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帰り道。
やはり、彼女は僕について来た。
もちろん、いつも通りニコニコしながら。
僕は、思わず彼女の手を掴んでしまった。
「え、ど、どうしたの?」
その時の彼女は、不安と困惑の色を顔に出していた。
「あ、ごめん。」
頭の中では手を離そうと思った。
でも、この手を離したらまた…。
そう考えただけで、尚更手を離すことが出来なくなってしまう。
「…若竹君。手、離して。」
彼女は、少し眉を下げて困ったように言った。
僕はその表情を見て、思わず手を離してしまった。
すると、彼女はクスクスと笑ってふらっと前へ進んでいってしまった。
…待って!
そのまま、進んじゃダメだ。
僕は、思いっきり手を伸ばす。
届け、届け!
しかし、伸ばした手は空を切った。
やめてくれ、だって…。
だって、そこは…ここは。
君がいなくなった場所なのに。
ガシャン
と、言う音と共に目の前から彼女は消えた。
また、起こってしまった。
どうして…どうして彼女が。
震える体を叩く。
でも、足にはもう力が入らない。
自分の荒い息遣いが聞こえる。
苦しい。
一体、彼女が何をしたって言うんだよ。
あの、優しいあの子が。
こんな僕に話しかけてくれたあの子が。
また、目の前が真っ暗になる。
少しずつ薄れていく意識。
ダメだ。
これ以上は…。
どれだけ力を入れたって、遠のいて行く意識。
僕はまた、意識を手放してしまったのだ。