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15話 モンスター駆除、実施において

 移動そのものは問題なく進んでいく。

 モンスターの巣が開けたところにあり、周囲もそれほど起伏の激しい場所というわけでもない。

 車両が移動するのに問題はなく、一同は長い列を作って進んでいった。



 現地に到着後は、まず包囲網形成のために目的地を大きく囲むように移動をしていく。

 先頭を警戒と何かと遭遇した時のために自衛隊が進んでいく。

 その後ろを、参加者による部隊が続いていく。

 大小さまざまな集団の混成部隊は、それでも一定の速度で布陣していった。

 途中、多少はモンスターに遭遇して戦闘も発生したが、大きな問題になる事もなく展開が終わった。

 そして、展開した場所を中心に、探知機や地雷などが設置されていく。



 なお、地雷は一度保有禁止の条約に批准したが、その後、『防衛上やはり必要』との判断から条約脱退。

 順調に保有を続けていっている。

 特に異世界においては、どこからともなくあらわれるモンスターへの対策として、様々な場所に地雷を設置していた。

 そうでもしないとモンスターの襲撃に一々人間が出なくてはならない。

 手間もかかるし、その分危険も増大する。

 もとより人間がまだ進出してない地域でのことなので、人が被害にあう事はなかった。

 そんな所まで用も無いのに出向いて重傷を負う者もいたが、それらは全て自業自得として処理されている。



 そんな調子で包囲網が出来上がり、モンスターの巣窟に突入する準備がととのう。

 さすがに戦車はなかったが、上空からの監視と攻撃のためのヘリコプターや、機関砲装備の装甲戦闘車両が並んでいく。

 長距離支援のための迫撃砲なども陣取り、開始の合図を待っていた。

 よほど強力なモンスターでもない限りは確実に殲滅できる編成である。

 注意しなければならないのは、流れ弾が包囲してる味方に当たることだけだ。

 それを警戒して、包囲部隊は適度な距離を置いてるし、それでも流れ弾がやってこないように塹壕などを掘っている。

 その為の建設用重機すら持ち込んでるくらいだ。

 万端過ぎるくらいに準備を進めていく。



 そんなこんなで三日。

 モンスターの駆除が始まっていく。



「作戦開始!」

 指令が通信機を通してすべての部隊に伝えられていく。

 それに応じて、包囲してる者達は塹壕の中や車両の中に引きこもる。

 流れ弾が当たったり、モンスターが襲ってくることを警戒してだ。

 それが終わると、包囲の各所から司令部への通信が飛ぶ。

 全員、退避完了と。



 退避完了が全ての場所でなされたことを確認してから、突入部隊が進み始める。

 既に上空に飛んでいるヘリコプターは、モンスターの動きをとらえつつ、状況を各部隊に送信していく。

 上空からのカメラと、動体探知機によるモンスターの配置状況が逐一伝えられていく。

 とらきれないものも中にはいるが、それは最初から想定している。

 大切なのは、大雑把でもよいからモンスターがどのように分布してるかが分かることである。

 それを確かめ、突入部隊への指示が出されていく。

 なるべくモンスターを効率よく倒すよう移動させるために。



 迫る装甲戦闘車両を見て、モンスターは何を思ったのだろうか?

 人間と意思の疎通が出来ないのでそれは分からない。

 ただ、やってくる自衛隊の装甲車を見て、その瞬間に機関砲弾で吹き飛ばされることを望んではいかなっただろう。

 射程に入るや否や次々に打ち倒されていくモンスターは、ほとんどが痛みを感じる間もなく絶命していった。

 最新の火器管制・射撃統制装置を搭載している自衛隊の戦闘車両は、望遠の照準にとらえたモンスターを次々に葬り去っていく。

 あわてて逃げ出すモンスターもいたが、振り向くより早く、走り出すより前に撃ち抜かれていく。

 ほとんどのモンスターが、何も出来ない遠距離から一方的になぎ払われていった。



 それらを機関砲の砲声で、あるいは装甲戦闘車両が奏でる地響きで察したモンスターもいる。

 何が起こってるのか分からないまでも、何か危険な事が迫ってると察したものもいる。

 一目散に逃げ出そうとしたそれらは、生存本能が優れてるといえるだろう。

 だが、文明が生み出し戦闘兵器は、そんな本能と人間以上の身体能力を凌駕していた。



 上空を旋回しているヘリコプターは、逃げ出そうとするモンスターをしっかりとらえている。

 包囲網の一角にあけられた出口。

 砲弾などが飛んでも大丈夫なように設置された抜け道。

 そちらに砲に先回りして、上空から機関銃を発射していく。

 ヘリコプターの後部座席に設置された機関銃が、走るモンスターに向けて弾丸をあびせていく。

 鉛の雨を全身に受けたモンスター達は、これまた地面に倒れて絶命していった。



 そして、包囲網へと向かっていったモンスター達も。



「来たなあ……」

 やっぱりこうなったかと思いつつも、車の中から銃口を突き出す。

 襲い掛かってくる突入部隊から逃げるため、四方八方に逃げ出すモンスター。

 それらの大半は突入部隊が片付けるのだが、何匹かはやはり逃げてくる。

 事前に聞いてはいたし、全てを突入部隊で片付けられるわけもないとは予想はしていた。

 しかし、実際に自分のところにやってくると、面倒だという思いがわいてくる。

「そうボヤくな。

 護衛の時に襲ってくるよりは数が少ないんだ」

「それはそうですけど」

 それでも辛いと思うのが人情である。

 確かに数は少ないし、周囲の者達との連携も取りやすい。

 地雷なども設置してあるので、接近されても撃退はしやすい。

 だとしても、モンスターが迫ってくるのは精神的に辛いものがある。

 倒せる自身はあるが、万が一何かがあったらどうしょうなどと思ってしまう。

 いらぬ心配だとは思うが、不測の事態というのは、思ってもいなかった時に起こるものだ。

 だから、最後に至って全てが決定するまで不安であった。

 その最後を最善の形で終わらせるために、狙いをつけて引き金を引く。

 既に慣れた動作で狙いをつけ、銃弾を浴びせていく。

 飛び出した弾丸は狙い通りにモンスターに当たっていく。

 また、周囲にいる者達も迫るモンスターに射撃を開始していくので、目の前はすぐに綺麗に片付いていった。

 装甲車が通り過ぎていくまでそれは続き、やがて静かに終わっていった。

「……この周辺のモンスターは片付けたそうだ。

 あとは後ろへの警戒を厳重に、だと」

「了解でーす」

「分かりました」

「はい」

 仁科、安西と共にヒロキは片付け終わった包囲の中ではなく、油断が出来ない外側に目を向けていった。



 それから更に時間が経過した頃に、モンスターは殲滅された。

 大小合わせて数百はいたはずのそれらは、数時間もたたずに壊滅した。

 死ねば消え去るモンスター達は、文字通り跡形も無く消滅した。

 後には数多くの核が残り、それを参加者総出で回収していった。

 これらは一旦自衛隊があずかり、参加者に分配されていく。

 中にはこれらを懐に入れる者もいるが、それらは全体からすれば少数である。

 それを殊更咎める者もいない。

 全部を完全に把握する事は無理だし、一つ一つを探すのも手間がかかる割りに意味がない。

 何より、そうやって猫ババしたとしても手に入るのはせいぜい数千円程度である。

 向きになって我が物にするほどでもない金額だ。

 その為に労力を費やすのも面倒だというのが大半の意見だった。

 そもそもとして、駆除終了後の核回収は報酬としての提供が目的ではない。

 回収したものを参加者に分配したあと、それを研究機関が買い取りはするし、それで多少は報酬としようという考えはある。

 しかし、任務本来の仕事ではない。

 参加者への見返りを少しでも出そうというのと、その上で研究対象として確保したいというのは二次的なものだ。

 一番の理由は、放置することによる問題があるからだ。

 モンスターを引き寄せるという、最悪の問題が。



 モンスターは倒したモンスターの血肉ではなく核を食っていくのが確かめられている。

 動植物を食む事もあるが、それは他のモンスターを倒せない弱いものが多い。

 強力なモンスターは他のモンスターを食って生きてるものが多い。

 なので、核の放置は餌をモンスターに提供する事にもなる。

 回収するのはそれを防ぐという意味もあるにはある。

 放置してモンスターが集まって新たな群が出来上がっても困るのだ。

 なので、そうならないようにモンスターの餌となる、モンスターの核を回収する。

 それが回収の意義である。

 誰かが勝手に自分のものにしても、それがそこらに放置されないのであれば問題は無い。

 持ち帰って小遣いにするというなら、核は確実に回収された事になる。

 モンスターがそれを食べて腹を満たすわけではない。

 結果を見れば、本来の目的は十分達成できている。

 大げさに問題視するほどではないと考えられていた。



 それでも大半の参加者は正直に回収した核を提出する。

 あとで公平に取り分を渡されるので文句は無い。

 それよりも、核の回収中に取り合いになって喧嘩になるほうが問題だった。

 そうやって無駄な争いをするよりは、正直に申告してまだしも公正な取り分をもらったほうが面倒が少ない。

 不当な収入への忌避感というのもあるが、取り合いになった時の騒動が面倒という理由が大きい。

 欲の皮の突っ張った連中がそれで殺し合いをしでかした事もある。

 以降、あえて厳粛に取り扱うのではなく、適当にほどほどにやっていくようにしていた。

 これはこれで上手くいってるので、誰も特段文句は言わないでいる。

 無駄に騒動に巻き込まれたくないという思いがそうさせていた。



 ただ、何はともあれ駆除は終了した。

 数日に及ぶ作業を終えて帰還した者達は、そのままいつもの日常へと戻っていく。



「明日からまた仕事だ」

「分かってますよ」

「面倒だ」

「楽が出来るといいんですけどね」

 いつもどおりに北川の言葉に、仁科・安西が応え、ヒロキが締めていった。

 明日は更新一回だけだと思われる。

 17:00予定なのでよろしく。

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