からしてだいぶ広そうな森で魔物の巣窟のようだ。それとやはり寝泊りしていた木は特別な効果を宿していたようだ。全ての生物に効くわけではないだろうが生き延びるために必要な拠点があるのは助かる。


(できれば人里のある方向でも示唆してくれれば大助かりだったんだが、それはさすがに甘えすぎか?)


 亜空間での説明やスキルの授与、そしてこのメッセージまであくまで善意で行ってくれているようだからあまり文句は言えない。本来なら問答無用で異世界に迷い込んでいることを考えれば破格の待遇な気がする。


 ともかく、心配してくれてなのか管理者たちがステータスウィンドウにメッセージを残してくれていたのだ。もっと早くに確認すべきであった。


 それはそうとステータスウィンドウの各項目に目を通すことにする。


「ふむふむ。そんなに色々と書かれてあるわけではないんだな」


 想像していたのとは少し違っていて、ゲームみたいに体力や運やらの項目が数値化されているわけでもないわりとシンプルな作りである。だいたい書かれてある内容はすでに把握している情報ばかりだがいくつか分からないこともあった。


「風と雷の耐性とかあったのか。まあ、契約星霊のことを考えればだいたい納得できるとして、この『シンクロレベル』というのは何だ? それにクラスの横にある数字も」


 シンクロレベルというのはなんとなく予想できなくもない。『レベル』というくらいなので、その数値が上がれば新たな星霊術を習得できる可能性がある。ただ星霊術士の横にある二つの五桁の数字はよく分からなかった。


「あとはクラスに剣術士があるのか」


 昔から剣道を習っているのでそれがクラスに反映されているのかもしれない。


 ナギの叔父が剣道道場を開いていて、高校生になってからはサボりがちだったものの小さい頃から通わされていたのだ。けっこう本格的な道場で、竹刀の他にも、形稽古や約束稽古が基本だったとはいえ木刀でも修練していた。何度か本物の太刀を使わせてもらったこともある。この場では振るう武器がないので培ってきた剣術を披露できないのは残念だ。


 ともあれアルギュロスの言い分はともかく確かに便利そうではあった。こうしてじっくりと状態を確認することができるし、それにどうやらカスタム機能も付いているようだ。全ての星霊と契約できる『管理者の加護』も今後役に立つかもしれない。


「星霊術を試してみるか」


 現在使用できそうなのは<風刃>、<風弾>、<風爆>の三つである。この三つは攻撃的な星霊術だ。風と雷の星霊というだけあって風系統のスキルが主なのだろう。


 まずは<風刃>を試してみる。名前のとおり風の刃を放って敵を攻撃するスキルだ。脳裏にイメージして手の平から放ってみる。やり方を教わっていなくても身体が勝手に理解しているようで問題なく使うことができた。体内にある魔力と呼ばれるエネルギーを消費しながら使用していることを感覚的に察する。


 放たれた風の刃は進路上にあった木の表面を深く抉ってぱらぱらと木屑が地面へと落ちた。けっこうな切れ味で、これなら先程襲われたうさぎ程度なら当たれば簡単に倒せそうだ。


 次に<風弾>を使うことにした。こちらもそのまま風でできた弾丸を打ち出すスキルである。発射してみると先程風の刃を当てた木に衝突して派手なひびが入り、幹ごと大きく揺らした。おそらく重量級のプロボクサーが放つ全力の一撃よりも強力だ。


 最後に<風爆>を試す。このスキルは<風弾>と同じく風の弾丸を打ち出すが、着弾点で破裂して強力な暴風を撒き散らすことができるのだ。威力を試すために練習用の木に放つと、風の弾が接触したとたんに猛烈な風が巻き起こって思わず顔面を手の平でガードした。想像以上に風の勢いが強く自分の近くでは使わないほうがよさそうだ。


 ようやく風の余韻が消えると、度重なる衝撃でもろくなったのか、木に幹にひびが入って途中からぽっきりと折れてしまった。そのまま轟音を立てながら地面へと倒れる。


 地面に横たわった木を眺めながらナギは手応えを感じた。契約で手に入れた力をフル活用すればシルヴィアナ大森林から脱出するのはそう難しくないかもしれない。


 依然として先行きは不透明だが、だいぶ希望が出てきたナギは意気揚々と午後の探索に臨むのだった。

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