Trip18.
ある日の放課後。
人気の少ない廊下には女子生徒が二人向かい合って立っていた。
「だから…早くしないと本当に死ぬんだよ」
「何言ってるのぉ?死ぬって、どこも悪くないしぃ~」
焦燥感を滲ませて詰め寄る女子生徒は、セミロングよりも少し伸びた髪を適当なハーフアップにまとめており、許可されている最低限のヘアアクセサリすらも着けていないことから、外見には無頓着であることが分かる。
また、着けられた校章は三年生のものだ。
一方、間延びした口調でどこか馬鹿にしたような表情をした彼女は放課後であるためか、校章もなく、シャツの襟元もだらしなく開けられており、学年は分からない。
特徴的なのは愛らしい風貌に、それに似合うウェーブのかかった頭髪。
「どこが悪いとかじゃなくて…」
「私、頭のオカシイ人に付き合ってる暇ないから」
「ちょっ…」
ウェーブの髪を揺らして彼女が立ち去る。
「…はぁ…」
「ここにいたのか」
肩を落としている女子生徒に近づいてきたのは、冷淡な雰囲気の男子生徒。
スクエアタイプの眼鏡からは切れ長の目が覗いている。
「どうした?いつも能天気なお前とは思えない顔だぞ」
「…別に。それよりまだ帰ってなかったんだ」
「……荷物があったから、それなら一緒に帰ってやろうと教室で待っていても戻ってこなかったから探しに来てやったんだ」
「先に帰っててもいいって言ったのに」
「…本当にどうした。いつもなら"偉そうに言うな"とか"寂しがり屋か"とか言い返してくるくせに…今のお前は、何というか…初めて見る」
眼鏡の位置を直しながらも、眉間には皺が寄せられている。
「現実ってシビアだなー…って思うと、私だって少しはヘコむよ」
「何があった?さっきすれ違った女子と関係があるのか?」
「まぁ、うん…そうだけど…」
「分かった」
踵を返そうとする男子生徒。
「ちょっと待って!何する気?」
「何をしたかは知らんが謝らせる」
「は?!」
「俺のものに俺の見たことのない顔をさせたんだ。当たり前だろう」
「…いや、長年の付き合いでも落ち込まされたことないから当たり前だよね。それに悪いのは勝手に落ち込んだ私だから、何もしないで」
「……」
「本当に何もしないで。お願いだよ」
「…分かった。お前がそこまで言うなら、俺は何もしない」
「うん。じゃあ、帰ろっか。探しに来てくれて、ありがとね」
彼女の顔はまだどこか元気がなかったが、ひとまず笑みを作れるようにはなっていたので、彼は今はそれでいいか、と寄せていた皺を消して歩き出した。
書きだめ分はとりあえずここまで。
何やら新キャラが出現しましたね。
彼女は一体何者なのか。
といったところでしばらく更新停滞します。
では、読んでくださりありがとうございました。




