ラムのターン
ラムのターン
光が消えた先は神秘的な空気が漂う森の中だった。
白い小玉のような魔力がフワフワと浮いている。
少し息を吐いた後ラムはボソリと口を開いた。
「ゲーム時代にあった精霊の森に似ているな」
神秘的なその場に感動しながら前へ進んだ。
この森はよく見てみると木々に刃物それもダガーなどの短いものによって出来た傷がある。
獣などの爪では無い荒く無い綺麗な切り口だ。
少し辺りを探索していると、何処かに気配を感じた。
ラムは適当な剣を2本取り出した。
そして構え周りを注意深く観察する。
サッという音と共に後ろからダガーが飛んできた。
ラムはそれを剣で弾き、一瞬見えた影を追った。
そこには軍服を着た小学生位の男か女か分からない中性的な顔をした者がいた。
これが例の精霊だということは分かっているのだが、その姿を見てラムは唖然としている。
驚いているのだ。
だがそんなラムの様子を無視して精霊はラムに急速に近づいた。
そして何処から出したのか分からないダガーでラムの足元を狙った。
ラムはそれを空かさず防御して、反撃をしようと剣を振り下ろしたが、しかし精霊は防御するのではなく剣と剣の隙間を狙ってダガーを投げた。
ラムはそれを紙一重で避けながら剣を振り下ろす。
精霊は素早くそれを避け距離を取った。
両者が見合い、緊張感が高まる。
今回最初に動いたのはラムだ。
剣を振りかぶって投げた。
剣はどんどん加速していく。
精霊は加速していく剣に驚きながら、ギリギリの所を通って距離を詰めようとしている。
だが、剣はそのギリギリの所で向きを変え精霊を切り裂いた。
肩辺りを切られた精霊は苦悶の表情を上げながらも半実体ということを活かしてそのまま速度を変えずに攻めてきた。
半実体というのは切断や損傷によるステータスの減少を受けな体を持つ者をいう。
HPという意味ではしっかり減っているが足を切断されてもすぐに生えそのまま戦う。
そして、何処から出たか分からないダガーを投げながら近づいてくる。
ラムは剣をもう一本だしそして、攻撃を弾いていく。
(相当投剣スキルを高めているな、きてほしくない場所を的確に狙ってくる)
そう思いながら動かすラムの剣はとても軽い。
余裕な様子で攻撃を弾く。
それも当然今のラムはた多刀流と剣術を外している。
今のラムはスキルの援助を受けるよりもPSで戦うほうが何倍も強い。
そしてラムが攻めに出た。
剣を弾きながら近づいてくる精霊と急速に距離を詰める。
精霊も片手で短剣を投げながら片手が短剣を構えた。
ラムと白兵戦をする気だ。
きっと精霊は勝てると思っているのだろう。
だが、そこには勝機はない。
あるのは明確な技術の差だけだろう。
剣と剣が打ち合い火花が散る。
そして坂をに落とされた水のように剣を這って短剣がラムの体に迫る。
今剣は同程度の力で拮抗している。
そこにラムは剣を軽く上に投げた。
這っていた短剣の力で当然剣は後ろに吹き飛ぶ。
だが、それを再度ラムは握り、急に力を預ける場所を無くした精霊は姿勢を崩す。
ラムは剣の力そのまま回るように剣を放つ。
まず、放していない剣で精霊を絶つ、それは精霊のもう片方の短剣で何とか防ぐが直撃を避けただけでダメージは体に伝わり地面に叩きつけられる。
地面に叩きつけられ無防備になった体にラムは遠心力まで込めた懇親の一撃を振り下ろす。
だが、その剣は精霊の鼻の先を通り過ぎ地面に叩きつけられた。
「まだ、終わらないぞ。お前の本領は中距離からの投剣であろう。もっとお前の最強を見せてくれ」
ラムはかっこつけながらそういった。
精霊はラムに敵と見る目とは違う目で見た。
そして二へらと笑ってから、くるっと回って立ち上がった。
ラムもその間にスキルを多刀流と剣術を装備した。
そして両者の準備が整った段階で相手の目をじっと見てから。
「さあ第二回戦を始めよう」
その言葉と同時に精霊は木々を蹴りながら短剣を投げた。
その速度はさっきの比ではない。
近接戦ではなく、遠距離戦ではない。
中距離での戦いだ。
ほぼ全方向から飛んでくる短剣にラムは大量の剣を出すことで防御した。
剣の数は10本だ。
そしてその剣は攻撃を弾くと精霊に向かった。
4本が正面から、3本が回り込むように、そしてもう3本がラムを守るように回っている。
(折角の戦闘なんだ。我が熟練度を上げるために少し利用させてもらおう)
そう軽い気持ちで挑んだ。
ラムの浮遊剣が精霊に突き刺すその瞬間、精霊が空を蹴り剣を避けた。
ラムは少し驚きながらも、空歩を使う相手は見たことがあったため動揺せずそのまま戦った。
まだ第2射、第3射と剣は続く、ラムはこれでももしかしたら終わるかもなと思いながら攻撃の手は緩めなかった。
だが、その攻撃は空歩とアクロバットの能力によって完全に回避された。
いやそれだけではない、浮遊剣による攻撃をすべて短剣で流すこともなく回避している。
それも空中で。
しかも体の軸はずれているはずなのに、狙いは正確に急所を狙う。
ラムはこれはいい熟練度上げの場だと感じていた。
まあ要するにまだ余裕なのだ。
まあそりゃ、こちらにダメージが入らないのだ、余裕にもなる。
後は自分の熟練度を上げ、相手に攻撃を当てればいいだけだ。
まあその条件は相手も一緒なのだが、それには気づいていないようだ。
さすがラムだ。
そして戦闘は硬直状態に入る。
両者回避、防御はできているが、攻撃が通らない。
持久戦に成れば疲労を感じるラムが不利だろう。
それはラムも分かっているのだろうが、焦りはない。
精霊は魔法生命体だ。
魔法生命体というのは最初から魔法に優遇されている種を言う。
正確にはまあちょっと違うがそれが分かりやすい、そしてこの魔法生命体はその属性に関連する1種類の魔法を最初から覚えている。
1種類というのは魔法の種類が詠唱・術式・刻印に分けられるからだ。
詠唱はその名の通りで術式はその術式を組み上げると自動的に発動する。
家を木の家具で揃えようとした時に自分で作っているとそれが発動して大惨事ということもある。
自身によるコントロールが難しく術式が人によって弱冠のズレがあるなどの欠点が多い、前時代的な魔法だ。
刻印は魔法発動となる媒介に文字、もしくわ術式を書くことで使える。
刻印する物によって練度が多少変わり初心者でも使いやすい魔法だ。
便利っちゃ便利だが魔法の豊富さが強さに直結するこの世界においては駄目押しの一手程度の効果だ。
まあこの3つの内の1つを精霊は無条件で生まれた時に覚える訳なのだが、普通は詠唱魔法を覚える。
精霊の殆どがそうだ。
だが、稀に刻印や術式を覚える者もいる。
そういう者は魔法ではなく他のことを極めようとしたり、詠唱魔法を覚える。
この精霊はその運の悪い稀だ。
そしてこの精霊は前者のことをした。
さっきまで正確に投げられていた短剣が見当違いな場所に3本飛んだ。
ラムは相手が精霊だということが抜けていたのか、疲労でも感じたか?と疑問に思った。
そして、ラムの足元にも一歩の短剣が投げられた。
ラムの足元の短剣が着地した瞬間それは起こった。
短剣と短剣が魔力によって繋がっていき、魔法陣が出来上がったのだ。
術式魔法が発動したのだ。
倒れていた短剣がふらりと宙に舞いラムへと襲い掛かる。
術式内にあった短剣はすでに数えれる範囲を大きく上回っている。
今、形勢は逆転しラムは命の危機に瀕している。
ラムは剣を更に10本追加した。
手に持っている物を含めて計22本だ。
今のラムが操れる剣の数10本を優に超える数の剣を出した。
そしてお手玉のように剣をすぐに持ち替えて、大道芸のように踊りながら、剣を体の周りで泳がせる。
浮遊剣と多刀流をふるに使って熟練度を急速に進化させ、短剣を叩き落とす。
だが短剣は又宙に戻りラムを襲う。
それを何度も何度も叩き落とす内にラムは掴んだ。
奥義や真理なんてたいそれたものを掴んだ訳じゃない。
掴んだのはただのコツだ。
この浮遊剣と多刀流のコツだ。
ちょっとしたコツだが今の状況では大きな差だ。
身体中に浅い傷を巡らせたラムは少しずつ短剣の攻撃に追いついていく。
精霊はそれを食い入るように見ていた。
それは敵対の目なのかなんなのかラムは知らない。
攻撃が止んだ。
傷だらけのラムは致命傷を一度も負わずに耐え切った。
血が傷から傷に滴り落ち、目が赤色に血走っている。
だが、
22本の剣を操って生き残った。
いやもうすでに22本を超え剣の数は30を超える。
精霊は走って近づいてくる。
ラムは剣を構えて精霊を斬り伏せるつもりだ。
だが精霊はラムの前で膝を付きそして大きな声で言い放った。
「弟子にしてください!」
その言葉は衝撃的でラムが数秒固まった。
仲間になる意思ができたことで試練は終了し、世界は白く染まった。
未だにフリーズしているラムは何を考えたのか?




