転校生 岡水純真
キーンコーンカーンコーン、、、
学校に鳴り響くチャイムを合図に、別の席に座って、世間話に花を咲かせていた奴等も、部活の朝練に勤しんでいた奴も、廊下をのんびりと歩いていた奴も、自分の席に戻っていく。
そんな一ヶ月振りの風景を、ぼんやりと一番後ろの窓際の席で眺めていた俺は、読んでいた本に栞を挟み、パタンと閉じると、ふと窓の外を見た。校庭の木々が八月のギラギラとした陽の光を浴びて、まだまだ青い葉を光らせている。
それをしばらく見つめていたが、ふと、教室がいつまでも騒がしいのに視線を前へ向けると、そこには担任の若く日に焼けた男の教師と、見慣れない制服を着て、興味深そうにクラス全体を見渡す茶髪のイケメンが立っていた。
「どうも、岡水純真です。天正大学付属高校から来ました。目標はここの頂点を取ることです。そこらへんのつまんねー奴と絡む気ないから、そこんとこよろしく!」
変な奴。
おそらく、全員の中で共通した、岡水に対する印象だろう。 授業中、ふざけた一部の生徒が一斉にクラッカーを鳴らした時ですら、物怖じせず、飄々と、「なんだ? 今日は俺の誕生日じゃないぞ〜?」と笑って言ってのけた担任ですら、口をポカンと開けている。
岡水はそんな様子を気にも止めず、真っ直ぐに何故か俺を見ている。まるで俺の中の何かを見透かす様な瞳に居心地が悪くなった俺は、ふぃ、と目を逸らした。しかし、次の担任の一言でその行動は一切無駄になる。
「ま、まぁ、席は月城の後ろだ。月城ー、手上げろ」
「あ、はい」
俺はギリギリで舌打ちを止め、手を挙げる。岡水は、真っ直ぐ歩いてくるとそのまま指定された席へ腰を下ろした。