生徒会長
あの日から3日程経ち、、、。
俺は現在進行形で、岡水の熱い視線を無視して生活している。というか、岡水はよく分からない。
すぐにいちゃもんを付けてくる数学の教師に東大レベルの問題を出されて、逆に問題の間違いを指摘する癖に、国語の漢字テストは0点。かと思えば、漢文は満点。
謎過ぎる。
当然、クラスに馴染んでいないかと思えば、、、。
「おい、岡水ー。今日の放課後開いてねーの? カラオケ行こーぜ」
「うん、いいよ」
「純真君来るなら、あたしも行こうかなー」
「あたしも行く!」
ちゃっかり、クラスの中心に居て、人気者であったりする。というか、声がうるさい。もう少し周りの迷惑を考えられないのだろうか。
本を読みつつ、こっそりと溜息を吐く。そのまま気を取り直して、本を読み進めようと視線を戻すと、ふと影が落ちてきた。不思議に思い、視線を上げると、岡水が笑顔で目の前に立っている。しまった、と内心慌てるが、もう遅い。
「ねえ、月城君も来ない?」
「、、、、、、」
黙秘権を行使していると、俺達のやり取りに気付いた1人が「何してんの?」と近付いていた。
「いや、月城君もどうかと思って誘ってみたんだけど、、、」
「あー、どうなんだ? 月城」
しょうがない、クラスの面子との関係はある程度保っておかないとやり辛い。
「あー、あんまり遅くならないなら、、、」
「平気だけど」と続けようとしたところで放送が入る。
『2年B組月城琉皇。放課後、生徒会室まで来てください』
「、、、、悪いな、無理だわ」
「お、おう。じゃぁ、また」
久し振りの“お呼び出し”に今日2度目のため息を吐く。つくづく、今日はついてない。
俺の様子や、クラスの態度を不審に思ったのだろう。岡水がさっきのクラスメイトに声を掛け、尋ねる。クラスメイトの奴は言いづらそうに小声でボソボソと説明を始めた。残念だな、全部聞こえてるよ。心の中で悪態をつきながら、窓の外に目を移した。
それでもやっぱり声は聞こえるわけで。
「月城は“お気に入り”なんだ。生徒会長の」
「へぇ、、、生徒会長ってそんなに偉いの?」
「知らないのか? ここの理事長、世界でも有数の財閥、西宮財閥のトップ、西宮和彦。生徒会長の父親なんだぜ? それに生徒会長だって超エリートで、人望も厚い。あの人に歯向かえば、この学校では生きていけない」
「、、、、、、ふーん。それはそれは、、、」
岡水はそう言いながら、俺に視線を送ってくる。その視線を背中に感じながら俺は、放課後に備えて気力を蓄えようと机に突っ伏し、睡眠に入った。