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リベンジャーズ ー獣人達の反逆ー  作者: しょごうき
2/9

波乱の予感

玄関兼酒場の裏口から外へ出ると、悲鳴を聞いた人々が既に群れを作っていた。

ほぼ全員が顔見知りであった。

「あ、マットくん。もしかして、君も聞き付けて?」

俺に気づいた隣人のリスタ夫妻が不安そうに話し掛けてきた。

とにかく、早く取っ捕まえて騒ぎを鎮めなければなんないな・・。

「皆は中に戻って鍵を閉めて待機しててよ。

まあ、悲鳴を聞く限り空き家を狙ったもんじゃなくて、ひったくりってやつだろうけどね」

言いながら、俺は地面に右耳を置いた。

そうそう、先に説明しておくと、俺の耳の良さは一般人のそれとは比較にならない。

環境にも若干影響されるが、集中すれば100㍍先の足音を聞き取るぐらいは可能だ。

野次馬の皆も、それを知っているので、俺の行動を不審がる者はいない。

「荒々しい足音が2つ、か。女のほうが追っかけてるのか別の奴が追っかけてるのか・・」

俺は立ち上がってから一つ息を吐く。

「行きますか・・」

「マットくん、あんまり無茶しないようにな」

「ご心配なく。油断だけはしないようにするよ」

言い残して、俺は足音がする東へ向けて走った。



「誰かーっ!そいつを捕まえてーーーーっ!!」

酒場[ロックイレイズ]より東、船着き場付近まで来たところで、丁度よいタイミングで女の叫び声が聞こえた。

角を曲がると、正面から泥棒さんが向かってくるのが一目でわかった。

ひとまず角に隠れて、足でも引っ掛けよう。

下手に向かっていって人質にでもとられたら厄介だしね。

「畜生!しつこいクソ女め!!・・・んぐわっ!?」

派手にすっ転んだのは、白いフードに身を包んだ強面の男。かなり小柄だった。

「て、てめえ!何しやがる!殺されてぇのか!!」

「おお。台詞まで小悪党まるだしかい」

「舐めやがって・・正義の味方気取りが・・てめえみたいな野郎は早死にするって事を教えてやんぜ」

フード男はそう言い放つと、忍ばせていた短刀を取り出した。

短刀を俺に向けて構えてきた瞬間、冷たい感情に支配されていく自分がそこに居た。

「・・大人しく盗んだモノを出せ、クズ野郎」

「う・・・」

フード男は、短刀を構えたまま半歩後ろに下がった。威圧が効いているようだった。

その時、視界の端に映ったのは、こちらに向かって走ってきている人影。

被害者の女だ。

フード男は、ほんの一瞬女に気を取られた。

俺はその一瞬のスキを逃さず、まずは相手の短刀を右足で蹴り飛ばし無力化。

続いて回し蹴りを放ち、フード男は、3㍍先まで吹っ飛んだ。

頭を打ち付けたようで、そのまま気を失ったようだった。

同時に、ひどく息を切らした女が到着。

背丈は俺とそう変わらない。

紫色のストレートヘアーと、白いショートパンツが特徴的だ。

年は17、8だろうか。

女と言うより、少年のような印象を受ける。

「これ・・あなたが?」

「まあな。でも勘違いしないでくれ。あんたの為にやった訳じゃない。俺も街の皆も平和な暮らしを望んでいる。治安を乱すアホが許せないだけさ」

「ふーん、正義の味方って訳か」

特に正義の味方って言葉に反応はしなかった。

俺自身、そんなつもりはまったくない。

しかしやっている事は、端から見ればそう映るのも仕方ない。

要するに[正義の味方]に否定も肯定もできないのだ。

「俺はこの街と、ある人に恩があってね。これは恩返しのようなものなんだ。・・それより、あんたの盗られた物は何なんだ?」

「はうあ!そうだった忘れてた!」

慌てて女は、気絶しているフード男を調べ始めた。

忘れてたって、冗談だろ。

あんだけ騒いでいたのに。

「あった!良かったぁ!」

女は安堵の表情で、右手を高々と上げた。

「なんだそれ、腕輪・・?」

「そ。これがないと、私何もできないから・・。

本当にありがとう。あなたのおかげよ」

それは良かった。

腕輪には特に興味がわかない。

むしろあのフード男はなぜ腕輪なんて盗んだのか、そっちのほうが気になる訳だが。

「わたしアリアって言うの。よかったらあなたの名前教えてくれる?」

「・・マットだ。ちなみに先に言っておく。俺は女と関わる気はないからな。しかもあんた、この街の人間じゃないだろう。報酬はいらないから、早く帰んな」

「マット・・?もしかして、便利屋の?」

アリアの瞳の奥が、妙に輝いていく。

俺は久方ぶりに嫌な予感がした。

「みっけーー!!やっとだよーー!!」

アリアは両手を広げ、勢いよく体当たりをしてきた。















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