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Trip6.

保健室に李を運んできたものの、養護教諭がいないことに気づいた夜凪は大きく舌打ちをした。


「…夜凪…?」

体調の悪さがここにきて自覚せざるを得ないものに変わっていた李は、ぼんやりとした目で夜凪を見上げる。


「何でもねぇ。とりあえずベッドは空いてるし使えるだろ」

手近なベッドに李を横たえると、保健室の棚を物色し始める。


「クソ、体温計どこだよ…」

苛立った表情でウロウロと保健室内を歩き回り、棚を開けていく夜凪。

普段はいくら怪我をしても保健室など出入りしないので全く分からない。


かといって体調が悪く、今もベッドでぐったりとしている李に聞くのは憚られた。


「…ぇ、ここ保健室よね…?」

扉を開けた体勢で固まっているのは、まさに留守にしていた養護教諭の御幸真沙美だった。


「あ?」

「…えぇと、信斗君?何をしていたの…?」

「……いや、アンタが逆に今の今まで何してたんだよ」

恐る恐る聞いた御幸に半目で答える夜凪。


「…夜凪、失礼だから…すみません、先生…少し、私の具合が悪くて…夜凪が体温計を探してくれていたんですけど…」

「安土さん?あら、本当に顔色悪いわね。体温計はこの引き出しに入ってたのよ」


事務用デスクの引き出しを開けて出してきた体温計を李に渡す御幸。

しばらくして体温の測定が終わる。


「…うーん…平熱は…あまり高くない方みたいね」

受け取った体温計の数値を見て、普段のデータと照らし合わせている。


「微熱があるみたいね。顔色も悪いからひとまず寝たほうがいいと思うけど…保護者の方に連絡は?」

「…連絡はしなくても、大丈夫です…少し休んだら、帰れますから」

「そ、そう…」


李がベッドに横たわり布団を被ると、どこからか椅子を引っ張ってきた夜凪がカーテンを閉じてそこに座る。


「親父さん今日も遅ぇのか」

「うん…そう言っていたと思う…」

李は幼い頃に母を亡くして以来、父子家庭だ。

父子家庭は色々と苦労が多いが、それでも父は毎日遅くまで仕事をして、再婚もせず、男手一つで李を育てている。


「…んじゃ、連絡もつかねぇよな」

そのことを知っている夜凪が、首を傾げて頭を掻く。

これは困っている時の夜凪の癖だった。


「う、ん…ごめんなさい…」

「何で謝んだよ。眠ぃのか?」

「少し…」

「なら、寝ろ。寝たら荷物持ってきてやる」

「そう、する…」


目を閉じて寝入った李。

その時、布団の中で、手の甲にある痣の花びらが一枚消えたのだが、今の彼女が気付くはずもなかった。

初日までに書き溜めていた分はここで終了です。

読んでくださり、ありがとうございました。

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