日本食
僕らの班は、日本食についてプレゼンすることにした。
須藤曰く、他の班はカラオケだとか漫画だとか。
だから、敢えて他の班は選んでいなかった食べ物系にしよう、という話になったのだ。
「日本食と言ったら、二人は何が思い浮かぶ?」
「寿司!」
和花の問いに、即答した須藤。
「言うと思ってました」
苦笑して、和花はルーズリーフに『寿司』とメモする。
「和希は? 何かある?」
僕に、ルーズリーフを渡しながら聞いてきた。
僕は少し考えてから、シャーペンを動かした。
『茶碗蒸し』
「あぁー、確かに日本食だ」
知っていても、いざとなると出てこないものがある。今回の場合、それがこの茶碗蒸しだったらしい。お茶漬けだって立派な和食だが、これが思い浮かんだ人はあまりいないと思う。
「他には?」
僕はもう一度シャーペンを走らせる。
『うどん』
「あ、うどん! 私うどん好きなの!」
好物を忘れてどうする。
「そうだ! 和菓子ってどう?」
和花が目を輝かせて言った。
和菓子が好きなのだろうか。
「日本食でしょ。『和』ってついてるし」
須藤が言ったそれを聞いて、和花は嬉しそうににっこり笑った。
そんな彼女の姿を見て、僕の胸が波打った。これ以上直視できなくて、目をそらす。
「それじゃあこの中から三つ選ぼう」
「一人一つ?」
和花の言葉に、須藤は頷いた。
話し合った結果、僕がうどん、和花が和菓子、そして須藤が茶碗蒸しを担当することになった。
「茶碗蒸しとか何書けばいいわけー?」
さっそく、須藤が文句を言う。
「りっちゃん次第だよ。いいものになるかどうかは、あなたのセンスが問われますね」
和花が言うと、須藤はため息をつきながら机に突っ伏した。
そんなに嫌なら、茶碗蒸しを選ばなければよかったのに。