最終案
「そうか…。かつて大魔王バグゾールを何代にも渡って封印してきた東方の島国に住む仙人の一族がいると風の噂で聞いたことがあったが、その一族の末裔がキミだったか」ユークは珍しく神妙な面もちで一人頷いた。彩菜は間髪入れず説明を継ぎ足す。「そう。だからなんとしてもこの私がバグゾールを封印する必要があるの。それで勇者である貴方に頼みがあるの。お願い、この闘い手伝ってくれない?バグゾール一人ならまだしも親衛隊が厄介なのよ。貴方のソウルイーターなら大抵の魔物は一撃かニ撃で倒せるんじゃないの。バグゾールは私が倒し封印するから親衛隊を倒すのに協力して欲しいの」切実に語る彩菜にユークは彩菜が思いもよらない答えを返してきた。「親衛隊を協力して全員ぶっ倒すのはいいけどさ。バグゾールってキミの一族にしか封印出来ないのかい?俺はこのソウルイーターで奴を束の中へ閉じ込めてやろうと思ってここにやってきたんだけどね」「!」なるほど、それは盲点だった。たしかに倒した相手の魂を吸い込むソウルイーターの特性を活かすなら魔王を倒し未来永劫ソウルイーターの中に封印が出来る可能性がある。もしそれが可能ならばもう二度と後世に於いてバグゾールの復活に恐れなくていいことになる。「それは実にナイスアイデアだわ。これはなんとしても貴方のソウルイーターで魔王を封印して欲しくなったわ。ところでつかぬことを聞くけどそのソウルイーターって貴方にしか使えないモノなの。いや別に貴方から奪おうって考えている訳じゃないんだけど。私も使える方が何かと都合が良くない?」ユークは顔を歪ませる。「そいつは今すぐは無理だな。コイツの所有者は魔術の契約をもって決められているんだ。だから例えば高位の魔術師に頼んで俺からキミへと所有権を移せばいいんだけど…。悪いけど俺も一端の剣士。愛剣を易々と譲ることは出来ないな」「そりゃそうね。私が浅はかだったわ。気分を害したんなら謝るわ。ごめんなさい」「いや、いいさ。キミの気持ちも分かる。別に謝らなくてもいいさ。それに本当の所キミが使った方が魔物連中を簡単に皆殺しにできそうだし。仙術使いって人間離れした戦闘能力してるって聞いたことあるし。あの俺が食らった技『竜巻投げ』だっけ。あれも仙術の技で、あれでも手加減してくれたんだろ」「ま、まぁ…ね」本気を出したら千メートルは上空に巻き上げ空気の刃で切り刻めることを彩菜は言わないことにした。勇者と呼ばれるユークとて所詮は人間。ソウルイーターを彩菜が使った方が何百倍も有効だろう。しかし彼から無理に奪っても意味がないと分かった。それならやはり当初の予定通りユークと力を合わせて魔王親衛隊を倒し最後にバグゾールと闘い倒し、出来ることならソウルイーターでトドメを刺して未来永劫この世界に復活できないようにする。それが無理なら彩菜が先祖代々に伝わる秘術でバグゾールを封印する。これが一応二人で出した魔王封じの手順だった。後は取り敢えず魔王が復活するまで待って、配下の魔物連中が世界各地に散った後で魔王城へと向かう。そして見回りの親衛隊を隠密に倒していって数を減らし、最終的に魔王バグゾールのいる玉座に急襲を掛け、最後の決戦を挑む。これが彩菜とユークが考えた。魔王バグゾール打倒の計画最終案となった。