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そんな会話をしていると、先生が教室に入ってきた。
先生が静かにー、と言って生徒を席に座らせる。
それと共に、幸も自分の席へと戻っていった。
「起立、礼。」
委員長の号令で挨拶をする。
全員が座ると、担任が話し出した。
「えー、皆んなオープンキャンパスの申し込みは出したか?」
オープンキャンパスか。
うちの高校は、進学高だ。
クラス全員が進学を目指す学校。
が、しかし。
特に夢のない僕に大学に行け、と言う方が失敗なのだ。
医療関係には就きたくないし、かと言って政治家になりたいとかは思わない。
化学関係はどうだろう。
研究者には、昔興味があったし。
少し考えてみる。
…ダメだ。
僕が白衣を着ている姿の想像が全くつかない。
よし、諦めよう。
なんて考えだから、夢が思いつかないんだろうな。
「えー、申し込み用紙は、早めに出すように。」
先生の話を聞き終え、僕はあくびをした。
話は変わってしまうのだが。
昨日の夜、本を読んでしまい寝るのが遅くなってしまった。
仕方ないんだ、面白すぎるんだよ。
ミステリー小説のあの静まり返ってる感じから、目を離せないんだ。
昨日の本の内容を思い出した後、僕はもう一度あくびをした。
その時、彼女がふらっと僕の元へやってきた。
「若竹君は、決めた?オープンキャンパス。」
「えっ、あーまだ。」
僕の返答に、だよねと笑う彼女。
そして、近くのイスに座って言った。
「じゃあさ、ここ行かない?私、1人で不安だったの。」
と、そこは法律関係の学校だった。
そういえば、裁判に携わりたいって言ってたっけ。
「どーせ、絶対何処かには行かないと行けないんだし…いい?」
首を傾げて聞いてくる彼女。
「いいよ、何処行くかなんて決まってなかったから。」
「お!やったー!」
月ノさんは、スキップしながら嬉しそうに笑った。
「若竹君、ドタキャンは辞めてよね。」
「若竹家の家訓は、『武士に二言はない』なんだけど。」
僕がそう返すと、なるほどねと笑って彼女はこう言った。
「じゃあ、約束。絶対、忘れないでね。」