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リベンジャーズ ー獣人達の反逆ー  作者: しょごうき
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予期せぬ事態

「ねえねえ、私ずーっと気になってた事があるのよね。聞いてもいい?」


馬車で仰向けに寝転んでいた俺は、流れる雲を気分よく眺めていたのだが。

いきなり女の顔面がドアップになって映りこんだ。


「近い・・・お前、ぶん殴られたいのか」

「よく見ると、マットって無愛想なのに美形で肌キレイよね。討伐隊にいたとは思えない」

「いいから、顔近づけるな!離れろ!!」


くそ、何て女だ。

信じられん。

こいつは、男に対して微塵も恐怖心や羞恥心はないのか。

ただでさえ、俺は女が嫌いだと公言しているというのに。


「ったく・・、で、何だよ聞きたい事って?」

「大したことじゃないんだけど、っていうか結構大したことかもしれないけど」


どっちだよ。

スルーして次の言葉を待つ。


「剣を捨てた今のマットが、どうやってサーヴァントを倒したのかが謎だったのよね」

「何かと思えばそんな事か。肝心な部分が調査出来ていなかったのな」


いずれにしても、あの事件は地方で有名になってしまった。尾ひれが付いて噂が広まり、何が真実でどれが嘘か、それは当の本人しか判らない。


「サーヴァントに襲われた人物は、既にショックで気を失っていた。真の目撃者は、いるかどうかもわからない。確かにこんな状況じゃ、どうやって討伐したかなんて判るわけもないな」

「デコピンで倒したとか、息を吹き掛けただけで風船のように飛んでいったとか、一緒に仲良く遊んでいたとか、一体どれが本当なの?」


・・・少なくともその中に正解は含まれない。


「まあ、別に俺はお前みたいに隠す趣味がない。

見せてやってもいいぞ」

「ホント?!!やっほーい!ねえねえ、早く見せて見せて!一体どんな武器が出てくるのかしら!

そのマントに仕込んであるのかしら!」


俺は左人差し指に、軽く集中をする。

ヴォォォン・・・という、耳障りな音が聞こえてきた。同時に、人差し指からは赤黒い炎がほとばしる。


「・・・・・」


アリアの顔色が青ざめていく。

まるで化物を見るかのような反応である。


「聴覚の鋭さと、この力は、過去の記憶はなくても、体が覚えているんだ。ついでに言っておくと、この草原にも魔物(ガウル)が出るだろうが、

下位ランクの雑魚は素手で倒せる。元々腕力や脚力が強すぎるせいで、師匠には"人間相手に本気で殴りかかってはならない"と教え込まれた」


俺は炎を消失させ、また横になった。




化物は、お互い様?

そうなのかもしれない。

世間から見れば、俺も立派な化物には違いない。

初めて、自分の人間ならざる力に気づいたのは、ランディ師匠との修行中だ。

師匠は気さくでジョーク好きな性格だが、修行に関しては情け容赦ない。

ガキの頃は、ちょっとした殺意さえ芽生えるほど厳しいものだった。


修行が夜遅くまで長引いたある日、焚き火をする事になった時に、俺は無意識に左手から炎を発していた。

しかし、通常の炎と違い、俺から発するそれは黒く禍々しい炎だった。

それを見た師匠はひどく驚いていたっけ。


あれ・・・。

そう言えばあの時。

師匠は何かを口走っていたような。


「マット。あなたは・・私達と同じね」


え?


今の感覚は何だろう。

師匠の口走った言葉と、今まさにアリアが口にした言葉が、重なって聞こえたようだった。


「やっぱり"私達"は惹かれあう事が運命付けられた存在なのね」

「く・・ワケわかんない事を何なんだ一体、一人で勝手に悟るんじゃない」


アリアは真っ直ぐに俺を見つめていた。

何故だか先程までと、俺を"見る目"が違っている。


「十神会はね、表向きは魔物(ガウル)を討伐したり、車や列車の基盤を作ったり、後はそう、最近問題になっているI.E症候群に対して、有効な治療薬も

開発している」


いきなり十神会の話を始めた。

不穏な空気を感じ取っている俺は口を挟まない。

続けろ、と目で促す。


「でもね、それはあくまで表向きなの。奴等は莫大な資金を絶えず必要としていて、その手段に、あえて人々に対して有益で有り難みのある行いをして資金を蓄え続けている。

一種のカモフラージュでもあり、世間へのアピールでもあるのよ」

「奴等は何故そんな資金が必要なんだ?」

「・・・実験よ」



ゴウン!!



突然の轟音。

一瞬、馬車ごと宙に浮き上がるほどの激しい衝撃が俺達を襲った。


「何?何が起こったの?!」

「ひ、ヒイイイイ!なんですか今のは!」


御者の悲鳴に続いて、聞き覚えのあるドスの効いた鳴き声。

魔物(ガウル)、それも・・・


『サーヴァント?!!』







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