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帰り道。


3度目の同じ授業を受け、教室を出た。


彼女は、やっぱり付いてきた。


気持ちを落ち着ける為に聞いていた曲を止め、イヤフォンを外す。



「今日は、別の道から帰るつもりなんだけどいいの?」



「そうなんだ!じゃあ、私もそうするよ!」



ニコニコ笑いながら僕に付いてくる彼女。


これで、この子を助けられる筈。


僕は、安堵の溜息をつく。


いつもは、ビルの多い場所を通る。


が、今日は静かな住宅街だ。


きっと、大丈夫。


僕が、そう思った時。



「よぉ?」



目の前には黒いフードに、妙な笑みを浮かべた男が立っていた。


右手には…黒く光る刃が見えた。


この見た目。


僕は、朝見たニュースの内容を思い出す。


黒いフードに、妙な笑み。


やっぱり、目の前にいるのは最近世間を賑わしている殺人犯だ。



「…月ノさん、アイツが走ってきたら後ろを向いて逃げて。」



僕は、彼女に小さな声で話しかける。


十分、分かっている。


どちらかが、又は二人とも死ぬことを。



「で、でも…若竹君は。」



そう彼女が言ってきた時、男が大声で叫んだ。



「その様子だとぉ?俺のことを知ってるみてぇだなぁ。よかったぜぇ、話が早く済むからよぉ!!」



男が、僕らに向かって刃を向けて走ってくる。


僕は、後ろを向いて彼女の背中を押し走らせる。



「走れ!逃げろ!!」



大声で、彼女に向かって叫ぶ。


あの子は、涙を目尻に浮かべながら走った。


その様子を見た後、生暖かい何かを感じた。


手には、真っ赤な液体が付いている。


後ろを向くと、男の不敵な笑みが見えた。


目の前が、ぼやけて行く。


それと共に、男の声は聞こえる。



「カッコつけてんじゃねぇよ。」



笑っているが、他の何か別な感情がこもっていようなそんな声だった。


その声が、やたら不気味で歪んで聞こえた。



あぁ…そういえば。




人間は死ぬ間際、最後に聴覚が残るらしいけど…本当なんだな。




今だって、男の声が聞こえるし。




なんて、呑気なことを考えているうちに徐々に音も聞こえなくなっていった。




そうか…死ぬのか。




…まぁ、それでもいいか。





彼女が、幸せになってくれるなら。




…僕は、それで…じゅう…ぶ、ん。




「…ねぇ、君が生きてなきゃ、意味なんてないんだよ。



「…ごめんね、何も出来なくて。」







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