3:純粋……?
ぼんやりと窓の外を眺める。
外では別のクラスの男子らが体育でサッカーをやっていた。
「あ、」
誰かが思い切り蹴飛ばしたボールがそのまま相手のゴールにイン。
そして盛大なドヤ顔とガッツポーズを決めた。
よっぽど暇人なんだろうな
と、遠目に思う。
手元の問題集はもうとっくに終わっていて、授業が終了するのを待っている。
隣では定規とコンパス……私の斜め前の人から貸してもらったらしい。
そこにはシールで〝御菩薩池〟と記されている。
幾何の授業で作図が出るってのに他人のを借りるっていうのもどうかと思う…。
「ホズミさん? 」
「ん? 」
目の前の熊野御堂が声をかけて来た。
クラス一の成績を誇る優等生。というのが妥当だろう。
この私に何か用でもあるのだろうか?
目をそらさないまま、でも話さないまま、1分が経過した。
「なに? 」
「…」
真顔のまま見つめて来る。
自分から話しかけて来たっていうのになんなんだ……。
「うん、ありがとう」
「え、なにが? 」
「あなたを小説の主人公にする。」
そういえばこの女は携帯小説を書いている。
常にランキング入りするという恐ろしい文才の持ち主。
「ちなみにどんな? 」
「まだ恋を知らない純粋な女の子が知ろうとする話。」
「え、そんな人に見てたの? 私のこと。」
「いくら氷の女といえどもその瞳は純粋だわ」
クマノミドウは体制を元に戻すとまた勉強をしはじめた。
……私が?