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もう一人の俺  作者:
8/12

デート

待ち合わせ場所に行くとユウトが待っていた。


「遅くなってゴメン」

「大丈夫、それよりずいぶん気合入れてきたな」


ユウトが笑っていた。


「だってミホがうるさいんだもん」

「あはは、でもいいんじゃない。

 サチコ似合ってるよ」

「そ、そう?」

「谷間すごいけどね」

「バ、バカ変なとこみるな!」

「見せてるのサチコじゃん」

「うるさい」

「じゃ行くか」


ユウトが歩き出したから後を着いていった。


「どこにいくの?」

「デートっていったら遊園地だろ」

「なにそのベタなの」

「サチコは遊園地嫌い?」

「嫌いじゃないけど」

「だったら問題ないじゃん」


電車で遊園地に向かった。

遊園地に着くと、入園料はユウトが払ってくれた。

悪いから出そうとすると、誘ったのは俺だから俺が出すといって聞かなかった。

なので、甘えて出してもらった。


「それにしても混んでるな」

「日曜だからね」

「なに乗りたい?」

「んージェットコースター」

「いいね、俺も好きなんだよね」


二人は一時間並んでジェットコースターに乗った。

ジェットコースターに乗ったのは何年ぶりかわからなかったけど

普通に楽しかった。


降りようとするとユウトが手を出してきた。


「つかまれよ、段差あるから」

「ありがとう」


サチコはヒールの高いサンダルを履いていたので助かった。


ユウトの手を握って降りた。

しかしユウトはそのまま手を離さなかった。


「もう大丈夫だよ」

「このままでいいじゃん」


そういってユウトは手をつないだまま歩き出した。


「ちょっちょっと」


ユウトは無視した。


なんでこうなるんだ…それにしてもユウトの手って大きいな。


サトシはそんなに嫌な気分じゃなかった。


このあと並ばないものをいくつか乗ってランチにした。

サトシはパスタをユウトはハンバーグを頼んだ。


「なんか今日のサチコっておとなしいね」

「そう?こんな格好してるからかな…」

「でもアキから聞いたけど普段もそんな感じなんだろ?」

「いや、ここまでは…」


言いかけてからタンスにあったサチコの服を思い出してみた。

こんな感じだ。


「ま、サチコがどんな格好でも俺は気にしないけど。

 でも、デートなのにTシャツとかラフすぎるとガッカリだけどな」


サトシはドキッとした。

まさに行こうとしていた格好だからだ。


あぶなかった、ミホの言うとおりにしてよかった。


「なんかサチコならそういうのもあり得ると思ったからさ。

 でも気合入れてきてくれてよかったよ」

「だからミホに言われたからで」

「今のサチコかわいいよ」

「え?」


いきなりかわいいと言われてサトシは顔が真っ赤になった。


「照れた?」

ユウトが笑いながら冷やかしてきた。


「バカ、いきなり変なこというからだよ」


サトシはユウトの足を蹴った。


「痛て」

「変なこといった罰だ」


サトシが笑って言った。

ユウトも笑っていた。


ランチが終わると、今度は何も言わずユウトが手をつないできた。

サトシはそのまま手を握った。


次に入ったのはお化け屋敷だった。

遠くで叫ぶ声などが聞こえてきたが

サトシはまったく怖くなかった。


なんだ、この作り物。

こんなので叫ぶやつの気がしれん。


何事もなくお化け屋敷を出た。


「怖くなかったの?」

「全然」

「無理しないで抱きついてもよかったのに」

「誰が抱きつくか」


サトシはわき腹をパンチした。


「サチコって意外と暴力的だな」

「ユウトが変なこというからだよ」


また二人で笑いあった。


このあともいくつか乗ると時間は夕方になっていた。

ユウトが最後に観覧車に乗ろうと言ってきたので観覧車に乗った。


「一周どれくらいなんだろ?」

「確か15分っていってたよ」

「結構時間あるんだね」

「ああ、15分俺とサチコの二人だけだ」

「え?」


サトシはユウトの顔をみるといつになく真剣な眼差しでこっちを見ていた。


「俺、サチコと知り合って一週間も経ってないけど

 毎日電話してメールして、今日始めてデートして確信したよ。

 サチコのことが好きだ」


いきなりの告白にサトシは戸惑った。


「いきなりそんなこと言われても」

「本当はまだ言うつもりなかったんだけど、もっと仲良くなってからって思ったんだけど、

 サチコと付き合いたくて我慢できなかった。

 それにチンタラしてて他の男に取られたくなかった」

「そ、そんなに言われるほどの人間じゃないよ。

 それに他の男なんていないし」

「だって、聞かなかったけど男友達が多いってアキが」

「それは全部切ったよ」


正確には切ったというより無視した。

知らない男となんて話す気も会う気もなかったので電話やメールを無視してたら

こなくなったのだ。


「それって俺のため?」

「そんなはずあるか」


いつものノリで言ったらユウトが暗くなっていた。

冗談の空気ではなかった。


「じょ、冗談だよ」

「だったら付き合ってくれる?」


どうしよう…


サトシはひとまず逃げた。


「観覧車が終わるまで待ってほしい…」

「わかった」


観覧車は3分の1くらいまできていた。


ヤバイ、あと10分くらいしかない。

どうせなら明日とか言えばよかった。

困った。


チラっとユウトの顔をみるとずっと見つめていた。

サトシは慌てて下を向いた。

すると視界に谷間があった。

サトシは谷間をみてミホの言葉を思い出した。


「だぶんサチコとユウトくんは付き合うと思う」

「いい、サチコは女なんだよ」


そうだ、今の俺は女だ。

サトシじゃなくてサチコなんだ。

かといって簡単に付き合うなんて言えない。

でもユウトのことは好きだ。

恋愛感情とか関係なしで好きだ。



沈黙のまま観覧車は進む。

もうすぐ終わりに差し掛かった。


サトシは考えた答えを言うことにした。


「ごめん…」

「…そっか」


ユウトはそのまま外を見た。


「ち、違うの。

 ユウトのことは好きだよ。

 その…恋愛感情とか関係なく」

「友達としてってこと?」

「それとも違う、なんかうまく説明できないけど。

 もうちょっと今の関係がいいの」

「それは前向きに捉えていいの?」

「…うん」


まだ今のサトシは付き合えなかった。

サチコになってまだ一週間。

あまりにもいろんなことがあり、展開も全て速すぎたのだ。

もっと今の生活に慣れてから、もっとサチコになってから。

サトシはそう考えていた。


でもきっと近いうちにユウトと付き合うんだろうな。

なんとなくだけど。


観覧車が着いた。

二人は降りて歩き出した。


ユウトが謝ってきた。


「なんか焦らせてごめん。

 サチコの言うとおり、まだこのままでいいよな。

 知り合って日も浅いし。

 俺が勝手に暴走してた」

「ううん、ユウトの気持ちをしっかりと受け止めたよ。

 ちゃんと返せるように頑張る」

「返ってくるのを楽しみにまってる。

 そのかわり一年後とかはなしだぜ」

「そんなに待たせないよ」


二人は笑った。


俺、ユウトが好きだ。


サトシは手をさし伸ばした。


「手、つながないの?」


顔を赤く染めながらユウトに言った。

ユウトはなにも言わず手をつないだ。


二人は恋人同士みたいだった。




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