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Trip4.

朝。

五人が再び自分自身の意識を取り戻した時、彼女たちは変わらず杏子の家だった。


「…おはよう…」

「あー、おはよ」

「夢…だったの?」

「うーん…ん?」

「どうかした?」


自分の手の甲を見て首を傾げる葵を椿が覗き込む。


「これ…葵の花、だよね…」

ちょうど手の甲全体に、花の形をした痣が現れていたのだ。


「ホントだ…って私の手にもある。これは…椿みたいだけど」


他の四人にも同様に花の形の痣があった。

花の種類はそれぞれ薺、杏、李、葵、椿と違っていたが、名前と一致する花であることと5枚の花弁であることは共通していた。


「でも確か、これ以上の枚数がある時もあるよね?」

「あの声が数は五、って言っていたのと何か関係があるのかも」

痣を見て首をかしげていた椿に李が返す。


「っていうか、この痣って他の人にも見えるの?」

「……見えるんだったら」

「ん?」

杏子が永絆の小さな呟きを拾う。


「見えるんだったら、絶対紅祢に見られないようにしないと…」

「…ああ…仁科、かなりの心配性なんだっけ」

「もはや保護者だよ保護者」

絶対怒られる、と顔を青くする永絆に杏子が納得したような表情で言うと、葵が交ぜっ返す。


「葵とは逆だね」

「まぁね…って誰が保護者か」

椿のからかいに葵がノリツッコミを入れる。


「あ…私も、見られたらまずいかも…誰にやられたって始まりそう…」

そう言いながら表情を曇らせる李。


「へぇ、信斗もそういうとこあるんだ」

「中学の時に実際一度あったの。ただ注意力散漫で転んじゃって、痣作っただけだったのに、何度説明しても“本当なんだな?”って…」

「怪我だけは心配するってことか…男らしいじゃない」


ともかく、と朝食を摂った五人は分かったことを整理してみることにした。


「まず…おまじないをすると、あの黒い空間に送られる、んだよね?」

「そこで、魂と魄を別れさせて、魂だけが異世界に運ばれる…その間おまじないをした人は眠っている状態になる…と」

「そして現実世界に一度戻ってくると、形は違えど痣が出る…こんな感じかな」

「…そういえばさ、向こうの世界って見た目と基本的な性格だけは同じような人、多かったよね」

「うん…そうだけど、それがどうかしたの?」

「で、向こうの世界は魔法があって、妖魔って呼ばれる怪物もいて…割と危険な世界だったよね」

「あっ、魔法がある世界だったら…火傷や凍傷を負って見つかった人って…」

「向こうの世界に行って、魔法で殺された…?」

「そっか、魂魄のうち魂が入った人が死んでしまえば、魄だけになった身体は意味がないんだ」

「精神による接続も切れて、こっちでも死んじゃった…ってこと?」

「まだ分からないけど、その可能性はあるんじゃない?」

「……でも、遺体が何ともなってない人はどうなんだろう…」

「あ、そっか…」


再び降り出しに戻った話し合い。


「んー…でもま、ここまで分かったんだし、ひとまずはいっか」

「うん。それより、亡くなった人の人数と私たちの無事を考えるとパラレルワールドに行くのがあれきりのはずがないし…これからもっと多くのことが分かるにしても、寝るときは覚悟して寝たほうがいいのかも」

「…真実を知るための対価、って感じかな。ま、死なないように気をつけようか」


うん、と頷きあって、彼女たちはこれから始まるであろう異世界と現実の往復生活に対して思いを馳せていた。


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