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第十二話


遅れましたがこの小説を読んでくれている皆様、ご愛読ありがとうございまッス。


これからもよろしくお願いしまッス く(´∀`)


それと、大変おこがましいのですが感想や評価をいただけたらとても嬉しく思います。それを今後の参考にもしていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いしまッス。

「あぁ!!もう!!悔しい!!」


「まぁまぁ落ち着いて。また今度頑張ればいいじゃないか。」


キールとの戦いに敗れて失神したルナが、十数分ほどしてから目を覚ました。ルナは自分が負けたのだということを自覚すると悔しくてしかたがなかった。そして今にもキールに殴り込もうとするルナをカインたちは必死に止めに入り、今はシンクがなんとかなだめている。


「会話なんかしなければあんな魔法出させなかったのに!!汚いわ!!卑怯よ!!」


しかしシンクの言葉も今のルナの耳には入らず、ルナはキールの戦い方に悪態をつくばかりだった。


「まともに戦ってたら絶対に私が勝ってたわ!!まったく、レッダム家のくせしてあんな戦い方――――」


「おい、いい加減にしろ。負けた奴が何言ってもそれは全部戯言だぜ。それにキールのあれは立派な戦法だった。そしてそれにひっかかったお前が弱いんだよ。お前にはちょっとがっかりだぜ。」


「…………カイン、あんたぶっ殺されたいの?」


いつまでも怒鳴っているルナにカインが挑発的な言葉をかける。それに対してルナは怒りの矛先をキールからカインに変えて、そして殺気立った目でカインを睨みつける。カインも負けじとルナを睨み返す。二人の間に険悪な雰囲気が流れる。


そしてこのままではヤバいと思ったサジとシンクは、急いでそれぞれカインとルナの体を後ろから掴んでなだめようとする。しかしカインとルナの二人は未だに睨み合っている。


「次!!カインとノーマル!!」


そこに今のサジとシンクには神様とも思えるマリアの声が響いた。マリアに呼ばれたカインは流石にそれを無視することはできないのでルナから目線をはずし、中央へと歩いていく。サジとシンクの二人はホッと一息をつく。しかし


「まぁ俺の戦いでも見て勉強するんだな。カハハ!!」


カインが最後に余計なセリフを吐いていった。それによってルナは更に怒り出し、サジとシンクでやっと止められている状態だった。













「おいおい、あいつら仲良くなったんじゃなかったのか?」


そんな四人の様子をコニルは遠くから観察していた。そして今更だが自分の計画は失敗だったかな、と少し後悔する。コニルは一度タバコを口にもっていき一服する。コニルの口から大量の白い煙が出てくる。そしてタバコの火を消すとコニルは中央へと目を向けた。


「まっ、今はそれよりもカインの戦いだ。しっかりと見させてもらうぜ。なんたってお前は――――――」












「カハハ!!やっと俺の出番か!!待ちくたびれたぜ!!」


中央に来たカインは豪快に笑いながら大声を出して言う。そしてそれに向かい合って立っているのは何の特徴もない、言うならば普通の生徒だった。名前もノーマルとあって、周りの生徒たちはコイツは脇役だな、っと同情するような目で見ている。


「この学園に入学してから約一週間、やっと戦いができる!!カハハ!!」


我慢できないといった感じでカインは体を震わせて笑う。その笑みはまるで子供が新しいオモチャを買ってもらったような、本当に嬉しそうな笑みだった。対戦相手のノーマルはそれを見てすこし身震いする。それはカインのように喜びからではなく、ただ単純にずっと笑みを浮かべているカインに対しての恐怖からだった。


「(問題児のカイン、初めての模擬戦であるにもかかわらず何なんだこの余裕は。よっぽど自分の実力に自信を持っているのか?)…………それでは二人とも準備はいいな?」


「カハハ!!いつでもいいぜ!!」


そのマリアの言葉に、中央に集まる前から既にグローブを手にはめていたカインが答える。準備をしていなかったノーマルは急いで剣を構える。そして二人の準備が終わり、練習場が一旦静かになる。


「始め!!!!」


そしてマリアの開始の合図が響く。しかし二人ともまずは様子見なのか、カインは拳を構えてステップを踏みながら、ノーマルは剣を構えたまま動かない。


「…………意外だな。カインのことだから真っ先に相手に突っ込んでいくかと思ったぜ。」


その様子を見てサジは呟く。カインの普段の行動、性格、それから考えるとカインは確実に特攻タイプに見える。しかしサジは様子見というカインの予想外の行動に少し驚いていた。


「アイツ、私に戦いを挑んできた時もあんな感じだったわ。でも実はいざ戦うとなってビビって動けないだけなんじゃないの。」


ルナはまださっきのことで怒っているのか、フンッと鼻を鳴らして嫌味ったらしく言う。いつまでも大人気ないルナの様子に、サジとシンクはただただ苦笑いをするしかなかった。



ダッ!!!



「!!?」


するとルナがそう言った瞬間、カインは対戦相手に向かって走り出す。それに対戦相手のノーマルは驚きの表情を見せる。しかしすぐさま向かってくるカインを見据えた。


「相手がお前みたいな普通な奴でガッカリだけどよ、初試合なんだから文句は言えねえよなぁぁあ!!カハハ!!いくぜ!!『ファイヤー』!!!!」


ボンッ


カインの魔法がノーマルへと飛んでいく。それをノーマルは横へ飛んで避ける。そしてすぐさま剣を振り上げてカインに切りかかろうとするが、既にカインは後ろに下がってノーマルの攻撃がとどかないところにいた。


「お前の攻撃なんざ読めてるんだよ!!『ファイヤー』!!『ファイヤー』!!」


「くっ!!!!」


今度は二発連続でカインは魔法を放つ。ノーマルはすぐさま避けようと体制を整える。そして一発目の魔法を横へ転がることによって避ける。しかし体制を崩してしまったノーマルに二発目の魔法が飛んでくる。


バンッ!


「カハハ!!中々やるじゃねえか!!」


避けることが無理だと判断したノーマルは剣でその魔法を防いでいた。間一髪で魔法を防げたノーマルは少しホッとするがそれも一瞬で、既にカインがノーマルの方へと走り出していた。あまり魔法が得意ではないノーマルはむしろ好都合だと思い、自分もカインの方へと走り出す。


「やっぱ戦闘つったら肉弾戦ってか!!カハハ!!!!」













「カインの奴、結構強いじゃねえか。あんだけ大口を叩くことはあるじゃん。頑張れよー!!!!」


カインの戦いの様子を見てサジは感心し、大きな声で応援する。しかしサジの横にいるルナとシンクはその試合を真剣な表情で見つめて何かを考えていた。


「……やっぱりおかしいわ。」


ルナが呟いて、やっと二人の様子に気付いたサジが応援を止める。


「ん?ルナちゃんどうかしたの?ていうかシンクも何そんな表情してんだよ。それにしてもカインの奴も中々やるな。てっきり口だけかと思ってたぜ、ハハハ!!」


しかし空気の読めないサジはそんなのも気にせず笑い出す。


「そのカインが強いっていうのがおかしいんだよ。」


今度はシンクが呟いた。その言葉にサジは再び笑うのを止めて首をかしげる。


「何言ってんだよ、現にカインは結構いい勝負をしてると思うぜ?」


そんなシンクの言葉に、何を言っているのか分からないといった様子でサジが言った。しかしシンクは首を横に振る。


「そう、確かにカインは相手の先を読んで良い動きをしてる。そこだけを見たらカインは強いように思える。でも…………」


「実際カインはそんなに強くないわ。」


シンクの言葉の先をルナが変わってキッパリと言う。サジはその言葉に目を丸くする。何を言ってるんだ?そう言いたいかのような目でサジはルナとシンクの二人を見る。そして再びシンクが口を開く。


「多分皆は雰囲気に飲まれてそれに気付いていないんだ。カインが強くないってことにね。」


「だからどういうことだよ?」


未だにルナとシンクの二人が言っている意味の分からないサジは、せかすように二人へ問いかけた。


「カインの対戦相手の人はそれほど強くない。このクラスの中でも真ん中ぐらいの実力だと思う。そして彼が剣で魔法を防いだとき、彼の服には傷一つさえついていなかった。」


「…………あっ!?」


少し考えた素振りを見せた後、サジが何か閃いたように声を上げる。そして今度はルナが口を開いた。


「やっと気付いたようね。普通ただ剣を前に出して魔法を防いだなら、ダメージは少なくなるものの完全には防げないわ。なのに対戦相手は服さえ傷ついてない。それに外れた魔法が地面に当たったところもそれほど大きな痕ができてるわけでもない。」


「つまりカインの魔法の威力はめっちゃ弱いってことか!?で、でも魔法は苦手で体術が凄いのかもしれないぜ!?」


「それが違うんだな〜〜。」


「「!!!?」」


急に背後から間延びしただらしない声が聞こえた。振り返るとそこには案の定コニルがいた。コニルはタバコを口にくわえてフゥーと煙を吐いていた。


「急に現れるのは止めてくださいよ!!ビックリするじゃないッスか!!」


「あぁ、わりぃわりぃ。」


悪びれる様子もなくコニルはサジに形だけの言葉をかける。サジは何を言っても無駄だとわかりため息をつく。サジは少しだけマリアの心が分かってしまった。


「ところでコニル先生、違うってどういうことですか?」


シンクが先ほどの言葉についてコニルに尋ねる。


「そのまんまだよ。カインは体術も凄くないってことだ。その証拠にホレ、見てみろ。」


コニルのその言葉に三人は中央で戦っているカインを見る。一方的にカインが攻めているように見えるが、剣でほとんど防御されており、ノーマルに致命傷となるダメージはなかった。戦っているカインはそれにもかかわらず笑い続けているわけだが。


そしてその様子を見たルナはゆっくりと口を開く。


「つまりアイツは魔法も体術も全然ダメなただのザコってこと?」


「そのとおり!!」


ルナの言葉に、コニルがルナを指さして言った。さらにコニルは笑いながら言葉を続ける。


「お前ら、入試の時に筆記と実戦の試験を受けただろ?ちなみにルナの成績は筆記2位、実戦3位、全体2位とトップクラスの成績だ。」


ルナはそんなこと生徒に教えてもいいのか、とツッコミを入れたがコニルはヘラヘラしながら適当にそれをあしらう。


そしてサジとシンクは試験の内容を思い出していた。筆記試験の内容は基本問題が6割、専門的な問題が4割だった。実戦試験はレッドクラウンの教師と戦うといったものだった。もちろん教師の方は全然本気を出してはいなかったが。


「そしてカインの成績だが…………なんと全体で500人中最下位の500位、筆記も最下位、実戦の成績が480位だ。」


「「「はっ?」」」


コニルの言葉にそこにいた三人は信じられないといった顔をしている。ある程度低いというのは予想していたがまさかここまでとは思ってもみなかったのだ。そんな呆けている三人を無視してコニルはまだ話を続ける。


「この学園では二年生になると戦闘科と看護科のどちらかを選択しなければならない。そしてカインより実戦の成績が下のやつは最初から看護科志望で入ってきた奴だ。つまりカインは実質この学園で最弱という事になる。」


「ちょっと待てよ!!魔法の使えない俺よりも成績が下なはずないだろ!?それに俺は家柄のおかげでこの学園に入れたんだぜ!?」


コニルの話に、サジが焦ったように言葉を発する。しかしその言葉にコニルは首を振る。


「ちなみにサジ、お前は全体の成績は499位とカインに続いて悪かったが、筆記試験の成績は上位だった。それに実戦の試験では魔法が使えないにしても体術は中々良かったということもあり、魔法も体術もお粗末なカインよりは評価が高かったていうわけだ。家柄のおかげもあるかもしれんが、ほとんどお前の力でこの学園に入れたんだ。」


「俺が……最下位じゃない…………?」


サジは初めて最下位から抜け出せたことに驚きを感じて、言葉を発せられないでいる。いつも落ちこぼれとして周りからバカにされていたサジには当然の反応といえる。そしてようやく落ち着きを取り戻したサジは、初めての経験に心の底から喜ぶ。さらにこの学園に入学したのは家柄のおかげだけではないということもあり、その喜びは簡単に言葉では表せないものだった。


「てことはなに?カインはそんな弱いくせに私やキールに喧嘩を売ってきたっていうの?」


そんなサジが喜んでいるのを横に、ルナが眉をひそめながらコニルに聞く。


「まっ、そういうことだな。だから今日俺はカインが戦うのを見に来た。あんだけ大口をたたいてたやつがどんな戦いをするのか気になってな。しかし案の定何にもなかったな、中々おもしろかったぜ。」


そう言ってコニルはヘラヘラと笑う。どうやら弱いくせにルナやキールに喧嘩を売っていたカインの馬鹿さ加減に笑っているようだ。


「…………しかし俺はもう一つの可能性に賭けてたんだがな。力を隠している、という可能性に…………(なんで学園側はこんなやつを入学させたんだ?……もう考えるのも面倒くせえな)。」


誰にも聞こえないようにボソッと呟いたコニルだったが、最終的には思考をするのが面倒くさくなって、今はただカインの試合をみることにした。


「おっ、どうやらカインの対戦相手も気づいてきたようだな。」


コニルのその言葉に三人は再びカインの試合に集中する。














「(あれ?今思ったらコイツ…………全然強くないぞ?)」


カインの攻撃を防いでいたノーマルは冷静になった頭で考える。先ほどまでカインの勢いに飲まれて、焦ってばかりいたノーマルだったが、攻撃を防いでいくにつれて冷静さを取り戻しつつあった。


「(というかむしろ弱い!!これなら!!)」


「オラオラオラ!!どうしたどうした!?反撃してこねえのか…………オワッ!?」


さっきから一度も攻撃をしてこないノーマルに、カインは拳や蹴りを連続で繰り出していた。そして挑発するように声をかけようとしたカインだったが、途中ノーマルの攻撃によってそれは阻まれた。腰辺りに振りかざしてくる剣を何とかカインはバックステップで避ける。


「カハハ!!やっと攻撃してきたか!!やっぱ戦いはこうじゃないと面白くねえよな!!?」


カインは反撃をされたことに驚きではなく、むしろ喜びを感じている。そして体勢を立て直したカインは再びノーマルに向かって走り出す。すると対戦相手のノーマルは剣を持っていない方の手を前にかざした。


「くらえ!!『ウィンドカッター』!!」


「なに!?くっ!!『ファイヤー』!!」


対戦相手のノーマルはカインが接近してくることを許さない。ブーメランのような形をした風がカインに襲い掛かる。そしてカインはそれを自分の魔法で相殺しようとする。


ザンッ!!


「ぐっ!!?」


しかしノーマルの魔法の威力のほうが強かったのか、カインの魔法を切り裂くように消滅させてそのままカインの左腕に直撃した。


「(やっぱりだ!!カインは魔法の方も大したことないぞ!!)」


それによってノーマルは確信する、カインが弱いということを。さらに周りの生徒たちも段々とそのことに気づき始め、先ほどまでとは違う意味でザワザワと騒ぎ出した。


「カハハ!!結構やるじゃねえか!!だけどそんなんじゃ俺には勝てねえよ!!」


左手を押さえながらも、カインは未だに余裕の表情を崩さない。しかしそんなカインの様子を見てノーマルは笑みをこぼす。


「ふっ、大口を叩くのはもうやめな。俺はもう気づいてるよ!!君が弱いということに!!」


「…………はっ、だったら試してみればいいじゃねえか!!俺が弱いかどうかをよ!!」


カインはそういうとまたノーマルに向かって走り出した。今度はノーマルもカインに向かって剣を構えながら走り出す。そして二人の距離が縮まった時、カインは怪我をしていない方の腕の拳を突き出し、ノーマルは振りかぶってからそのまま剣を振り下ろした。


ザスッ!


「ぐあっ!!!!」


攻撃をうけて呻き声をあげたのはカインだった。カインの拳よりもノーマルの剣が先にカインの体に当たり、カインはそのまま後ろへと吹っ飛んだ。そしてカインは勢いよく地面に激突して苦しそうに咳をしている。


「そこまで!!勝者、ノーマル!!」


その様子を見たマリアは高々と声をあげる。周りから見てもその判定は納得いくほど明らかだった。しかしカインはすぐさま起き上がってマリアの下へと走り出した。


「ちょっと待て!!まだ俺はやれるって!!」


「黙れ!!もしこれが戦場ならばお前は倒れて咳をしている間に殺されている。分かったらとっとと整列しろ。」


カインはマリアに懇願したが、それをマリアは一刀両断で断る。そしてそろそろ授業の終わりを告げるチャイムが鳴るので全員を整列させる。カインも納得がいかないながらも、渋々自分の整列する場所へと歩き出す。


「よしっ!!これで今日の実戦授業は終わりだ!!解散!!」


「「「ありがとうございました!!!!」」」


マリアの言葉に生徒の全員が揃えて礼をする。そしてみんなぞろぞろと自分の教室へと帰っていく。カインたちも同じようにして教室へと歩いていく。ちなみにコニルは勝負が終わった後、すぐにこの場所から消え去った。どうやらマリアに怒られる前に逃げたようだ。













「いや〜、今日の勝負は惜しかったな〜。カハハ。」


「どこがだよ!!見てみれば結局相手の楽勝だったじゃねえか!!」


教室へと帰る途中、カインのそんな間の抜けた言葉にサジがツッコミを入れる。誰がどう考えても今日のカインの試合は対戦相手の圧勝である。しかしカインはそんなのも気にせずに笑っている。


「まったくよ。アンタあれだけ私に大口叩いておきながら何なのよ、あんなに呆気なく負けちゃって。」


ルナは今日の試合の結果に、怒りを通り越してただ呆れるだけだった。


「ぐっ。ま、まあ今日はちょっと体の調子が悪かったからな、熱も40度あったし。今日の俺は実力の5パーセントも出てなかったな。」


「そんな簡単にわかる嘘ついてんじゃないわよ!!確実に本気中の本気だったじゃない!!はぁ〜、私が一度アンタに感じた威圧感はただの気のせいだったってことね。」


ルナが両手を上げながらヤレヤレといった感じで言う。


「それにカインの目つきって悪いからね。そんな極悪人みたいな目で睨めつけられたら誰だって怯んじゃうよ。」


「う、うるせえよ!!目つきが悪いのは生まれつきだ!!」


シンクの言葉にカインは声を荒げながら言う。さらにカインは言葉を続ける。


「大体俺は戦いができればそれでいいんだよ。」


「うわっ、それって殴ったり殴られたりするのが好きってことじゃない。変態ね、気持ち悪っ。」


「そんなんじゃねえよ!!ただ俺はあの緊張感が好きなだけだ!!」


「それも結構変わってると思うけどね。」


「確かに。」


ルナの言葉に反論したカインだったが、続けてシンクにも言われてグッ、と言葉に詰まる。サジもそれにウンウンと頷く。劣勢になったカインはとりあえずサジだけはぶん殴っておいた。サジは何で俺だけ!?と言いながら地面にひれ伏す。


「そんなことよりもアンタ、私に何か言うことがあるでしょ?」


「はっ?何をだよ?」


そして一旦落ち着くと、ルナがカインへと言葉をかける。ルナの突然の言葉にカインは何のことか分からず頭に疑問符を浮かべながら訊く。


「なにが俺の戦いを見てろ、よ。あんな無様な戦いから何を学ぶっていうの。」


そしてルナは少しカインのモノマネをしながらカインに話しかけた。ルナのその言葉にカインはただウグッ、と声を上げることしかできない。


「それに以前から私に喧嘩売ってきたり、私のこと馬鹿にしたり。だからアンタ、私に謝りなさい!!スミマセンでしたと頭を下げなさい!!」


ビシッとカインに向けて指を指したルナは大きな声で言う。たしかに大体のことはカインに非がある。そしてそれを考えたカインはチッ、と舌打ちをしてゆっくりと口を開きだした。


「す、す…………」


「はあ!?なんて言ってるのか全然聞こえないわ!!男ならはっきり言いなさいよ!!」


ルナが手を耳において嫌味ったらしく言う。カインとルナのその様子にサジとシンクはただ苦笑いしかできなかった。カインは言葉に詰まりながら徐々に言葉をはっきりさせていく。ルナはそんなカインを腕組みしながら見下ろしていた。そして


「す、すみ、すみません……でした………………なーんて俺が言うと思ったのかよ!!」


「なっ!?」


まさかのカインの態度にルナは驚きの声をあげる。一度頭を下げたカインだったのだが、再び頭を起こしたときのカインの顔はアッカンベーの形になっていた。


「この俺様がお前なんかに謝るわけないだろ!!このブス!!お前なんて俺様の足元にも及ばねえんだよ!!」


そう言ってカインはその場から一目散に逃げ出した。その速さといったら試合のときよりも速いんじゃないかと思わせるほどだった。そしてルナは怒りによって肩を震わしながら顔を真っ赤にする。


「な、ななななんですってぇぇぇえ!!!!またアンタ私のこと馬鹿にしたわね!!それに私は美人って言われることはあっても、ブスなんて言われたこと一度もないわよ!!!!」


そう怒鳴りながらルナは逃げていくカインを追いかける。カインはガキのように舌をだしながらバーカ、ブース、などと言って逃げ回る。ルナはそんなカインに何発も魔法を放っていた。


取り残されたサジとシンクは深いため息を吐いた後、それを止めるために走り出した。途中で向こうのほうから凄まじい爆発音とカインの叫び声が聞こえたのは言うまでもない。

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