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リベンジャーズ ー獣人達の反逆ー  作者: しょごうき
4/9

波乱の予感3

困惑していた。


理由はもちろん目の前にいるアリアという女だ。

ただのアホかと思っていたら、あの名高いカスケードの構成員(メンバー)だと自らの正体を明かし、どうやら俺をスカウトしにわざわざこの街まで、遠路はるばるやってきたらしい。


しかも理由はよくわからんが、やたらと必死な面持ちである。

かと言って俺はわざわざ反逆集団などに入る気はさらさらないが・・・


「その話が俺に無関係じゃないってのは?」

「詳しい理由は私には言えないけど、来てくれれば直接うちのリーダーが話してくれる事になってるわ」


どうやら話にならない。

だったら、そのリーダーとやらがここに来ればよかったのでは。

胡散臭い事このうえないぞ。


「話はわかった。

でも俺は、この街の酒屋の手伝いと便利屋を続ける。申し訳無いがあんた達のリーダーとやらに、そう伝えてくれ」


時期が来たら街を出て、適当な職を探すつもりだが、それは隠しておこう。

アリアは少し考えるような素振りをして、ひとつ息を吐いた。


「あなたは、十神会(じゅうしんかい)が憎くないの?」

「十神会?・・・なぜ俺が奴等を憎むんだ?」


俺が問いかけると、アリアは驚いた表情を見せた。

またもや、さっぱり話が見えん。

そもそも十神会って奴等は、魔物(ガウル)を狩りまくって討伐隊の仕事を奪い、果ては莫大な資金力で世界を影から操っているとされる暗躍集団だ。

その対抗勢力が各地に存在する、カスケードのようなレジスタンスである。

このような背景があり、世界中色んな奴から憎まれているのは間違いないだろうが、別に俺自身に個人的恨みなどはない。

討伐隊に居た頃だって、何度も脱退を考えていた俺にとっては仕事が増えようが減るまいが、別にどうでもよかった。


「そういう事・・・やっと謎が解けたわ」

「なんだ?何を言ってる。十神会が何だというんだ?何か言いたい事があるならハッキリ・・」


言いかけたその時、背後に気配。

何かを振りかぶる音。

同時に砂利の音。

俺は瞬時に、先程のフード男が目を覚ましたのだと理解した。

自分の足下に伸びる人影のシルエットでも一目瞭然だった。


「死にやがれぇぇぇぇっ!!」

顔面血だらけのフード男が短剣を振り上げ襲ってきた。

このタイミングでは、避ければアリアに当たる。

避けなければ、俺が致命傷を負う。

選択肢は一つしかなかった。

手加減なしで、返り討ちにするしか方法はない。

すなわち、フード男の命の保障はなくなる事を意味していた。

眼前に迫る凶刃。


次の瞬間、眼前に迫っていた短剣が[別の刃]によって弾かれるのをハッキリと目撃した。

[別の刃]は、驚くほど白く輝いていて、まるで氷のようだった。

何が起きたかわからないフード男は振りかぶった状態から動く事ができない。

一瞬の間が空き、フード男の喉元に[白い刃]があてがわれる。


「私は憎いわ。十神会そのものが。いつか必ず奴等を壊滅させる事は、私の生涯の目的なのよね」


驚くべき事に、[白い刃]はアリアの右手だった。

アリアが刃をひくと、フード男は情けない声をあげながら退散していった。

その様子を黙って見送ったアリアが息を吐くと、シュウウという音とともに、蒸気を発した刃が普通の[右腕]に戻っていく。


一体、何なんだ、これは。

冗談が過ぎる光景を目の当たりにして、思考が追い付かない。


「ごめんなさい。こんな街中で使う気はなかったの。結果的に驚かせる事になって本当にごめん」


いや、むしろある意味助かった訳だが。

人殺しにはなりたくないしな。

それよりも、今見た光景。

余りにも現実離れした光景だが、妙に俺の頭に引っ掛かるものがある。

勿論、引っ掛かるものが何なのかは微塵もわからない。分からない。わからない・・。


アノコウケイヲ・・・オレハドコカデミタ?・・


「・・・ぐうっ!」


突然のフラッシュバック。

俺を襲ったのは、モノクロの断片的な一枚絵のシーンが、次々に再生されるかのような耐え難いフラッシュバックだった。

シーンが脳内を駆け巡る度に、激痛が走る。

ほんの一瞬の出来事だったが、あまりの苦痛のために、1分、1時間、あるいは永遠に続くかのように感じられた。


「はあっ!・・・はあ・・・っ・・くそ・・!・・・何なんだ・・今のは・・・っ」


まるで長い時間、海の底に閉じ込められていた感覚からようやく抜け出し、呼吸の仕方すらも忘れていたほどだった。

だが、抜け出したのも束の間、酸欠状態に陥ったのか、意識が朦朧としてくる。


「ちょっと、大丈夫!?」


意識を失う前に見たのは、アリアの右手に光る腕輪だった。

その時妙な違和感を感じたが、すぐに意識が飛んでしまい、目の前は闇で染まっていた。










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