妄想死傷日記 ー登下校ー
〜水曜日〜
朝、バスに乗った。
隣におばあさんが座った。
おばあさんは日傘を横にして膝の上に置いた。
日傘の先端は私の腹のほうを向いていた。
もし、今、バスが横転でもしたならば。
日傘の先端は私の腹に深々と突き刺さり、横転の衝撃とおばあさんの重みで、私は今まで頬杖をついていた窓枠の窓ガラスに頬の目を割かれる。私は救急車のサイレン聞きながら、目から頬から流れる液体を感じる。
おばあさんはの日傘の先端を見ながら、痛いなぁなんて思って腹をさすり、頬杖をやめる。
おばあさんがバスから降りた時は少し安心した。
〜金曜日〜
学校からバス停に着くまでには、交通量の多い道路を一度横断しなければならない。
信号機が付いていて、安心して渡れる横断歩道は一つしかなくて、この横断歩道は少し遠い。
他の横断歩道は信号機が無いから、どのタイミングで渡っても良いのだが、交通量が多いため滅多に渡れない。
一回だけ、車が来てないと思って渡ろうとした瞬間、目の前を車が通過したことがある。
もしあの時、一歩踏み出していたら。
車に私の体が衝突するだろうけど、きっとそこまで酷く飛ばされはしなくて、軽く飛ばされバランスを崩して倒れ込む。
そして、ブレーキがあと少しで間に合わなくてタイヤが私の体に乗り上げて止まるのだ。うつ伏せに倒れた私の横になった背中あたりに車の重圧がかかって、左半分の肋骨は折れて私の内臓を傷付ける。
きっと中でグシャッとなる。乗り上げて止まってしまった車の運転手はどうしていいかわからなくて、そのまま救急車を呼ぶ。私の肺は片方だけ潰れて、変な音を上げながら、必死に息を吸って意識を失うのだ。
肺が潰れるのって痛そう。
肋骨が折れて内臓ぐちゃぐちゃにされるなんて、どんな感じなんだろう…。
私はそう思いながら今日も信号機が付いている横断歩道をドキドキしながら渡る。