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41話 初めての部下というのは大げさだが、後輩である事は事実である

 新人二人が研修に向かう。

 バギーの免許を取りに行き、帰って来たらヒロキの下につく事になる。

 今までガントラックに固まって居た者達が多少は分離して行動出来るようになる。

 それによる戦力増強は望ましい。

「けどなあ……」

 それでもヒロキは悩んでぼやく。



「上手くいきますかね」

 そんな言葉を北川達にもらしていく。

「俺、今まで誰かをまとめた事なんてないですよ」

「そうは言っても、お前しかいないしな」

 北川はそう悩むヒロキに現実をつきつける。

「俺が無線で事細かに指示を出すわけにもいかん。

 同じバギーに乗ってるお前がやるしかない」

「まあ、それは分かってますけど」

「なに、そんな悩むほどでもない。

 勢いに任せてやっていけばどうにかなる」

「そんなもんですか?」

「そんなもんだ。

 俺がそうなんだからな」

 励ましになってるのか分からない理由である。

「そんなもんですか」とヒロキは口にするしかなかった。



 とはいえ、泣いてもわめいてもその時は来る。

 二週間もすれば新人は帰ってくるのだし、それならそれに合わせておくしかない。

 とりあえず、バギーやバイクの動き方、実際に動いて感じた事などをまとめていく。

 増えた分でどれだけ行動が出来るか、どうやったら他の邪魔にならないか。

 自分が感じたり考えたことをまとめていく。

 何はともあれ二人がバイクなりバギーに乗るなら、移動する機関銃座が増えるという事になる。

 それを上手く使っていくにはどうすれば良いかを考えていった。



 二週間の研修を経て戻ってきた新人二人は、バギーに乗り込む事になった。

 本人はバイクが良かったようだが、実際に乗るとなると現実を優先するらしい。

 乗ったばかりで上手く扱えないバイクでは、砂利道などは危険だと感じたらしい。

 屋外での運転を考えるとバギーの方が安定してるのは明らかだ。

 襲ってくるモンスター相手に転倒していては始まらない。

 確実に相手をとらえて攻撃出来ねばならない。

 その事は若いながらもしっかり理解してるようだった。

 自分の願望を優先せずにいる分別はありがたかった。



「ここではこう動いてくれ」

 休みの時間には色々と教えていく。

 とにもかくにも、護衛の時の位置取りと、モンスターが出て来た時の動き方を教えていく。

 車とは別に動ける利点を使って、効果的な位置取りを────などとは言わない。

 最初はとにかく、車と一緒に行動し、それらの邪魔にならない位置に停まって撃つ事を教えていく。

 乗り込んだばかりの二人に、適切な位置取りや動きながらの攻撃など無理である。

 そんな事をするより、まずは出来る範囲での動き方を身につけさせていく。

 単独で動ける利点などはその後の話だ。

 ありがたい事に、新人は素直に言う事を聞いていく。

 単調な動きを繰り返す練習する事も厭わない。

「そう、それでいい」

 ヒロキも素直に新人達を褒める事が出来た。

 基本は簡単なものだ。

 ──移動する時は、他の車との車間距離を保つ。

 ──運転手から見えない、死角になる位置には絶対に入らない。

 ──体が剥き出しなので、道路の外には時折目を向けて警戒をしておく。

 ──ただし、運転が疎かになったら元も子もないので、まずはまっすぐ走る事を優先する。

 ──モンスターが出てきたら、停まって撃つ。

 ──停まるのも道路から降りて、他の車の邪魔にならないように。

 おおむねこんな事が守るべき基本になる。

 たったこれだけであるが、慣れてないと意外と出来ない事が多い。

 モンスターを前にして緊張や混乱をする事もあり、それで頭からこういった事が消えたりもする。

 それはそれで仕方ないのでやむをえないと思うしかない。

 ただ、そうであったとしても守らねばならない大事な事がある。

「絶対に仲間に向けて撃つな」

 混乱してる場合には起こり得る。

 だからこそ、それを避ける為に引き金に指をかけないように注意をしていく。

 モンスターが迫ってる場合以外は、とにかく銃に触らない。

 たったそれだけで、誤射の可能性が減る。

 仲間を撃つ可能性を下げる事が出来る。

「当たり前だけど、撃つのはモンスターだけだ。

 人間じゃない」

 その事をしっかりと伝えていく。



 それらを教えながら日々の業務に向かっていく。

 研修修了後、即座に仕事があるので、教える時間もままならない。

 休憩時間を利用して、あれこれと教えていく。

 時には北川達から、どういう位置にいて欲しいかなども聞いていく。

「さっきの場合だけど……」

「運転してると、ここに来られると見えないぞ」

「撃つときに邪魔になるから、絶対にここには入るな」

 北川、仁科、安西からの言葉を新人達は必死になって聞いていく。

 それらに新人は、「はい」「あ、はい」と返事をしていく。

 どこまで理解をしてるのかは分からないが、言われた事を耳にいれようとしてる姿勢だけは見てとれる。

 実際にそれらが形になるまで、言われた事を理解して動けるようになるまでには、二回三回と行動していかねばならない。

 言われた事を一度で決められる人間はそうはいない。

 何度も実際に繰り返す事で自分のものにしていくしかない。

 幸い新人二人は比較的物覚えが良いようで、数日もするとそれなりに動けるようになっていった。

 その間、モンスターも何度か襲ってきており、その都度教えられた事を試す事も出来た。

 命がけの実地研修になってるが、それが二人の経験値を上げていく。

 モンスターが出現してからの停車するまでの動きと、撃退が終わってから車列に復帰するまでの動作。

 それらもだんだんと滑らかになっていった。



 何よりもありがたいのは、指示に従ってくれる事だった。

 変に突っかかってきたり反発したりしない。

 分からない事は聞き返してくるが、反抗的な態度はとらない。

 そういう素直さがありがたかった。

 無駄な反抗や反発は時間の無駄どころか害悪でしかない。

 場合によっては意見具申のように提案も必要にはなるだろう。

 だが、それには様々な経験と智慧が必要になる。

 あるいは、研ぎ澄まされた直観もあるだろう。

 必要な知識や情報が無いから上手く言い表せないが、何かがおかしいと感じる勘所。

 そういった事は是非とも述べてもらいたい。

 なのだが、それらが出てくるまでにはそれなりの積み重ねも必要になる。

 今の新人にそれらが出て来る事を期待は出来ない。

 指示待ち人間、言われた事しかしないという状態なのだ。

 そこから抜け出すには、まだまだ時間が必要になる。

 それが一年なのか二年なのか、あるいはもっとかかるのかは分からない。

 だが、とにかく今は言ってることに素直に従ってるという態度がありがたい。

(そのうち何か言い出すんだろうけど)

 面倒になるかもしれないが、適切な事を口にするようになる日がくるのをある程度は楽しみにしてもいた。



「そろそろ次も行くか」

 北川がそんな事を言い出した。

 少しずつバギーの新人も戦力になりつつあった頃である。

「他の連中にも技術をおぼえさせないと」

 それもそうなので反対は特になかった。

 新人達の能力底上げは生き残る可能性を高めてくれる。

 ただ、研修に行かせる時期を考えないと戦力の減退が大きくなる。

 北川はそれを見計らっていた。

「次は機関銃とか擲弾筒とかをやってもらおうと思ってる」

 火力の強化を考えているようである。

 ガントラックに積み込むならばそれほど問題もない。

 早速二人の新人が研修に放り込まれる事になった。



 少しずつヒロキ達の戦力は向上していっている。

 時間はかかるが、着実に。

 ヒロキも、そんな新人を上手く動かせるように頭を使っていかねばならない。

「適当な研修でもあればいいんだけど」

 指揮に必要な技術研修はないものかと社内ネットワークを探る日々は続いていく。

 残念ながら、そういったものはなかなかなかった。

 ビジネスマナーや通常の会社業務に関わるものはあるのだが。

 残念ながら戦闘における指揮官の研修は適当なものがない。

「どうにかしてくれないかな……」

 ほんの少しだけ求めるものから外れている各種研修の品揃えに落胆する。

 数人を率いる場合の戦闘指揮官の研修があればと思った。

(要望だけでも出しておくか……)

 かなうかどうかは分からないが、言うだけは言っておこうと意見だけは出しておく。

 それが実現するまでどれだけ時間がかかるか分からないが、何も言わないでいたら全く何も出てこない。

 無駄になる可能性が高くても、言うだけは言っておいた方が身の為だった。

 続きは17:00予定



 突発的に思いついたこちらもよろしく。

 いずれ連載できたらなと思ってる。

『転生したらエロゲーかつギャルゲーの主人公──ではなく脇役の友人枠(?)だった』

https://ncode.syosetu.com/n0353eu/ #narou #narouN0353EU

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続編はこちら。
『異世界開拓記 ~トンネルの先は異世界だった~』
https://ncode.syosetu.com/n8924fg//

ブログのほうでも幾つかは掲載している。
『よぎそーとのブログ』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/
+注意+

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