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鳥の鳴き声がする。
目が覚める。
晴れた日差しが、部屋に差し込む。
部屋の様子を見回し、状況を飲み込んだ。
「…なんだ、夢か。」
…嫌な夢だった。
気味が悪い夢。
現実との区別が全くつかない夢ほど、恐ろしいものはない。
僕は、安堵で溜息をついた。
ベッドから、起き上がりリビングへ向かう。
テレビをつけ、コーヒーを淹れる。
「***市で、殺人事件が…。」
…あれ?
昨日も、そんな話だったよな。
事件の調査、進んでないのだろうか。
全く、今時の警察は…。
が、僕はとある違和感に気づいた。
妙だ。
昨日のニュースと一言一句違わない。
そんな気がしてならないのだ。
「そ、そうだ。日付を…。」
僕は、スマホのカレンダーを開く。
そこには、7月15日と示されていた。
そんな訳ない。
だって、昨日が7月15日で…。
何度も、スマホの画面を確認する。
が、しかし変わらない。
何度見たって、7月15日のまま。
すると、チャイムが鳴った。
テレビは、星座占いを流していた。
急いで、玄関に向かう。
外に出ると、夏の暑い太陽が輝いていた。
そしてそこには…
「あ!おはよう、若竹君!」
いつもの彼女が、いた。
僕は、呆然として立ちすくんだ。
どうして…。
「お、おはよう。月ノさん。」
声が震えている。
彼女は、不思議そうに首を傾げた。
「何かあったの?気分でも悪い?」
その様子は、まるで何も知らないようだった。
「今日は…何日?」
「え、7月15日だけど。」
さぞ当たり前のように、彼女は言った。
まるで、僕だけが時間に取り残されたようだった。
僕だけ違う所にいたんだ、そう思うぐらい。
「取り敢えず…学校行こうか?」
心配そうな顔をする彼女のカバンが揺れる。
「あ、うん。」
曖昧な返事をして、僕は学校へ行く支度をして家を出た。
その日の学校の事は覚えていない。
ただ、幸が不安そうに話しかけてきて、担任がオープンキャンパスの話をしていた事だけはなんとなく覚えている。