39話 あちこちに新人が入って頭数だけは揃っていく
砂利道の感触がタイヤを通して伝わってくる。
舗装された路面の快適さとはほど遠い。
偵察業務で野外に出ていたので、こうした感触は始めてではない。
だが、慣れはしても好きになれそうになかった。
(早くアスファルトになってくれないかな)
いずれはここも舗装されるだろうが、まだまだ先の話である。
開拓地予定地にすらまだ到着しておらず、そこに至る道路を作ってる段階なのだから。
その道路が砂利道であり、これが目的地に通じるものとなっている。
まずは前段階であるこの道路を作り上げねばならない。
開拓地建設など、その先の話である。
綺麗に舗装された道路も、まだまだ先の事である。
そんな砂利道を進んで資材置き場に到着する。
建設現場に最も近い宿泊所でもあり、プレハブ小屋がずらっと並んでいる。
ここでトラックは荷物を一旦おろしていく。
バスからも人が次々に降りていく。
彼等は彼等でこれから寝泊まりする場所へと向かっていく。
それから作業に割り振られるようになるのだろう。
指示に従って動く少年少女を、ヒロキは何となく視界にとらえながら、
(大変だなあ)
と暢気に考える。
彼等くらいの年齢の時に、ヒロキは何も考えないで高校生をしていた。
それに比べて、彼等は立派なものだと思う。
事情や理由はともかく、社会に出て働いていこうとしてるのだから。
それも、こんな危険なところで。
同じ年齢の時の自分に、そんな洗選択が出来るだろうかと考える。
(無理だな)
即座に結論が出る。
そんな度胸などなかっただろうと。
だからこそ、30代の半ばまでふらついた人生を送っていたのだ。
その挙げ句に、金を求めて異世界であるこちら側にやってきた。
その選択も悪いものだとは思わないが、流されてきたという感覚は否めない。
(ま、今更だけど)
もし過去に戻る事が出来るなら、色々と選択をやり直したいとは思う。
自分の半分の時間も生きてない少年少女を眺めながらそんな事を考えていった。
そんな彼等と同様に、ヒロキ達も集積所に寝泊まりする事が多くなった。
一ノ関と建設現場との間にあ集積所なので、どちらに向かうにも手頃な事が理由である。
護衛が貼り付いてないと危険という事もあり、当番制で寝泊まりする事も増えていった。
また、運搬だけでなく、作業現場の護衛などもまわってくるようにもなっていた。
人手不足なのでどうしてもあちこちを回される。
ヒロキ達だけではない。
戦闘を受け持つ者達のほとんどが同じような状況になっている。
どこもかしこも人手不足だ。
「作業員だけでなく、こっちも増員してくれないですかね」
休憩中にそんな事を呟く事も出てきた。
「そうだな」
「まあな」
「確かに」
ヒロキの言葉に北川達も頷く。
しかし、その次にこんな事も言っていく。
「でも、入ってきてもな」
「すぐには使えないからな」
「どうせ素人みたいなもんだろうし」
新人の問題はここにある。
数だけは揃えられても、ろくに訓練も受けてないのでは意味がない。
新人研修だけでもやってくれてれば少しは違うが、それもどこまでやるのか分からない。
人手が足りないときは、ろくに訓練すらしてない素人がやってくる事もある。
「そうなると、俺達で色々教えなくちゃならん」
「それが面倒なんだよな」
「まあ、一人二人ならまだいいけど」
そうでない事もあるのが問題である。
頭数を増やす為に大量に素人を放り込み、現地での教育すらままならない事もある。
「今だとそうなる気がする」
「それは怖いですね」
北川の言葉にヒロキはうんざりした顔をした。
「けど、こんな調子だ。
そうなるだろうよ」
「うわ……」
人手不足は深刻な状態になってる。
その事にはヒロキも何となく感じてはいた。
だからこそ増員を求めるような事を口にしたのだ。
なのだが、北川らの話しを聞くに、とてもそれで良いとも思えなくなる。
「なんとかなってくれればなあ……」
都合の良いことが起こるよう願っていく。
「まあ、そう上手くはいかないか……」
数日後、新たに入ってきたという護衛に配属される新人を見て呟く。
北川達が言っていたように、新たにやってきたのは年若い少年がほとんどだった。
一ノ関にてそれらを見たヒロキは不安を抱いていく。
「大丈夫なんですかね、こいつら」
「一応、三ヶ月の研修はやったそうだ。
どこまで使えるようになってるかは分からんけどな」
そう言いながら北川は渡された書類を眺めている。
今回、北川達のところに回されるという者達の資料である。
全部で10人。
ほとんどが中学校卒業の少年だという。
「これ、車に入るんですかね?」
「まさか。
車に同乗するのは一人か二人。
あとは別の車に乗る事になる」
その為の車もやってくるという。
「運転手と機銃手は経験者らしい」
「それはありがたいですね」
「町の間を行き来してた護衛らしい」
経験者というのは確かである。
それだけでも充分助かる。
「経験のない新人は8人。
まあ、どうにかなるだろう」
本当にそうなのだろうかと思いながらも、ヒロキはこれからどうなるだろうと考えた。
そして数十分後。
合流した新人達と顔を合わせる。
見ると本当に若い。
後方の護衛から引き抜かれたであろ運転手と機銃手はともかく、他は10代半ばを超えたばかりといった若さだ。
「よろしくな」
そう言って挨拶をする北川に、少年達も返事をしていく。
その声の若さに驚く。
ただ、彼等が支給されてる歩兵銃とは別に、猟銃を持ってるのが目をひく。
(こっち側で生まれた世代か)
モンスターの蔓延る世界なので、猟銃を持ってるのが当たり前だとは聞いていた。
それを仕事に持ち込んでる者も見てきた。
ヒロキも予備の銃として猟銃免許を取得して、自分の銃を手に入れた。
だが、やはり少年と言える者達が銃を手にしてるのを見ると軽い違和感をおぼえる。
それを持ってなければやっていけない世界なのは分かってるが、それもどうなのだろうと。
難癖を付けるつもりはないが、これらが必要のない平穏な世の中になってもらいたいとは思った。
無理だろうとも思いつつも。
出発にあたり、新人達の車も続いてくる。
やってきたのは、屋根の部分に機関銃が搭載されたトラック。
後ろの二台の部分に弾丸除けの鉄板が取り付けられたガントラックと呼ばれるものだ。
これに新人が6人乗り込む。
なお、機銃手はこのガントラックの車長も兼ねるらしい。
北川の車には新人二人が乗り込む。
かつてのヒロキがそうであったように、雑用兼銃手となる。
変わらないのはヒロキだけで、いつものようにバギーに乗り込む事になる。
これの後部にもう一人乗る事も出来るが、利点よりも面倒の方が多いのでヒロキ単独となった。
他の者達に比べれば気楽なものである。
ただ、車が2台、単純な射撃人数はかなり拡大されている。
これらの射撃の邪魔にならないように、自分が的にならない位置に入っていかねばならない。
そこは頭を使うことになる。
(おまけに新人だし)
銃の扱いにはなれてるし、モンスターへの対処も知ってはいるだろう。
だが、不用意に発砲をする可能性もある。
流れ弾が向かってこないよう願った。
(大丈夫だとは思いたいけど)
こればかりは実際にモンスターに遭遇してみないと分からない。
もちろん、出来れば遭遇せずに全てが終わってもらいたい。
(何もなければいいけど)
いつも仕事に入る時に思っている事である。
この日も例外なく一日が無事に終わるよう願った。
「それじゃ、行くぞ」
北川の声を聞いてバギーを動かしていく。
トラックの後ろについて、護衛対象のトラックの所へと向かった。
22:00に続きが出るはず




