Trip.20
第一部隊が任務を言い渡されたと他の部隊にも話が回されたのは、数日前のこと。
そして今、第二部隊も任務の最中だった。
「…クソっ…多いんだよ雑魚が…!」
ヤナギもまた、妖魔と戦っていたが、いくら妖魔を討伐してもキリがない。
「第一部隊の露払いってやつか、気に食わねぇ…」
舌打ちをして、また妖魔を斬っていく。
魔法を使うよりもこうして剣で戦う方が得意なヤナギは、ある程度近づき、少しずつしか妖魔を倒せない。
そのため、徐々に疲労が蓄積されていた。
「…この辺りには…もういねぇな…」
場所を移るか、と歩き出そうとした、その瞬間。
「ヤナギ…っ!!」
スモモの声が耳に入ると共に、ヤナギの身体が突き飛ばされる。
「…?!」
「ぅぐ…!!」
「スモモ!」
視界の隅にもとどめていなかった妖魔が針を吐き、その針がスモモに刺さっていた。
「…っく…」
無詠唱とはいえスモモの放った炎魔法で妖魔が焼き尽くされる。
その後は、妖魔が襲って来ることはなかった。
「一帯の妖魔は、討伐出来たから…任務完了で、良さそう…だと…」
スモモの身体が傾く。
「おい!」
倒れ、気を失ったスモモの症状にヤナギは覚えがある。
毒だ。
先ほどスモモに突き刺さったのは毒針だったのだ。
「あの妖魔…毒持ってやがったのか!」
あっという間にぐったりとしてしまったスモモを抱き上げ、苦虫を噛み潰したような顔をする。
任務を早々に切り上げて帰投すると、ヤナギはすぐさまスモモを医療室に連れて行った。
「これは…最近出没しているという妖魔の毒ですね」
「あー?そりゃ任務で毒食らったんだから分かるだろが。解毒出来んのか」
「解毒の魔法が効きますから」
寝台に横たえられたスモモに、解毒魔法がかけられる。
「…あとは、ゆっくり休めば良くなると思われますが…」
「そうか」
「!な、何をしているのですか?!」
再びスモモの身体を抱き上げたヤナギに、医療班の青年が制止をかけようとする。
「あ?決まってんだろ、部屋で休ませるんだよ」
スモモが目覚めた時、この忙しい医療室にいたら、おそらくまだ疲労が残っていても起きて出ていくだろうと判断してのことだった。
それが分かる程度にはヤナギとスモモは長い付き合いであると自負している。
ヤナギの隣室であるスモモの部屋は、女性の部屋にしては殺風景だ。
休みの日に片付けてはいるものの、乱雑に脱いだ服などが落ちていることもあるヤナギの部屋と違って、常に片付いており、必要最低限のものしか置いていない。
寝台にスモモを寝かせ、ヤナギはそのまま任務の報告書を書く事にした。
彼女が起きたら、毒から救われた礼と、無茶に対する叱咤をするために。
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