第一章
アニメの世界に移転しました
第一章
ズゾゾゾゾゾッ。
すさまじい音と共に、俺は目覚めた。
ここはどこだ。
とてもフワッフワッな布団に寝ているように思えるのだが。
コンコンコンッ。
「入りますよ」
「はい」
誰か来た。
「ルシル様、ようやく起きましたか」
なんだか、聞いたことのある声だ。
それにしても俺の名前は、赤城仁。ルシルって名前は最近やってたアニメの、俺戦ぐらいでしか聞いたことないな。
それに、あの声は俺戦のパリスの声にそっくりだ。
「もう朝ご飯の準備は出来てますよ。早く着替えてくださいね」
俺は、布団の横に置いてあった洋服に着替えて、部屋の外へと出た。
待てよ、ここ俺戦の世界とそっくりだ。
その時、俺は確信した。
俺は、アニメの世界にやって来てしまった。
って、言うか俺はなんでここに来たんだ。
確か俺は、朝比奈と大路と遊んでたら、不良たちに絡まれて・・・。
そっからの記憶が・・・無い。
なんで大事な時の記憶が無いんだ。
でも、この世界で生きるとしても俺はどうすればいいんだ。
一応俺戦観てたから、家だったり、街並みはほぼ覚えてるけど、戦闘系アニメなんだよな。俺、戦ったりするの無理だし。
ヤバイ。不安でいっぱいだ。
「ルシル様、どうしたのですか」
この人は、ルシルの家来のバリーだ。
「なんでもないです。今から食堂に向かいます
ね」
俺は、アニメの中で約200メートルあると言われている廊下を長々と歩いて行った。
そんな中、ある部屋からこんな声が聞こえた。
「あの人は本当にルシルなのですか。髪の色も変わってしまって」
確かに、俺はルシルではないし、ルシルは茶髪で俺は黒髪。いつの間にか俺戦の主人公になってしまったのだ。
「そうであろうと、ルシル様はルシル様です。気にせずにいきましょう」
パリスのおかげで俺が偽物であることは、回避できたが、母のリリーがこれからなんというかはわからない。
ガラガラッ。部屋の扉が開いた。
「ルシル、今日は起きるのが大分遅かったわね」
「お母様、おはようございます」
そういえば、しゃべり方も性格もルシルに似せないとだな。
俺はまた、この長い廊下を歩き始めた。
ようやく食堂に着くと、ルルナード家に仕える人々が俺を待っていた。
「ルシル様、おはようございます」
俺はアニメと同じように、長いテーブルの王様席にすわった。
次々に料理が運ばれてきた。
食べたことのない世界3大珍味や分厚いステーキ、フレンチトーストなど朝から盛りだくさんだった。
フォークやナイフを使うのは、慣れていなかったが、慣れてますよって感じを醸し出して食事をしていた。
「ごちそうさまでした」
ぺろりと、朝ご飯を食べてしまった。
もうお腹がいっぱいだ。
とりあえず部屋に戻ろうと思うが、これから俺はどうすればいいんだ。
「ルシル様、今日はこの間剣が壊れてしまったので、新しい剣を調達しに行きます。準備の方よろしくお願いします」
「了解いたしました」
教えてくれるんだ。よかった。
食堂から出て、長すぎる廊下を歩き始めた。
っていうか、毎日こんな長い廊下歩くのかよ。
これも勇者の道のりってか。アニメで言ってたけど、さすがに200メートルってのは一言で言うと「無駄に長い」。
なんでこんなに、長いのだろう。
いいことを考えた。
この廊下の長い理由をここにいるあいだに調べて、アニメの世界から日本に戻ったら、ネットにこの廊下の秘密の記事を載せたら、俺はアニメオタクの中で有名になれるかもしれない。
あれ、俺って日本にどうやって戻るんだ。
もしかして、帰れないってことは、な・・・い・・・よな?
うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
ドタンッ。
その時俺は、倒れた。
「何らかの衝撃なので、倒れたんだと思います」
「ルシルは、大丈夫なのですか」
「そのうち、起きますので」
頼れなさそうな医者の声とリリーの声が聞こえて、俺は起きた。
「ルシル、あなた大丈夫なの?」
「ご心配をおかけしました」
なんであのとき、初歩的なことに気付いてなかったんだろう。
それから、1週間が経った。
おいしいご飯を食べて、美しい街へ出掛けて、充実した毎日を過ごした。が、一方的に日本に帰れる気がしない。
ここは、アニメの世界。異次元。俺の住む地球、世界、日本、に帰ることはできるのだろうか。
帰る手段もわからない。どこからどうやって、帰ればいいのだろう。
今の俺には不安しかない。
どの人もアニメの中で観て、その人の接し方も、ルシルがどんな人なのかも、俺が演じているルシルじゃない本物のルシルしかわからない。
1からリセットされれば、自分でこの物語を変えることができるのだろう。
リセットして、物語を塗り替えてしまいたい。
でも、そうすることも出来ないのだろう。
「あっ、あなたはルルナード家の、ルシルさんですか?」
「はい、ルシル・ルルナードです」
だ、誰だ。
俺戦好きの俺がわからないってことは、まだアニメにでてきていないキャラなのか。
「アリナ・クルドーって言います。魔法を扱っています」
「なんで、僕の名前知っていたんですか?」
あっ、聞いちゃった。もしすごい親しみのある人だったりしたらどうしよう。
「えっ、なんでってルシルさん2週間ぐらい前会ったじゃないですか」
まだ俺がここにいない頃に会ってたんだ。
名前教えてくれてたってことは、その時にルシルだけ名前教えて、ほんの少し会ったぐらいかな。
「でも、ほんの少し会っただけなんですけどね。もう、時間なんで行きますね。また会えたらいいです」
なんだかとても幸せだな。
また会えたらいいな。
後は、装備は全部調達してきたから、この間倒れて調達できなかった剣だけか。
確かここの道をまがった、大路屋って名前のみせだったかな。
大路・・・あの時一緒にいたんだから、ここの世界に来てないかな。
「いらっしゃいませー」
気勢のいい声だ。
「どんな剣にしますか」
ちょうど店員と目があった。
お・・・お・・・じ・・・。俺の目の前にいるのは、大路だ。
「あれ・・・赤城?」
「大路、大路なんだなっ」
なんだか、涙が。
俺、一人じゃなかったんだ。
第一章 終了
「アニメの世界に移転しました」を楽しんでもらえましたか?
まだ、連載を続ける予定ですが、だいぶ時間がかかると思います。
もしよろしければ、コメントなどしてください。全力で返しますので、悪い点や良い点をたくさん書いてください。
これからもよろしくお願いします。