状況確認
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だいぶ長くなったが、とりあえずは図書館での出来事をフィルとアデルの二人組に伝えられた筈だ。
「狭間の図書館に……魔族の男? それはすごく……うーん……こう、にわかには信じがたいですね……。
けど確かにこのランタンからは悪魔めいた魔力を感じる気も……」
互いに情報交換を終えた後でも、フィルは難しい顔でランタンを眺めて唸っていた。
無理もない。アカリも逆の立場ならこうなっていただろう。
あまりに情報量が多く、それら全ての存在がアカリの世界からもこの世界からも常識の範囲を逸脱していた。
対してアカリの現状に関してはあまり語る事はない。
アカリがアンデッドに襲撃を受けた際の悲鳴で二人は来た道を戻り、頭から血を流して倒れる彼女を残っていた敵二体から救出し、近くの部屋に逃げ込んだのだという。
改めて部屋を確認してみたが、城全体の巨大さからするとかなり小さく――それでも小流家にある自室よりかは多少広いが――、調度品も必要最低限プラスアルファ程度しか設置されていないように思える。
アカリはあまり城の知識に明るくないが、低い階にある事からして何となく、使用人等のあまり身分が高くない者の部屋だったのではないかと推測していた。
「やっぱり呪われた城とか言われるだけあって不気味……。元はそれなりに綺麗だったんだろうけど……」
ちなみに呪われた城と言うのは、フェネシアという国自体が伝染病で滅びた事に由来するらしい。
曰く感染すれば高熱に魘され、血が止まらなくなり苦しみながら死に至るという。
確かにアンデッドもうろついているし、呪われていると噂されるに相応しいという話だ。
「つーかアカリだったか、お前マジ運良かったな。こっちにはアンデッドも回復もお任せなフィルがいたから何とかなったものの……武器も魔法もねえ世界から丸腰で来たんだろ? 俺達の事を助けるどころか、普通に雑魚にやられて即人生終わる所だったじゃねえか」
返す言葉もない。
実際アカリはアデルに対し、即座に「仰るとおりでゴザイマス……」と片言気味に返していた。
「二人ともありがとう、アンデッドもフィルがいれば安心だね」
やり取りの後、猫獣人から森の妖精に視線を移すと――彼はまだ、何かを考えている様子だった。
「アンデッドはお任せ……。あ、」
ふと視線に気づいたらしく、彼は顔を上げて居住まいを正す。
「それより、貴女の話が本当なら恐らく――僕を殺した、なんて過去形にするのも違和感があるのですが……。そんな強敵が、すぐ近くの階段から襲撃をかけてくる事になりますけど」
今苦笑いをしているフィルも、変わらず仏頂面のアデルもどうやらアカリの予想通り暗視の力を持つようで、話を終えた直後に扉の外の暗闇をざっと確認してきたのである。
結果、顔だけ出して見ただけでも見える範囲に、階段が存在する事が判明した。
フィルがガストキングに小瓶を投げつけるワンシーンの前には、そもそも最初に目についた階段から下に降りようとした所で遭遇したという流れがある。
そのまま逃げ切れず、近くの入口が広い部屋に追い込まれた(地の文を読むとアデルが逃げやすいような部屋をフィルが咄嗟に選んだという説明がある)のだが、階段よりやや手前にそれらしき部屋がある事も確認済だ。




