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広大な闇

風化が激しくひび割れと汚れが目立つものの、一応は原型を留めている白木製の床が足元に伺える。

 同じように酷く傷んだ緑色――だったのか、今は色()せて灰に近くなった絨毯が、光が届かないどす黒い闇の奥まで伸びている。


 広大で魔術めいた灯を引き連れていても全貌(ぜんぼう)が伺えないこの空間。

 かろうじて拾えた視覚情報から察するに、どうやら広い廊下らしい。


「本当、まっ暗だなぁ……」


 アカリは呟いた後に、背後を振り返る。

 開け放った入口は四角く切り取られ、外に昼間の世界を見せていた。

 かろうじて入り込む光が長方形の周りを照らすも、数歩離れてから見ればあまりに頼りなく思え距離以上に遠ざかって見えた。


「どう考えてもランタン無しじゃ何も見えないんだけど、何でアデルもフィルも迷わず進めたんだろう?」


 先程も浮上した疑問を再び議題に挙げ、一人だけで考えを巡らせる。


 そんなものは本人に訊ねなければ正解が得られない事は百も承知だ。

 だがそうでもしなければ、周りの深すぎる闇に呑まれてしまいそうで恐ろしいのである。


「あ、もしかして暗視かな? たまにゲームとかのキャラにいるし……」


 アカリが以前遊んだTRPGという種類のゲームにおいて、確かエルフ族と一部の獣人族は暗視スキルを所持していた筈だ。

 松明などのアイテムや魔法の光がなくとも暗闇が見通せる、ダンジョン内では非常に有用なスキルである。


 それはゲームの中での話だが、小説の世界もファンタジーなのだから似たような種族設定になっていても不思議はないのかもしれない。

 何よりそう考えればフィル達が特に対策をせず暗闇を進んだ理由にも説明がつく。


「……まあ、今色々考えても仕方ないんだけど……」


 先の通り、正解は本人達に訊くしかないのだ。

 しかし、未だ件の二人の姿はおろか気配すら感じられないのだが。


「もうだいぶ歩いたよね……」


 不意に迫る不安。

 本人の発言通りもう数分は歩いているが、一向に次の部屋に辿り着く気配がない。


 朽ちかけの絨毯やひび割れの床にも全く変化が見られず、同じ場所をループしているような錯覚すら覚える程だ。


「いや、でもファンタジーならそういう仕掛けもアリかも……?」


 現実で考えれば歩いた分だけ先に進むものだが、果たして剣も魔法も存在する世界であればどうだろうか。


 本当に同じ場所を永遠に歩いているという説も捨てきれないと判断し、アカリは一度後ろを振り向く事にした。

 律儀にも宙に浮くランタンが視線の先に移動し、来た道を照らし出す。


「……うーん、やっぱりループしてるとかは無いみたい。」


 結果、入口の四角い光は正しく遠ざかり今やかなり小さく見えていた。

 やはり魔術的仕掛けなんてなく、単に廊下が長いだけだったのだろう。


 確認を終えて安堵した後、再びまた進行方向へと身体を向ける。

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