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これが僕

 どうして僕はこうなったんだ。











 どうしても話したいのに、話せない。

 身体が、話すことを拒むのだ。











 彼女は他とは違うのに、なぜ彼女とも話せないんだ。











 こんなにも自分の病気を恨むのは、生まれて初めてかもしれない。












*゜。












 都会でも田舎でもない。僕はそんな所に生まれた。


 母親は、僕がまだ幼かったときに亡くなった。父親の消息は不明。そして現在は、祖母と二人暮らしをしている。


和希(かずき)、おはよう」


 いつも声をかけてくれる、同じクラスの和花(わか)


 学校では、全く声を発さない――いや、発せない僕にも、毎日笑顔で接してくれる。

 僕は、そんな彼女にいつからか恋をした。


「和花ー、こっちにおいでよ。どうしていつもそんなやつの相手なんかするわけ?」


 クラスメイトの女子たちが、僕を睨みつけながら和花の腕を引く。


「えっ、でも和希は優しいよ?」


 僕とクラスメイトを、困ったような顔で交互に見ながら言った。



 僕が、優しい……?



 話したくても話せず、彼女の話にろくな反応をすることもできない僕の何処を優しいと言っているのだろうか。


「もう、和花はお人好しなんだからさー……」


 クラスメイトの女子のうちの一人が、はぁ、と溜息をついた。

 そして、彼女たちは僕をもう一度睨みつけながら小さく舌打ちをすると、和花の腕を引いて、強引に僕から遠ざけさせた。


 悲しい。

 だけど、仕方がない。

 ここでは話せないのだから。


 それでも、彼女と話がしたい。

 お礼も言いたい。


 それから、自分のこの気持ちも伝えたい……


 はじめ、僕も祖母も、僕はただの人見知りなのだと思っていた。しかし、いつまで経っても人前で話せず、おかしいと思い病院へ行くと、場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)と言われた。人見知りと誤解されやすいが、それとは違って症状が長期に渡って続く病気らしい。


 話せないなら仕方がない、と諦めていたが、そんなときに和花が現れた。どんなに話せなくても、どんなに冷たい反応をしても、彼女だけは笑顔で接してくれる。


 和花の存在があるから、今僕は話そうと努力することができる。


 彼女のために、頑張ろうと思った。

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