第一の仲間
俺たちは話し合いを終えて、今ダンジョンに向かっている。
行きとは違い大量の獣人を連れている。
まあ、大量と言っても約200人ぐらいなのだが、それでも十分大量と言えるだろう。
俺が考え事をしながら歩いていると、モコの父親が喋りかけてきた。
「いやぁ、ありがとうな。お前さんたちが来るまではモコは帰ってこないし、人間の国に襲われそうになるわで皆の顔が暗かったのに今は上を向いて、明るい顔になってやがるぜ」
「俺たちとしても、おまえらが仲間になってくれてありがたいんだよ」
「そう言ってもらえるとありがてえぜ。あ~、そういえばお前の名前って聞いたっけ?」
「うん?そう言えば名乗ってなかったな。俺はゴースだ」
「ゴースか、ゴーストだからゴースってか、安直だな」
折角いい話をしている雰囲気だったなのに、こいつ俺の名前を聞いてそれをぶち壊してきやがったな。
まあ、いちいち堅苦しいやつよりも幾分もましだけどな。
「俺の名前はレムル・スコルだ!」
どっちがファミリーネームでどっちがファストネームだよ!と思いはしたが英国風の名前かな。
スコルってどっかで聞いたことがあるきがするけど気のせいかな。
ていうか、モコ・スコルっていうのか、可愛さの欠片もない名前だな。
モコだけなら可愛らしい名前なのにスコルで、なんとも言えない名前になったな。
まあファミリーネームは変えられないからな。
「お前ってさ、どれぐらい強いんだ?」
俺がふと気になったことを聞いた。
「俺の強さか?うーん、俺は恐らく冒険者ランク狼のチームと同じくらいかな?」
「冒険者ランクって何だ?」
「え、お前そんなことも知らねえの?世間知らずにも程があるだろ」
「いいから、教えろって」
なんかこいつは、人と距離を縮めるのが早い気がするな。
さっきの会話も、半年とか一年ぐらい一緒にいたやつみたいな会話をしてきやがる。
まあ、それでもなんか憎めないんだけどな。
学校では中心に位置する人物になるタイプの人間だ。
これからその性格でダンジョンの中に住むやつらをまとめて欲しいものだな。
おそらくダンジョンには、一癖も二癖もある人材が多く集まるだろうからな。
「冒険者のランクは、大きく8つに分かれてるんだけど、下から虫、猪、蛇、狼、熊、虎、獅、龍にわかれてんだ」
「このランクってどういう基準なんだ?」
「俺も細かいことは知らないが、虫は未覚醒者がなるランクで、龍は準英雄クラスがいるパーティを示すらしいぜ」
「パーティってことはこれは個人のランクじゃないのか?」
「いや、個人でもパーティでもこのランクで表すんだけど、準英雄がいるパーティ、ソロでもデュオでもを龍と表すらしいんだ」
まあ俺も人から聞いた話だからよく分からんけどな、と言って自分への責任をなくしやがった。
ちょっと待てよこいつ、なんで自分が狼のランクってわかるんだ?
「なんでおまえさ、狼のランクの説明してないのにそれぐらいって分かるんだ?」
「そんなの、前に狼のランクって名乗る冒険者チームを、返り討ちにしたからに決まってるだろ」
いや、決まってねえよ、と言いたいところだが言っても無駄な気がするしやめておこう。
「そう考えるとやっぱりおまえって、相当強いんだな」
「まあな」
ドヤ顔で言ってくるのはむかつくがその強さに免じて許してやろう。
俺はそう心の中で、負け惜しみ的な何かをした。
「そうそう、おまえらってなんで、国に攻められるってわかったんだ?」
「・・・なんでだろうな〜」
なんか、怪しいなこいつ。
急に静かにななりやがった。
絶対これは何かこいつがやらかしたぞ。
そう思っていると、会話を聞いていたのかモコがこっちに歩いてきた。
「父ちゃんが、冒険者チームに煽るようなことを言って、生かしたまま帰したからだよ」
「おい、モコ!・・・俺がそんなことをするはずないだろ」
俺はこいつに目を向けた。
ジト目を向けた。
そして、じーっと見つめた。
「はい、この村が危機に陥ったのは俺のせいです」
しゅんとなったしっぽと犬耳、それは男がやっても需要はないんだよ!
ていうか、こいつ頭悪いのか良いのか分からんな
結構、聡明な所はある感じがするが抜けてんだよな。
まあそこが憎めない所なんだろうけどね。
「まあまあ、その俺の行動があったからお前達と出会えたんだから良いじゃねえか」
そういってガハハハと豪快に笑った。
まあそれもそうだし、俺としては文句はないんだけどな。
話していると行きよりも何だか早くついた気がする。
俺たちのダンジョンの入り口のある洞窟に。
まあ入り口と言っても洞窟の中に入ると転移する仕組みになっているんだけどな。
「さあここが俺たちのダンジョンだ!」
「「「???」」」
獣人達が、何もないですけどって顔をした。
そりゃあ入り口ですから何もないですよ。
「おいゴース、何もないじゃねえか」
「中に入れば分かるよ」
「中に入る?ただの洞窟だろ」
「いいから入れって」
俺はそう言ってレムルを蹴り飛ばした。
予想以上に重かった。
ただでさえ、生まれたてでレベルが低いのにこの重量はよくないな。
危うく飛ばせずに俺が倒れる所だった。
「さあさあ、皆さんも入ってください」
俺がそういうと不審がりはしたが中に入っていった。
全員が中に入ったことを確認した俺も中に入った。
そこには、何もない無の空間が広々と広がっていた。
まだ設備を設置したわけでもないので当然だ。
「おいおい、ゴースこれはどういうことだ?」
「まあ待て、ダンジョンコアこの場にいる全員を10階層に転移させてくれ」
『告、命令を実行します』
すると俺たちは10階層に転移した。
まあ多少物が設置されているだけで、何もない空間なんだけどな。
「さあ、向こうに見える城まで歩くぞ!」
「おお、わかったぜ」
転移に衝撃を受けたのか、返答が少し挙動不審になっていたが俺が前に出て歩くと皆その後ろついてきた。
全員始めてのテレポートに驚いているのだろう。
俺もゲーム時代、初めてテレポートを使った時は驚いた。
それと同時に吐き気も催したのは、今となってはいい思い出だ。
乗り物酔いの酷い時みたいな感覚がしたからな。
きっと俺以外にもテレポートで苦戦したやつは結構いるんだろうな。
俺のチーム内では乗り物酔い激しいのは、俺だけだったからな。
きっとこの話をしても共感は得られないだろうな。
俺はこの獣人の中に俺と同じことになってるやつがいないか確かめるために後ろを向いた。
そこには今やテレポートの衝撃も薄れ、この場所を物珍しげに眺める獣人達の姿があった。
隠しているだけかも知れないが、皆ピンピンしている。
「どうした、ゴース」
「いや、なんでもない」
俺が後ろを向いたことに反応したレムルの言葉を背に俺はまた歩き始めた。
やっぱり俺の仲間は居なさそうだな。
そう思いながら先頭を歩く俺の背はずいぶん小さく見えたらしい。
「おまえら、この本に手を当てて魔力を少量流してくれー」
俺たちは城に着き、今は住民票に名前をを登録している所だ。
これさえすればもうダンジョンの仲間と言っても過言ではない。
最初にレムルが行ってその後にどんどんと獣人の列ができ始めた。
200人が1列に並ぶのはコミケほどではないが、圧巻だ。
少し経つと全員が登録し終えた。
まあ手を当てて魔力を流すだけの簡単な行動だからすぐ終わって当然だ。
そして今からするのは、俺たちの自己紹介?だ。
「さあとりあえず階層守護者とダンジョンマスターの自己紹介をしようか」
小学生みたいではあるが互いのことを知っておくのは大事なことだ。
「じゃあ1階層から言っていこうか」
「分かったぜ、俺はポチだ。えーとこれ何を話したらいいんだ?」
それは普通聞かない物なんだけどな。
まあ、素直なところもポチのいいところか。
「すきにしてくれていいよ」
「えー、それが一番難しいな。・・・それじゃあ種族は見ての通り犬人で、職業は奴隷だ。こんな首輪と奴隷って職業だから間違われやすいんだが、別に誰かに強要されてるんじゃなくてすきにやってることなんで気にしないでくれ。これから、このダンジョンを盛り上げていこうぜ!」
時々、あ〜とかえ〜ととかが挟まれていたが、まあまあポチのことがわかる自己紹介だった。
変態ということが、すぐに露呈したのは良いことなのか、わるいことなのかはよく分からないけどな。
次はラムだ。
もうすでに皆の前に立っている。
「我こそは幾ばくもの剣を束ねし剣の申し子ラムだ。剣のことなら我に聞くといい、我が深淵に到し知恵をかそう。我と共にこのダンジョンを人の血で染めようぞ」
いつも以上に厨二病が濃いラムの自己紹介だった。
変な気合が入っている感じはするけど面白かったしよしとしよう。
ラムも結構満足気に自分の位置に戻っている。
獣人達はちんぷんかんぷんっぽいけどな。
次はストームだ。
動く気がないようで、その場でスピーチを始めた。
「あ〜、見ての通り鳥人族で銃使いをやってるぞ〜。あとは〜・・・これから頑張ろ〜」
まだ何か言うつもりだったのに面倒になってやめやがったなこいつ。
本当このスピーチは人間性が出るな。
次はハイルの番だ。
とても真面目な顔で皆の前に立った。
だが俺たちは悟った、これはめんどくさいやつだと。
「私は第4階層を守護している竜人のハイル・オルクスだ。私は可憐でそして強靭な姫騎士を生業としている。まだ、全盛期の力は取り戻していないが、それでも何事においても全力を尽くすつもりだ。これから苦楽一緒に共のする仲間として、私たちを支える部下として頑張っていこう。君たちに期待している」
そう言ってハイルは自分の場所に戻った。
無茶苦茶良いことを言っているんだがこれ、それと同じくらい恥ずかしいだろ普通!
それをこんな多勢の前で羞恥心一つ見せずに話すのは、才能だと思う。
まあ常日頃から似たようなことを言っているからあんまし俺らには響かないだけどな。
ラムも結構恥ずかしいことを言っていたけどこれは、違うジャンルで恥ずかしいな。
まあでもハイルの、いつでも全力がいい方向に働いたな。
だって獣人達がなんか震えてるもん。
まあ、これまで生きるのに精一杯だったやつらが、期待してるなんて言われたらそりゃあ震えちゃうよね。
次はシャドーだ。
真っ黒な人形の何か(シャドー)が皆の前にでた。
「こんな形で申し訳ないんですが、僕が5階層を守護するシャドーという物です。見ての通り生まれたての影人です。僕は貴方達に全面的に期待させて貰っています。僕らよりも今は貴方達が強いから、というのが理由ですが、それでも貴方達がピンチの時は命をかけて守らせていただきます。これからは皆さん僕らの体の一部同然です!1人も欠けることなく迫りくる絶望を乗り越えましょう!」
うん、こいつもクサイ台詞を吐いていきやがった。
さっき以上に獣人達が震えてやがる。
体の一部だ!とか1人も欠けることなくなんて言われたことないもんね。
しかもこれハイルの偶然と違って狙って言ったんだろうなきっと。
このダンジョンにあいつらを根付かせるために言っただろうな。
本当にシャドーはいい性格してやがるぜ。
とか思っている間にマストが皆の前に立っていた。
「俺はあまり言葉を飾るのはすかん、だがこれだけは言わせて貰う。これから頼むぞ」
そう言ってマストは自分の場所に戻った。
いや~、単純明快でマストらしい。
言葉足らずのきはするがそれでも言いたいことは伝わった?
ていうか、セリフと声がさっきまでのくさいセリフだったりの後だったからかっこいいね。
さあさあ次はカナデだ。
カナデはもうすでに皆の前に立っている。
「こんにちは~!私は見ての通りマーメイドカナデだよ〜。基本的には私は水の中にいるからなかなか会わないかもしれないけど、これからよろしくね〜。まだみんなのことよく知らないけど、これから仲良くしてくれると嬉しいな。みんなで人の軍隊なんてやっつけちゃおう!」
言い終わるとバイバイと言いながら自分の場所に戻った。
いやはや、ええ声してますわ。
聞いてるだけで癒しだよな、獣人達もダンジョン問わず癒されてるな。
まあきっと仲良くなりたくてああいうスピーチをしてるんだろうけど、こういうことをしてるからファンクラブとかができるんだろうな。
ゲーム時代、NPCがカナデのファンクラブを結成した時は、ちょっとした事件になったからな。
まあ今回もファンクラブが出来そうだな〜、なんて思いながら彼らを見守ろう。
俺の番が近づいてくる中次はフクロウだ。
フクロウは俺の方に歩いてきて俺の近くで止まった。
?ああそういうことね。
「・・・フクロウ・ネコ・・種族は自動人形、これからよろ・・」
それだけ言うとまた自分のところに戻って言った。
「あー、さっきのやつは、フクロウ・ネコって名前で見ての通り自動人形だ。フクロウ云くこれからよろしくだそうだ」
俺がフクロウに伝えてくれと、言われた?部分は俺が大きな声で説明した。
まあ、大きな声と言っても全員に聞こえる程度の声だけどな。
人見知りなのかな、恥ずかしがりやなのか、という生暖かい目線を向けられてフクロウは顔を真っ赤に染めている。
まあ自分ではあんなに大きな声出せないから仕方ないよね〜。
俺も生暖かい目線を送っていたらフクロウから魔法が飛んできた。
ソウル・スナイプだ。
俺は油断していたせいで、クリーンヒットしてしまい、フクロウにドヤ顔された。
イラッとしたが俺はさらに生暖かい目線を送りながら全員の前に立った。
ぶっちゃけ、何も言うこと考えてなかったのでどうしようか迷ってる。
まあなるようになるだろ。
「え〜、俺がこのダンジョンのダンジョンマスターをやっているゴースだ。正直な話、おまえら獣人に交渉を持ちかけに行った時、結構俺はびびっていたし、心配もしていた。俺が思っていた以上にお前達は強そうだった。だからこそ何としても仲間にしたいと思って脅し紛いのことをしてしまった。これについては謝らせてもう。すいませんでした!だけどまあそれもあってか、お前達が仲間になってくれた。俺はこの人間至上主義の社会を、ぶっ壊そうという気はぶっちゃけない。だけど助けれる命は助けたいと思っている。それは獣人は当然助けるし他の亜人も助ける、魔物も然りだ。まあ、でもそれはもう少し後の未来の話になるだろう。だから今は俺たち全員で近くまで迫ってきた絶望を打ち砕こう!」
俺は波に乗って言ってはみたが、我ながら無謀だな。
人以外みんな助ける宣言しちゃったからな。
普通に考えて人以外全員助けるのは無理だと思うけどな〜。
まあやれるだけはやってみるけども。
うん、もう言っちゃったことは、どうしようもないんだし諦めて頑張ろう。
無理だからって誰が責めるわけでもないしな。
そして、俺のスピーチが終わりやっときましたよこの人が。
俺らを前座と言っても差し支えはない。
あいつに従来のカリスマ性は二次元だろうと三次元だろうと効果を発揮した。
本当はあいつが、ダンジョンマスターに成るべきだと俺は思っていたぐらいだからな。
さっさと作るために一番レベルの上がる速度が早かった俺がやったが、そんなの関係なくやっていたら確実にあいつがダンジョンマスターだった。
俺だって、この問題児メンバーを纏めてるんだからカリスマ性というリーダーの質というか、そんな感じのやつはちゃんとあるはずなんだけど。
あいつは別格だ。
あいつこそ本物だ。
さあ、いけプリセス!
「わたくしは貴方達の直近の上司になる者よ」
重圧、声だけで人を畏怖させる。
空気が一瞬にして変わり、戦場にいるような緊張感が走る。
「わたくしが貴方達に命令して、貴方達を動かして、貴方達はその通りに動く。わたくしの手足と貴方達がなるの」
脅すようなその言葉はなぜか否定をすることなく、胸の中にスッと入っていく。
「貴方達は手足となり、血肉となり、骨となる。今のわたくし達には貴方達が必要だわ。いえ、今だけじゃなく、これからもそれは変わらないわ。だからこそ、わたくしが貴方達を動かすの。わたくし貴方達に最善策を命令して、貴方達を死なないように動かして、貴方達はそれを信頼してその通りに動く。これができたのなら、貴方達に命の危機がこないことを約束しましょう。わたくし、プリセスの名を持って」
一旦話を区切った。
そしてプリセスは、息をまた吸い話始めた。
「貴方達にも欲しものも、やりたいこともあるでしょう。そのエゴをこれまで、ずっと我慢してきたのでしょう。もう我慢なんてする必要はないわ。なぜって貴方達はわたくしの手足で血肉で骨なのだから、やりたいことをやりなさい、間違ってもいいわ。だけど一つだけやることがあるわ。わたしくしにしっかりついてきないさい!それさえできれば、もう仲間よ」
プリセスが全員の前から自分の場所に戻った。
言葉で緩急をつけ、アメとムチを与えた。
獣人達は放心状態だ。
スキルのカリスマの力はほとんど効果を発揮していない。
それでも優に獣人達を魅了する。
俺たちに出会わなかったら、ゲームにハマらなかったきっと大企業を作って大成功を納めていただろうに。
勿体無い才能だと思う反面、こいつが仲間で良かったと思ってしまう。
まあ、いまやプリセスが会社を作ることもできなくなったけどな。
それでも俺はプリセスに尊敬の眼差しを向けさせてもらう。
なんかそれだけで、リーダーの資質をもらった気がするからな。
プリセスの自己紹介とは言えない、まあスピーチ?が終わり少しさっきの勢いに呑まれて動かないでいると、シャドーが全員の前に向かって走り出した。
シャドーのやつ何してんだ?そんな焦った顔して?
焦った顔・・まさかもう人の軍隊きた感じ?
「皆さん、感傷に浸っているところ申し訳ないんですけど、どうやら人の軍隊が来たようです。まだ、ダンジョンには気付いてないようですが、おそらく貴方達の集落に向かっているものかと思います。僕は引き続き監視をしますので、他のメンバーは戦闘準備をお願いします」
シャドーはそう言ってからダンジョンコアに頼んで、1階層にテレポートした。
はあ、イベントに休みがないね〜。
まあでも経験値を荒稼ぎするためにも、今はいっちょ頑張りますか。
そう思いながら俺はプリセスに作戦の説明も求めるべく、目線を向けた。




